平らな胸と肥大化した乳頭はカナのコンプレックスだった。

彼女は可愛らしい容姿をしていたが、男性経験がほとんどなかった。

胸を見られるのが恥ずかしい。

その羞恥心が抑圧され歪み、異常な性癖となって染み出してきたのだろうか。

学生の頃から異様な自慰にふけっていたという。

「卑猥な言葉を紙に書いて学校の図書館の本の間に挟んでおくんです。

 わたしはその本を背中にして座って、

 その…… 

 人が通ったり、後ろの棚に誰かいる気配を感じるたびに……

 うずくというか、手が勝手に……」

「弄ってしまう?」

カナは小さく頷いた。

私に自らの性癖を告白しながらカナは下着に大きな染みを作っていた。

 

カナはいわゆる露出狂とは少し違う気がする。

自分の裸を見せつける行為には他者への攻撃性が含まれているように思う。

彼女にそれは感じない。あるとすれば自分への攻撃。

まるで懲罰感情のような。

カナの中に、血のにじむカサブタを思わず搔きむしってしまうような衝動を、私は感じた。

私に「恥ずかしい部分を携帯の待ち受けにしろ」と言われ、

一番のコンプレックスである部分をカナは選んだ。

私は下着、もしくは性器を想定してそのような指示を出したが、

カナの回答は予想外で、より狂っているように思えた。

私はもっとカナを知りたいと思った。

 

私とカナは数か月、もしかすると一年近かったかもしれない、肉体の関係を持たず、

むしろ懲罰を与える者と罪人のような、

いや違うな、

カナにとって私は「言い訳」で、

「道具」だったのかもしれない。

私の指示に、戸惑いや怯えを装いながら、

彼女の口はダラダラとヨダレを垂らし、

それをむさぼっていった。