人の話しを聞くということはなかなか難しい。
小さい頃、あるいは若い頃、必死になって生きてきた人は
ある時ふと気がついて” あたりまえ ” という言葉を捨てて
自分の辿ってきた道を人に例えてみる。
いろんな人生があるんだなと。
優秀だから出来たわけではない。
優秀を頭が良い人と解釈するなら答えはNO。
優秀は、優しさに秀でた人と解釈をする。
自分の痛みを人の痛みに変えられる人。
自分の経験を人の経験に少しだけ付け加えられる人。
笑われて当然と開き直れる人。
そして、ほんの少しずつ前に進める人。
一歩下がって一歩上がれる人。
扉が開く。
小さなバーの小さな片隅で語られる人生の数々。
泣いたり笑ったり。笑ったり笑いすぎてしまったり。
外のキラキラした街は時に残酷で
扉をバタンと閉めると何もなかったようにお酒を飲む。
澱んだ心をかき消すように。
「 さて、今日は心置きなく飲んで十分楽しんだぞ。
明日からまた頑張ろう。
おーい、マスターまた来るよ。頼むぜ 」
たくさんの人が語って、たくさんの人が今日を乗り越えていく場所。
何年も何年もそうして生きてきた小さなバー。
重ねた思いと努力の欠片。
銀河に届けと願うだけ。
いつまでも永遠を語る旅人であれと。
さぁ、今夜はどんな話をしようか。
ジャズの音楽に乗せながら。
かしゃ。
「 おーい、マスター。来たぜ。
俺の苦労話を聞いてくれ。面白くって涙がでるよ。
楽しく行こうぜ。今夜も 」
ミッドナイト。
自分の手で開ける鍵はさぞかし楽しいだろう。
『 正勝吾勝勝速日 天之忍穂耳命 』
『 まさかつあかつかちはやひ あめのおしほみみのみこと 』
訳して。
『 吾は正しい。だからこそ自分に勝つために先を急ぐんだ。
ひっそりと聴く心の小さな機微。
稲穂が実るように大きな心で大きな耳で聴くんだ。
あなたの人生を、そして、私の生きてきた道を 』
眠りに着くまでどうぞごゆっくり。
グットナイト。