羽田空港アクセスが劇的に便利、新空港線(蒲蒲線)が延々と着工されなかった理由
ならば地下ではなく地上に線路を敷けばよいと言いたくなる。けれども新空港線の構想が立てられた周囲には人家が密集しており、線路を通すことは極めて難しい。せめて、地上に設置された東急多摩川線の蒲田駅から新空港線の線路を地下に延ばし、矢口渡~蒲田間分の建設費を節約すればよいとも考えられるが、こちらもさまざまな困難が予想される。蒲田駅のすぐ東隣にJR東日本の蒲田駅がほぼ直角に交差しており、高架橋にしろ、地下トンネルにしろ通り抜けることがほぼ不可能だからだ。
費用対効果と採算性
建設費は高額に上っても利用者が多ければいずれ回収できるはずではないか――。国の交通政策審議会は2016年7月15日に新空港線の輸送需要や費用対効果、採算性などを明らかにした。輸送需要としては旅客輸送密度、費用対効果としては費用便益比、採算性としては開業年営業損益比、累積資金収支黒字転換年がそれぞれ示されているそれぞれを紹介しよう。
旅客輸送密度とは、旅客数に平均乗車距離を乗じた旅客人キロを営業距離で割った数値を指す。新空港線矢口渡~京急蒲田間では1日当たり4万5500人から4万5900人となった。2019(令和元)年度の国の統計では、東急多摩川線が同9万0625人/日、空港線が同13万9118人/日であったから物足らない数値ではある。可能な範囲で首都圏のJR、私鉄の各路線を探すと、千葉県習志野市の京成津田沼駅と同県千葉市の千葉中央駅との間を結ぶ京成電鉄千葉線の4万6237人/日が近い。
費用便益比とは、路線の開業によって得られる収入はもちろん、たとえば所要時間の短縮効果といった貨幣に換算可能な数値を便益とし、建設費や開業後の営業費といった費用で割った数値を指す。営業開始後30年間の動向を見ることとなっていて、新空港線の場合は1.9だ。費用便益比は1.0以上で有意義な事業と認められるから、新空港線は基準を満たしている。
開業年営業損益比とは、開業した年の営業収入と営業費との比率で、営業収入を営業費で割った数値だ。新空港線は1.9であり、営業収入の約半数が営業利益となる。開業年営業損益比の望ましい数値は不明ながら、1.0を下回れば赤字経営となるので新空港線は順調なスタートを切るであろう。
累積資金収支黒字転換年とは、毎年の営業収入で建設費を何年で回収できるかという数値で、補助金を含む。新空港線は33年から34年だ。新空港線の建設は第三セクターが担うと目されており、国の基準では第三セクターとして求められる期間は40年以内であるから適合している。
新空港線に慎重な姿勢を見せてきた東京都は、東京メトロの新線計画となる有楽町線豊洲~住吉間4.8kmの延伸(以下、有楽町線延伸)、そして南北線品川~白金高輪間2.5kmの延伸(以下、南北線延伸)には積極的に後押ししている。2022年3月28日に建設が国から認められた2つの地下鉄の建設費は有楽町線延伸が2690億円、南北線延伸が1310億円で、東京都は建設費のおよそ4分の1となる計1000億円を負担するという。有楽町線延伸、南北線延伸とも国の交通政策審議会が見通しを新空港線と同時に発表しているので、比較してみよう。
旅客輸送密度は有楽町線延伸が1日当たり10万3200人/日から10万5400人/日、南北線延伸は同7万3300人/日から7万5800人/日であった。新空港線と比較すると有楽町線延伸は2.2倍から2.3倍、南北線延伸は1.6倍から1.7倍あり、新空港線は少々分が悪い。 費用便益比は有楽町線延伸が2.0から2.1、南北線延伸が1.2であった。新空港線は有楽町線延伸と同程度で南北線延伸を上回る。
なお、大田区は独自の費用便益比を求めた。数値はさらに改善されて2.0だ。開業年営業損益比は有楽町線延伸が2.1、南北線延伸新設が1.6となった。やはり有楽町線延伸と同程度で南北線延伸を上回る。
累積資金収支黒字転換年は有楽町線延伸、南北線延伸とも25年から26年だ。新空港線は両地下鉄の延伸と比較すると7年から9年長い。東京都はこの点も疑問視していたのかもしれない。なお、大田区は新空港線の累積資金収支黒字転換年を17年と試算した。国の交通政策審議会と比べると半分の期間と極端な数値となったが、実現すれば新空港線は大変有望な地下鉄となる。
(LINEnewsより引用)
