先日、橋野鉄鉱山・橋野高炉跡を含む関連遺跡『明治日本の産業革命遺産』が

世界文化遺産に登録され、 6月からお伝えしてきた「釜石の鉄」に関連する話題も

15日の放送がひとまず最後となりました。

 

ご紹介したのは、橋野鉄鉱山 橋野高炉跡。

現存する日本最古の洋式高炉で、幕末から明治にかけての日本の近代製鉄業を支え、

国の発展に貢献した遺跡です。

ここには三基の高炉跡が残っています。

 

今回は「三陸ひとつなぎ自然学校」の伊藤聡さんに現地を案内していただきました。

高炉跡300m手前のインフォメーションセンターからスタートし、

入口の看板向かって、右から一番高炉・二番高炉・三番高炉の順番で回りました。

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まずは釜石の鉄の歴史についておさらいです。

安政4年(1857年)12月1日に盛岡藩士の大島高任が

釜石市甲子町の大橋に洋式高炉を建設し、日本で初めて連続出銑に成功。

それまでは、たたら製鉄という技法で鉄を作っていました。

しかし、刀や工具などの素を作っていた、たたら製鉄では大きな大砲を作ることはできない。

しかも、たたら製鉄は鉄を取り出すごとに、毎回、炉を壊す必要があったのです。

そこで、大島高任が洋式高炉を作ったことにより、より強く純度の高い鉄を生み出すことができ、

さらに毎回炉を壊さず、連続して鉄を取り出すことができるようになったというわけなんですね。

 

この橋野高炉跡周辺には、露天掘りをしていた(鉄鉱石を採掘していた)場所や

運搬路もあります。牛や人が鉄鉱石を背負って運んでいたそうです。

その採掘場所や運搬路も含めて、橋野鉄鉱山と言われています。

(注:採掘場と運搬路の公開はしていません)

 

そして本題です。

この橋野高炉跡は、安政5年(1858年)から建設されました。

最初に建設されたのは仮高炉。現在の三番高炉が仮高炉を改修したものとなっています。

高炉跡は3つ残っていますが、全て花崗岩(かこうがん)の石組のみ残っている状態です。

 

入口の看板から一番高炉までの道は砂利道で少し坂になっています。

<一番高炉>

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ご覧のように花崗岩が4段積み重なっているのですが、

全体の幅が、縦横約5,8メートル、高さ約2,4メートル。

四方に囲まれています。

当時はこの石組の中に高さ約7.8mの耐火煉瓦の炉が組み立てられており

覆屋(おおいや)と呼ばれる日本家屋のような建物で覆われていました。
 

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この看板の図を見るとわかりやすいかもしれません。

高炉が3つあった理由は、メンテナンスが必要だったからです。

30日~50日稼働したらその分、休ませる必要があったようですね。
休ませている間は、他の高炉で作業をするというわけです。

当時、合わせて250日稼働させており、約930トンの鉄を生産していました。

今の技術だと約1時間でこの量を生産できるようです。

<二番高炉>
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一番高炉からすぐ近くにある二番高炉。

ここは花崗岩が2段~4段積み重なっています。

全体の幅が、縦横約4.8m四方、高さ2,4m。当時の高さは約7.9m。

 

残り三番高炉のみとなりましたが、三番高炉まで下っていく間にも見所があります。

 

トラック1台分くらいの巨岩があるのですが、これ何だかわかりますか?

これは、花崗岩です。

柵の外側にゴロゴロしているのですが、ここから切り崩し石組に使ったそうです。

<種砕水車場>

種とは、鉄の素となる鉄鉱石のことです。

ここで、採掘場から運ばれた鉄鉱石を
高炉に投入する前に不純物などを取り除いていました。

その他、御日払所や、長屋・鍛冶長屋・大工長屋、石割桜などもあります。

石割桜に関してはこちら↓をご覧ください。

http://furusato.fmii.co.jp/kamaishi/archives/20906

 

<三番高炉>
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ここは花崗岩が1段~5段積み重なっています。

全体の幅が、縦横約5.4m四方、高さ約2,8m。当時の高さは約7.0m。

今は残っていないですが、水車を動力にし、フイゴという箱で炉に風を送り

高炉を動かしていました。

そして、二番高炉と三番高炉には炉底(ろてい)が残っています。

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炉底とは、上記の写真の真ん中にある塊です。

私と伊藤さんは炉があった中に立っているのですが、

炉は鉄鉱石と木炭を2:1の割り合いで入れて溶かし、

出来た鉄は湯口というところに流れていく。

しかし、炉には鉄が冷えた不純物が残ります。

その残ったもの炉底。当時のものが残っているんですよ。

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↑これが当時の風景です。(鉄の歴史館にて展示中)

ここに従業員1000人、牛150頭、馬50頭いたそうです。

当時、こんな感じだったのかな?

ぜひ、炉があった場所に入って上を見て想像しながら楽しんで頂けたらと思います。

そして、お越しの際は小さなもので構いませんので磁石を持ってくると楽しさ倍増ですよ。

伊藤さんに教えて頂いたのですが、鉄鉱石は磁石がくっつきます。

この石は鉄鉱石かな?と楽しむことができますよ。

ただし、石は持って帰らず、楽しんだら元に戻してくださいね。

それと、砂利道や坂道もありますので

歩きやすい格好で来てくださいね。

 

【釜石観光物産協会によるガイド】

①釜石ボランティアガイド会によるバスツアー

釜石駅と橋野鉄鉱山を結ぶ直通シャトルバスで

12月上旬までの土・日・祝日。

2便運行。(10時発-13着・13時発-16時着)

料金大人:(高校生以上)¥2000 子供(小中学生)¥1000 未就学児は無料。

②現地ガイド(所要時間 約45分)
可能な日時については一度お問合せください。

問合せ:0193-22-5835

 

【橋野鉄鉱山・高炉跡】

http://www.kyuyama.jp/kyushuyamaguchi/ky_iwate_01.html

 

★Text by. SHIHO / Photo by. SHIHO&千葉★