☆  ウサギとカメ ☆

 

                 

            よーい、ドン  !!

 

            先に、飛び出したのは、当然、ウサギかと思いきや、なんと、カメ。

            順調なマイペースで、着々と、歩を進めております。

            「  一歩、一歩、 確実に。 」

            自分を励ましながら、頑張っています。

 

 

            後ろから、ニコニコとついてくるのは、ウサギ。

            「 あー、今日はいい陽気だね。カメさん。

              そんなに一生懸命、歩かなくってもいいじゃないか。

              人生は、ぴょんぴょんと、行かなくちゃね。 はっはっはっ!! 」

            まあ、ほんと、のんきなものです。

 

            

            カメは、声が聞こえないのか、無視をしているのか … … 。

            とにかく、ひたすら、歩き続けます。

            頭に巻いた赤い鉢巻が揺れて、一生懸命さが伝わってきます。

 

            

            ウサギは、カメの後姿を見ながら、ふと考えました。

            「 俺たちは、こんなにも違うんだな。 

              ぴょんと飛び越えた後に、見逃したものがあるかもしれない。

              カメさんように、確実に歩けば、見逃さないはず。

              どれ、ひとつ、真似をしてみよう。 」

            ウサギは、なにを思ったのか、

            一飛びごとに、頭を入れて、下を確認しています。

            何かが動くと、戻って、土を掘り返し、確認してから進んでいきます。

            そのうち、面白くなってきたのか、同じ場所に止まってしまいました。

            小さな虫が動いていて、夢中になってしまったのです。

 

 

            カメとの距離は、どんどん開いていきます。

            そして、とうとう、姿が見えなくなってしまいました。

            順調に飛ばしていたカメは、

            ウサギの姿が見えないことに不安を覚えました。

            「 あれっ、ウサギさん、どうしたのかな?

              あんなに楽しそうに、歩いていたのに。

              どれ、戻って呼んでこよう。 」

            気の早いカメは、顔を隠し、くるっと回転すると、

            今度は、後ろに向かって、歩き出しました。

 

            一歩一歩確実に、元の道に戻っていきます。

            「 ウサギさん、待っててくれよ。

              今、迎えに行くから。 エッサ、エッサ。 」

            掛け声をかけながら、頑張っています。

 

            そして、しばらくすると、

            くたくたに疲れ切った、ウサギに会いました。

 

            「 どうしたんだい。ウサギさん ?

              そんなに疲れ切って!! 

              君が心配で、戻ってきたんだ。 」

          

            「 いや、カメさん、ありがとう。

              心配をかけて申し訳なかったね。

              実は、虫と遊んでいたら、たくさん集まってきて、

              体中に上ってきたもんだから、必死に逃げてきたんだ。」

 

            「 そうだったのか。

              僕は、自分のことしか考えてなかったから。

              君がいなくなって、急に寂しくなって、探しに来たんだよ。

              なんだか、ほっとした。 」

 

            「 なんて、嬉しいことを言ってくれるんだ。

              一生懸命、歩いている君を、冷かしてごめんよ。

              さぁ、戻ろうか。

              良かったら、僕の背中に乗ってくれ。 」

 

            「 いや、それはできない。

              これは、自分との戦いだからね。

              ゴールは、一人で目指さないと意味がないよ。 」

 

            「 わかったよ。カメさん。

              僕も、真剣に、飛ぶよ。 さあ、頑張ろう !! 」

 

            それから、ふたりは、それぞれの方法で、前に歩き出しました。

            そして、いよいよ、ゴール前。

            先に着いていたウサギは、テープを切らずにカメを待っていました。

            ようやく、カメがたどりついて、

            ふたりは、同時にテープを切ったのです。

 

 

            見ていた観客は、一斉に手を叩き、ふたりを称えました。

            ゴール後、手を取り合い、喜び合った二人。

            カメは言いました。

            「 ウサギさん、君のお蔭で頑張れたよ。本当にありがとう。」

            「 なにを言うんだ、カメさん。頑張れたのは、君のお蔭だよ。

              君には、感謝をしている。 」

 

 

            ふたりの感謝合戦は、なかなか終わりません。

            そのうち、とっぷりと日が暮れて、

            健闘を称え終わると、仲よく家へと帰りました。

 

            ウサギとカメ。

            決着はつかなかったけれど、楽しくて気持ちのよい一日でした。

 

            良かった。良かった。

            これが本当の、めでたし、めでたし。

 

 

 

★ お互い本当によく頑張ったね!!

 

 

   ★ どっこらしょっと。 ゆっくり休むか。

 

 

 

   ★ 今日は、一日、楽しかったな。