我が家の庭には２本の「イチジク」が自生しています。毎朝夫婦で食べる分を朝取りして食後にヨーグルトと一緒に戴いています。

昨年は周囲の雑木を伐採した事もあって今年は豊作です。でもイチジクを狙っている台湾リスと野鳥が居ます。リスと野鳥に先を越され無いように早起きして採取します。イチジクを採取するとその傷口から純白の乳液が滲み出して来ます。イチジクの樹液のようなモノで人間でいえば血液でしょう。イチジクはクワ科イチジク属（フィクス属）の植物。あのゴムの木と同じ仲間です。白い汁は、タンパク質分解酵素「フィシン」の働きで菌や微生物の侵入を防いだり、害虫などから身を守っているのです。そのためイチジクの汁が口や手につくと、ヒリヒリしたり痒くなったりすることも…。ベタベタは脂性なのです。私は幼児の頃額にイボがありました。祖母はイチジクの純白の乳液をつけてくれました。毎朝イチジクの乳液を塗っては乾かしている中にイボは嘘のようにボロボロになって落ちてしまいました。多分イチジクの蛋白質を含んだ乳液が私の肌から染み入ってイボの組織を壊したのでしょう。

此れがイチジクです。完熟する迄待っているとリスや野鳥に食べられてしまうので未熟なうちに採取してしまいます。

すると白い乳液が出ます

此れがイチジクの乳液です。

日本一のイチジクの産地は和歌山県です。和歌山県の橋本市九度山に古刹慈尊院があります。有吉佐和子氏の名作「紀の川」の舞台です。紀の川沿いの河岸段丘は果樹園が続いています。夏の「桃」、初秋の「イチジク」、晩秋には「柿」と人間を楽しませてくれます。古刹慈尊院は高野山の参詣道にあります。弘法大師を訪ねて高野山を訪れた空海の母、玉依御前は此処迄来たもの女人禁制の高野山なので登れず弘法大師と会えたのは慈尊院だったと言い伝えられています。「女人高野山」と云えば先ず慈尊院でした。母性愛の尊さを教える寺院です。慈尊院には子授け、安産、育児、授乳、良縁などを願って乳房型、絵馬を奉納する女性が多く訪れます。弥勒堂の前には「オッパイ絵馬」が奉納されています。絵馬には奉納者の名の他「願文」も書かれています「良縁」「安産」「授乳」等が大半ですが最近は世相を反映して「乳癌完治」等も混じっています。

和歌山県九度山にある慈尊院弘法大師の母玉依御前が大師に会う為に九度登られた故事によって名が付いたそうです

慈尊院のオッパイ絵馬

最近は「乳癌完治」を祈願する絵馬も混じっています

処で最近は母乳の尊さが再認識されています。第一はベビーの免疫効果です。母親の免疫が母乳を介してベビーに伝わって居るのです。免疫とは体外から侵入する異種蛋白(細菌やウイルス)を体内のキラー細胞が捕食して自分の体を守る機能です。母親の胎内にいるうちは無菌状態でも外に出れば無防備です。母乳を継続摂取する事で母親の免疫力を維持します。

母乳を飲む事でベイビー母親の免疫を継承出来ます。

一方母親の方は授乳する事で産後の体の回復がはやまります。赤ちゃんにおっぱいを吸われることは子宮の収縮を促す作用があるため、子宮の回復が早くなります。母子双方にとって母乳を授乳する事は大切な命の保護になるのです。

オッパイは母子共に重要な役割を持って居る事を解説する図

一昨日のNHKBSPのヒュマニエンスで乳腺の働きを報道していました。極寒に棲むアザラシの乳は脂肪分が多く、極暑に生きるシマウマは水分が多い。ヒトの乳の特徴は「ミルクオリゴ糖」が極めて多いこと。生後１年で脳を大きくするヒトの進化の原動力は母乳に在るというのです。そして感染を防ぐ免疫は母乳に含まれるキラー細胞(蛋白質遺伝子)やTレグ細胞(キラー細胞の過剰な攻撃性を制御してバランスを取る)を解説していました。人間の母乳は人間だけの命の機密で牛乳には置き換えrされないのです。

NHKBSPのヒュマニエンスでは動物が異種蛋白質を摂取し始めた事から異種蛋白質から我が身を守る免疫の仕組みを妄想していました。

オッパイの断面図、乳腺はオッパイ(ミルク)の分泌組織でありますが此処でベビーにわたす免疫細胞を用意します。

人間の乳房が美しいフォルムでありのは「大切な組織」である事を示すだけでなく栄養だけでなく免疫も伝える尊い機関だからです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【了】