富広美術館で、星野富広という人の詩を知りました。
24歳のとき器械体操の事故で手足の自由を奪われ、
以来口に筆をくわえて、水彩画や詩を描きつづける画家。
その言葉の世界は、自然に対する敬愛にあふれています。
展覧会で心に触れた詩を2つ。
「なのはな」 私の首のように 茎が簡単に折れてしまった しかし菜の花はそこから芽を出し 花を咲かせた 私もこの花と 同じ水を飲んでいる 同じ光を 受けている 強い茎になろう
「がくあじさい」 結婚ゆび輪は いらないと いった 朝 顔を洗うとき 私の顔を きずつけないように 体を持ち上げるとき 私が痛くないように 結婚ゆび輪は いらないといった 今 レースのカーテンをつきぬけてくる 朝陽の中で 私の許に来たあなたが 洗面器から冷たい水をすくっている その十本の指先から 金よりも 銀よりも 美しい雫が落ちている