「釜石やっぺしFM」では6月から7月にかけて、釜石の鉄に関連する話題を様々な角度から紹介しています。

今回は釜石市の総合的な資料館・鉄の歴史館を取材しました。

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橋の鉄鉱山・高炉跡を含む「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録を前に、改めて鉄の歴史を知るには絶好の場所です。関係者から寄贈された歴史資料など、推定1000点以上展示・保存されています。



鉄の歴史館は釜石市大平町の高台にあり、釜石駅から車で10分ほどのところにあります。

オープンしたのは1985年7月。今から30年前です。



今回、我々を案内・解説してくれたのは、鉄の歴史館館長の岡﨑貞夫(おかざき・さだお)館長。

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まずは1階の総合演出シアター。中央には原寸模型の洋式高炉(3番高炉、高さ7メートル、上屋までの高さは14メートル!)があり、上手と下手の画面で大島高任と鉄の歴史館のキャラクター・サイ太郎が釜石の歴史と鉄、大島高任と洋式高炉、近代製鉄と釜石の未来が13分間に渡って説明されます。映像に合わせて高炉も実際に燃えているように見えます。

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1階にはパネルなど各種資料が展示されていますが、私が興味をひいたのは餅鉄という鉄鉱石。橋野町の橋野川で採取されたもので、餅のように丸々しています。鉄鉱石なので磁石もくっつきます。

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高炉内で鉄鉱石と石炭を勢いよく燃やすため、風を送る箱フイゴもありました。

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今から50年前に製鉄所で働いていた奥様方が作った「橋野高炉場盤景模型」。

新聞紙を溶かして、江戸後期から明治初期の橋野鉄鉱山の様子を再現しています。

完成度が高い。これを見ると、橋野高炉跡に行った時もイメージしやすいかもしれません。



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このほか、1階には大島高任関連の資料も数多く展示されています。大島高任は1857(安政4)年に洋式高炉で初出銑、いわゆる鉄鋼の連続製造に日本で初めて成功した近代製鉄の父です。高任関連の資料は大島家から寄贈されたものです。

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なお、5月1日付けで高任のやしゃご・大島輝洋(てるひろ)さんが名誉館長に就任しました。



2階に上がると、製鉄所の歴史に関する資料、パネルが展示されています。

 

高任の成功後、明治政府主体で大量に鉄を製造するため、釜石市に官営の製鉄所が作られました。釜石の製鉄所(新日鉄住金)は鈴子町にありますが、実は、大只越町に作られたかもしれないそうです。

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ドイツ人技師のルイス・ビャンヒーは鈴子町に大規模高炉2基を提案、一方高任は大只越町に小規模高炉5基を提案。明治政府は外国人技師に依存する形で、ビャンヒー案を採用。なので、もし高任案が採用されていれば、大只越町に製鉄所が作られ、釜石の町並みも今とだいぶ違っていたかもしれません。

とはいえ、官営はうまくいかず約3年で民間へ払い下げ(いわゆる民営化)。その後、変遷を経て、実業家の田中長兵衛が鉄作りに乗り出し、所長の横山久太郎や現場の責任者の高橋亦助(またすけ)として鉄作りに挑戦。48回の失敗を経て、1886(明治19)年10月16日、49回目でついに銑鉄の連続製造に成功したそうです。



そういった幾多の失敗を経て、現在の鉄の釜石の基礎が作られたのです。



歴史館で釜石に住んでいても知らなかったことを学ぶことができました。



釜石市内の方はもちろん、市外の方もぜひ訪れてほしいです。

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【鉄の歴史館】

住所=釜石市大平町3-12-7

開館時間=午前9時~午後5時(入場は午後4時まで)

休館日=毎週火曜日、12月29日~1月3日

入館料金=小中学生150円、高校生300円、大人500円(団体割引もあり)

電話=0193・24・2211



Text by チバ☆ Photo by チバ☆&ABE