こんにちは、赤石です。
少し前に書いた掌編小説をアップロードします。
朝起きると私は自分の体が一匹の巨大な毒虫に変身しているのに気がついた。
「失礼します。覇斗山(はとやま)首相、本日の予定は・・・ひっ!さ、蠍(さそり)だああ!」
私の秘書官がベッドの中の私の姿をみて悲鳴を上げ、部屋を転がり出て行った。そうか、私の姿はそんなにも醜く恐ろしいのか、当たり前か、なにせ蠍だものな。ベッドを出ると自分の目の高さが普段の半分の1メートルくらいになっているように感じた。自分のグロテスクで黒々とした体をよく眺めてみた、体の大きさは3メートル、先に毒針のついた尻尾の長さは5メートルほどになっていた。
それでも公務は行わなくてはならない、私は8本ある脚をガシャガシャと鳴らしながら会議室へ向かった。私の姿を見るとぶら下がりの新聞記者の女は金切り声をあげ、私の後ろにはさっきの秘書官たちが真っ青な顔をして私の後ろにつき従っている。
会議室には都沢幹事長が先に来ていた。
「覇斗山君遅いぞ!なにをして・・・」
都沢(みやこざわ)幹事長は言葉を詰まらせると、周りの人間を押しのけてドアに向かって一目散に駆け出した。が、私は毒針のついた尻尾をドアに叩きつけ粉砕し、都沢の体にスーツの上から尻尾を巻きつけ、喉にヌラヌラと光る毒針を突き付けた。
「まだ話は何も済んではおらんのだ。貴様の命はいまこの瞬間我が手中にあることをよく考えろ。儂はこの国の王なのだ。さあゆっくりとこの国の将来について貴様の意見を聞くとしよう。いいな?」
都沢は苦しげに首を縦に振り、ぎこちなく椅子に座った。
『個人の間では、法律や契約書や協定が、審議を守るのに役立つ。しかし権力者の間で審議が守られるのは、力によってのみである。』マキャベッリ「君主論」より
この後も話を書きたくなってきた。毒虫総理がどういう政治をやるのか楽しみになってきた。
少し前に書いた掌編小説をアップロードします。
朝起きると私は自分の体が一匹の巨大な毒虫に変身しているのに気がついた。
「失礼します。覇斗山(はとやま)首相、本日の予定は・・・ひっ!さ、蠍(さそり)だああ!」
私の秘書官がベッドの中の私の姿をみて悲鳴を上げ、部屋を転がり出て行った。そうか、私の姿はそんなにも醜く恐ろしいのか、当たり前か、なにせ蠍だものな。ベッドを出ると自分の目の高さが普段の半分の1メートルくらいになっているように感じた。自分のグロテスクで黒々とした体をよく眺めてみた、体の大きさは3メートル、先に毒針のついた尻尾の長さは5メートルほどになっていた。
それでも公務は行わなくてはならない、私は8本ある脚をガシャガシャと鳴らしながら会議室へ向かった。私の姿を見るとぶら下がりの新聞記者の女は金切り声をあげ、私の後ろにはさっきの秘書官たちが真っ青な顔をして私の後ろにつき従っている。
会議室には都沢幹事長が先に来ていた。
「覇斗山君遅いぞ!なにをして・・・」
都沢(みやこざわ)幹事長は言葉を詰まらせると、周りの人間を押しのけてドアに向かって一目散に駆け出した。が、私は毒針のついた尻尾をドアに叩きつけ粉砕し、都沢の体にスーツの上から尻尾を巻きつけ、喉にヌラヌラと光る毒針を突き付けた。
「まだ話は何も済んではおらんのだ。貴様の命はいまこの瞬間我が手中にあることをよく考えろ。儂はこの国の王なのだ。さあゆっくりとこの国の将来について貴様の意見を聞くとしよう。いいな?」
都沢は苦しげに首を縦に振り、ぎこちなく椅子に座った。
『個人の間では、法律や契約書や協定が、審議を守るのに役立つ。しかし権力者の間で審議が守られるのは、力によってのみである。』マキャベッリ「君主論」より
この後も話を書きたくなってきた。毒虫総理がどういう政治をやるのか楽しみになってきた。
好きなかき氷の味は? ブログネタ:好きなかき氷の味は? 参加中
本文はここから
「夏の少女だった私」
はちがつ いちにち はれ
きょう みさこは おとなりのこうちゃんと ぷーるで あそびました
みさこは こうちゃんがくれた ぴんくの りぼんがついた ぼうしをかぶって
ぷーるで あそびました
こうちゃんは わたしといっしょに みずぎになって おにわのびにーるぷーるで あそびました
みさこは こうちゃんに いっぱいみずしぶきを かけました
こうちゃんは みさこに いっぱいみずしぶきを かけられても にこにこにこにこしていました
ぷーるで あそんだあとは こうちゃんが かきごおりを つくってくれました
みさこの だいすきな みるくいちごのあじでした こうちゃんは みさこのぶんだけつくって
こうちゃんは かきごおりを たべませんでした
かきごおりを たべおわったら みさこは こうちゃんに ずっとだいすきだよ ずっといっしょにいてね
っていいました
こうちゃんは うんうん っていいました
おわり
「先生、妻の症状は快方に向かっているのでしょうか」
私は、妻であるみさこの書いた絵日記を彼女の主治医に見せながら尋ねた。
妻が子供のようなふるまいを始めるようになってもう10年になる。
絵日記を眺めながら、医者は口を開いた。
「フム、娘さんであるミサちゃんが自宅の庭で近所に住んでいる変質者に殺されたことがやはり、奥様の心に深い影響を与えています。奥様は自分の娘であるミサちゃんの人生が10歳で止まってしまったことが頭でわかっていても、心が受け入れられなかった。あなた、浩一さんという夫がありながら10年前から幼児退行を続けているのは、ミサちゃんのかわりに自分がミサちゃんの人生を歩むことによって、ミサちゃんの死を帳消しにしようという欲求のあらわれでしょうな。そして10年もの間、娘の人格であるミサちゃんを演じ続けてしまったせいで、もはやミサちゃんの人生なのか、みさこさん自身の幼いころの経験なのか、ぐちゃぐちゃに混ざってしまっているようですな。ミサちゃんの人格なのに、夫であるあなたとはずっと昔からの幼馴染というお二人の馴れ初めが組み込まれてしまっている。難しい状況ですな。」
主治医の言葉を聴いて、私はがっくりとうなだれた。
窓の外を見ると、曇天の下で枯葉が風に舞っていた。
妻の時間は、あの夏の日から一日も進んでいない。
本文はここから
「夏の少女だった私」
はちがつ いちにち はれ
きょう みさこは おとなりのこうちゃんと ぷーるで あそびました
みさこは こうちゃんがくれた ぴんくの りぼんがついた ぼうしをかぶって
ぷーるで あそびました
こうちゃんは わたしといっしょに みずぎになって おにわのびにーるぷーるで あそびました
みさこは こうちゃんに いっぱいみずしぶきを かけました
こうちゃんは みさこに いっぱいみずしぶきを かけられても にこにこにこにこしていました
ぷーるで あそんだあとは こうちゃんが かきごおりを つくってくれました
みさこの だいすきな みるくいちごのあじでした こうちゃんは みさこのぶんだけつくって
こうちゃんは かきごおりを たべませんでした
かきごおりを たべおわったら みさこは こうちゃんに ずっとだいすきだよ ずっといっしょにいてね
っていいました
こうちゃんは うんうん っていいました
おわり
「先生、妻の症状は快方に向かっているのでしょうか」
私は、妻であるみさこの書いた絵日記を彼女の主治医に見せながら尋ねた。
妻が子供のようなふるまいを始めるようになってもう10年になる。
絵日記を眺めながら、医者は口を開いた。
「フム、娘さんであるミサちゃんが自宅の庭で近所に住んでいる変質者に殺されたことがやはり、奥様の心に深い影響を与えています。奥様は自分の娘であるミサちゃんの人生が10歳で止まってしまったことが頭でわかっていても、心が受け入れられなかった。あなた、浩一さんという夫がありながら10年前から幼児退行を続けているのは、ミサちゃんのかわりに自分がミサちゃんの人生を歩むことによって、ミサちゃんの死を帳消しにしようという欲求のあらわれでしょうな。そして10年もの間、娘の人格であるミサちゃんを演じ続けてしまったせいで、もはやミサちゃんの人生なのか、みさこさん自身の幼いころの経験なのか、ぐちゃぐちゃに混ざってしまっているようですな。ミサちゃんの人格なのに、夫であるあなたとはずっと昔からの幼馴染というお二人の馴れ初めが組み込まれてしまっている。難しい状況ですな。」
主治医の言葉を聴いて、私はがっくりとうなだれた。
窓の外を見ると、曇天の下で枯葉が風に舞っていた。
妻の時間は、あの夏の日から一日も進んでいない。