12月30日放送のコーナー「プレイバック釜石2015」の後に流した曲は、5月27日に発売された星野源のシングル「SUN」。ちなみにエンディングは、マーク・ロンソン「Uptown Funk feat.ブルーノ・マーズ」でした。


裏テーマとして、筆者が今年ラジオやテレビでよく聴いた邦楽と洋楽からそれぞれ1曲ずつセレクトしました。


どちらもダンスクラシック&ブラックミュージックをベースにEDMとは別のベクトルのダンスミュージックの在り方を提示し、多くのリスナーの支持を受けた曲(アルバム)だったと思います。



マーク・ロンソンの「Uptown Funk」は今週の裏解説 第163回で紹介しているので、


今回は「SUN」も収録された星野源の4枚目のアルバム「YELLOW DANCER」(12月2日発売)の勝手にライナーノーツです。



星野は2012年12月にくも膜下出血と診断され(2013年6月にも再発)、2014年2月に日本武道館ライブで復活した。想像を絶するほどの苦しみを味わった訳だが、武道館でのライブでは、ナース姿の女性2人に連れられてステージに登場するという、病気の苦しみを逆手に取ったパフォーマンスで完全復活を宣言した(もちろん、このライブは素晴らしい出来だった)。


これまでの星野のイメージは、陰か陽でいえば陰。内省的な歌詞をギター1本で淡々と歌うというイメージがあった。しかし、完全復活以降は陽の楽曲が増えてきた。2014年のシングル「Crazy Crazy」はクレージー・キャッツへのオマージュを込めたホンキートンクなピアノの演奏が印象的(ちなみに、ドラムはピエール中野、ベースはハマ・オカモト)。そして「SUN」は70年代~80年代のダンスクラシック&ブラックミュージックの要素を取り込んだかなり前向きなナンバーだ。



某音楽雑誌のインタビューで星野は「コンビニでマーク・ロンソンの『Uptown Funk』が流れている感じがいいんだ」と話していた。大事なポイントは、マーク・ロンソンになりたいんじゃなくて、流れている感じがいいんだというところ。ブラックミュージックへの憧れは皆持っているが、血肉化するのはとても難しい。日本人であれば尚更(外国人が日本の民謡を習得するぐらい難しいことだ)。


そこで星野は自分なりのダンスミュージックとは何なのかと考えた結果、アルバムタイトルの「YELLOW DANCER」というコンセプトにたどり着いたのではなかろうか。近年流行りのEDMではない、老若男女問わず心が踊る生活の中のダンスミュージック。


1曲目の「時よ」から始まる早急シンセイントロに心躍らせ、2曲目のアップテンポな「Week End」、からのムーグ音が特徴的な3曲目の「SUN」であなたはすでに脳内ダンスホールで踊りまくり。または自然と口ずさみ、リズムをとっているはずだ。12曲目の「DOWN TOWN」もいい。シュガーベイブの名曲とはまた違ったストラット感あふれ、街中で聴いていたら思わずステップを踏んでしまいそう。シングルの「Crazy Crazy」「桜の森」「地獄でなぜ悪い」も収録した全14曲。年末年始、2016年もじっくり聴いてほしい1枚だ。



エフエム岩手釜石支局 千葉東也