人間は、転生をしながら、魂の成長を目指します。
転生の数は、人それぞれ。
多いとか少ないとか、そんなことは関係なく、必要な数だけ。
一瞬ごとに変わっていく時の流れの中で、刻まれた尊い記憶は、
人生の宝物。人と比べることなく、誇りを持って生きていきましょう。
ところで、この少女。私に、話しかけてきました。
どうしても、伝えたいことがあって … …。
じっと見つめる真剣な眼差しに、引き込まれてしまいました。
今日は、少女の過去世を書いてみようと思います。
私は、7歳。生まれつき病弱で、外に出たことはありません。
お医者様は、外気は身体によくないので、家の中で過ごすようにと
言われました。両親は、そんな私の為に、すべてのものを揃えて下さり、
何不自由なく生活できました。
お勉強は、家庭教師から教わり、大好きなピアノは、毎日、練習しました。
お友達と遊べない分、寂しくならないようにと、小さな犬を買ってくれました。
犬が、部屋中を駆けずり回るのを見ていると、羨ましくて仕方がありません。
つい忘れて、追いかけていき、息苦しくなって、ベッドでお休み。
お家でのなに不自由ない生活は、心を不自由にしてしまったのです。
ある時から、私は、口を利かなくなりました。
突然のことに、両親は、びっくりして、何人かのお医者様を呼びましたが、
首をかしげて帰っていくばかり。
「ごめんなさい。」 そう心で謝りながら、人との接触を絶ったのです。
食事も喉を通らなくなり、やせ細った身体は、召される日を待っていました。
7歳の誕生日を迎えた日。私の枕元には、一冊の本が届けられました。
本の上には、メッセージが。
「親愛なるわが娘よ。私たちは、何もしてあげられない。
この無力な親を許してほしい。この本は、せめてものプレゼント。
どこにも行けない子が、扉を開けて旅をするお話だよ。
気に入ってくれたら、嬉しいよ。」
やっとの思いで、手にした本は、遠い昔から知っているような懐かしい
匂いがしました。やせ細った手は、1ページめくるのも大変なほど。
それなのに、夢中になった私は、しっかりと持って読んでいたのです。
いくつもの扉の絵の先には、いろんな世界が広がっていました。
広い平原や、お花畑。森へと続く道、噴水の庭園。 … … 。
初めて見るものばかり。
外の世界は、こんなにも美しいもので溢れているんだと知ったのです。
私は、ひたすら読み続けました。
そして、どれだけの時間がたったのでしょうか?
いよいよ、最後のページとなった時、扉の向こうから眩しい光が差し込み、
一瞬のうちに呑み込まれていったのです。
「 さぁ、怖がらずにいらっしゃい。私は、光の天使です。
ずっと、あなたを見守っていました。
どんな苦しみの中にいても、 生きていくことは大切。
その人生を全うしたあなたは、もう、卒業です。
さぁ、私の手を取りなさい。」
光の中から差し出された手をつかんだ私は、
本の中に吸い込まれていったのです。
ベッドの上には、私の姿も、本もありません。
光の国の住人となったのです。
この扉の本は、天国へと導く魔法の本。
あなたがこの世を去る時、この本を届けます。
安らかなる魂の為に。