産業医から見た「おっさんずラブ」とLGBT
こんにちは産業医ちゃんです前回に引き続き「おっさんずラブ」がらみで書いていきたいです。今回のテーマは会社でのLGBT対応です。以下、LGBTの基礎知識を引用いたしますLGBTとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつです。電通ダイバーシティ・ラボの2015年の調べ(全国69,989名にスクリーニング調査を実施)では、日本におけるLGBTの割合が人口の7.6%存在すると言われています。性について考えるとき、単純に「男性/女性」だけではなく、様々な切り口がありますが、主に以下の3点で考えられます。身体の性性器、性腺、染色体などの身体的特徴で分けられる性のことです。心の性(性自認)自分自身はどんな性だと思うか、ということ。男性だと思う人、女性だと思う人、中性だと思う人、性別は決めたくないという人、など、様々です。好きになる性(性的指向)好きになるかならないか、なるとしたらどんな性の人を好きになるか、ということ。異性を好きになる人、同性を好きになる人、どちらの性も好きになる人、性別で好きになる人を決めたくないという人、特定の誰かを好きにならないという人、など、様々です。(https://tokyorainbowpride.com/lgbt/より)産業医ちゃんは、性に関していうとLGBTに、特に偏見はないです。個別事例で性別を超越して魅力的な同性がいたら、私も恋愛対象として好きになるかもしれないしね。まだ出会ってないけど…。(写真はダンサーの菅原小春さんです)さて、「おっさんずラブ」では、春田クンや、牧クンや、黒澤部長がGay(ゲイ、男性同性愛者)なのかBisexual(バイセクシュアル、両性愛者)なのか、といったことは、最初から論点になっていませんでした。Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)なのかについては、はっきりした表現はありませんでした。産業医ちゃんの体感的に、現代のunder40くらいの会社員さんは、LGBTに心理的抵抗感があまりない人が多い印象です。特にLGBTのうち LGB までは、○○が好き という性的嗜好の話なので、働く上では支障にならないことが多いです。ただ、会社でLGBTが議題に挙がってくるパターンっていくつかありまして、一番多いのは服装についてです。LGBTのうち、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)の人の中には、「戸籍上の(社員名簿に登録されている)性別」と異なるファッションをしたいという人がいます。その理由は、社会に理解されたいというものだったり、自分がどちらかの性に寄った服装をしていることへの違和感・嫌悪感であったりします。「おっさんずラブ」では、同性が好きな男性であっても、「社会通念上の男性服」を着ることにに違和感がなかったようですが(同性愛者の大半は女装をしないのでこれはこれでOKなんですが)、もし、(↑写真は黒澤部長のインスタから引用した春田クン)黒澤部長が女性用スーツで出勤するようになったとか春田クンが牧クンと付き合いだしてから、髪の毛を伸ばして、お化粧してヒール履いて出勤するようになったとかになりますと、周囲の反応は様々で、特に人事担当者としては「こういうケースで会社はどうすればいいのか?」というのを懸念することがあります。LGBTのLGBまでは個人の領域だけどTからは会社で調整が必要になるかもということです。会社では、職域が「接客業」として固定されていれば、社則で制服や身だしなみなどもはっきり決められています。しかし内勤事務職 だけど ときおり社外のお客様の目につくかもぐらいの仕事内容だと、服装を厳密に会社が決められるかどうかは…正直難しい領域ですよね。産業医ちゃんも、好きな服を着たい気持ちはよくわかるので、応援したいです。ただ、時おり駅などで見かける、どう考えても違和感のある女装おじさんを思うと、人事担当者さんの悩みもわかります。ですのでこれについては、個別事例ごとに話しあいを重ねていくしかないです。社員さんご本人が、どこまでの配慮を望んでいるかにもよります。業種にもよります。あと、ご本人の着たい服にもよります。ほかにも、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)の場合、健康診断やトイレの男女分けをどうするのか、というような、細かい話も検討対象になります。…というわけで。社員数が50名に満たず、相談できる非常勤嘱託産業医が身近にいないいきなりよくわからない産業医と契約するのが不安…でも、ちょっと困っていることがあって、誰かに問題解決を手伝ってほしいそんな会社の人事・総務担当者様に向けて、ベテラン産業医によるスポットコンサルサービスやってますので、アドバイスがお役に立つかもしれないようでしたら、是非ご連絡を他社での事例をお話しながら、現実的な方向性を一緒に考えさせて頂きます。なお、LGBTってそもそも産業医の領域なのか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。確かに、産業医ちゃんも、LGBTの方の一部を「性同一性障害」と呼んで、「病気」みたいに扱うのは、なんとなく違和感があります。そう思っていたらちょうど、平岡諦さんが書いたこちらの記事が発表されました。この記事によると、2022年1月1日から発効される国際的疾病・死因統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems;略称ICD)では「性同一性障害;Gender identity disorder(GID)」が「障害」の項目から外れ、「17 : Conditions related to sexual health(性と生殖の健康に関連する状態)」の中の「Gender incongruence(性の不一致)」として位置づけられたとのこと。これは感覚的に「イイな」と思います。ただ、LGBTは、病気でも障害でもないかもしれないけど身体と心に関連することなので、産業医ちゃん、相談乗りますよ産業医ちゃんでした今日もお読みくださり、ありがとうございました。