デル「おーい、キーラ。昼飯だ」
キーラ「……見てわからんのかね、あたしゃ今クレッグシャフトを修理してるとこだよ!」
「あんた1人で食ってきな」
デル「おお、そうか。わしも夢中でバグコイルを締めていたんでな!」
「じゃあ先に食ってくるとするかな」
キーラ「……ああ、行ってこい」
「……それとしばらく……喋りかけんじゃないよ……!」
地球は現在、西暦3125年。
陸地は大きく動き、人口は大きく減り、星もまた小さくなった。
生物の定住地がより地球の核に近付き、引力と斥力が21世紀に比べて、大きく影響するようにもなった。
2度の氷河期を超え、文明は滅んでは栄えを繰り返したが、文化は今も生きている。
そして生物はたくましく生き残っている。
失ったものと言えば、知恵と歴史だろう。
かつてありし国々は形を変え、今ではプフェルドという軍事大国がこの地球のほぼ全域を支配している。
非情な国王、メンゼクター4世の独裁政権により、諸外国は貧困状態にある。
カーラー制度という国策により、プフェルド王国内では一般市民から貴族に至るまでが信じられないほどの裕福な暮らしを送っている。
そして、その負担を請け負うのは諸外国の植民地である。
特に隣国のブーツ、グエラ・レサ、イウータといった植民地が国力に多大な被害を受けていた。
各国政府はプフェルドの意思のもと、反発勢力は弾圧され、盗賊は蔓延り、市民たちは飢えきっていた。
一方で、プフェルドの市民権を得られれば、一転裕福な暮らしが送れるのだ。
もちろん、プフェルドへ脱国する者も少なくなかった。
先ほど述べたと思うが、『文化』はまだ生きている。
虐げられた国に残る者たちが抱く志は、故郷の文化と歴史を守っていきたいというものである。
キーラもその内の1人である。
年齢は既に45を過ぎた。
磁力船の造船所経営者として、プフェルドのために軍事用磁力船の開発、作成をしている。
なぜブーツの人間が他国の軍事力の一端を担わねばならんのだ……。
そう思えど、金がなくては何事も始まらない。
今年60歳を越えるデル、孤児であった16歳のロレックと3人で作業のやり繰りをしている。
デルは年こそ取ってはいるが、船大工としての技術には感服するものがある。
木材の船も造れるのだから、驚愕だ。
しかし最近はさすがに年齢のせいか、朝起きると身体のあちこちに不調があるようだ。
腕が動かないという日には仕事はさせない。
それは職人の命であることをキーラは知っている。
ロレックは2歳の頃にバルドーで拾った。生まれつき両手足がなかった。
かろうじて残っていたのが右の二の腕である。
ブーツへ連れて帰り、そしてキーラが機械の手足を与えた。
今では機械の両手足を自由に使って、作業も難なくこなしてくれる。
しかし、彼は武闘派じゃない。
16にしてキーラ以上の頭脳を持っているのではないか、そんな気もしている。
こんなところでオイルまみれになっているような子ではないのだ。
キーラもブーツ国内での人脈は太い。
ブーツ国王軍の中にはプフェルドへの反乱を企てている者がいることも知っている。
だが、今その反乱の火は国中に点で存在しているだけだ。
圧倒的勢力の前では、鎮圧はものの数秒というところであろう。
資金を稼ぎ、時機をみて独立軍隊を形成しよう。
キーラの人知れない野望は、近くで見ていたロレックの目にもしっかり映っていたのであった。
(続く)