自動運転について、こんな記事をよくみかける。

自動運転車が渋滞と駐車場をなくす理由
http://president.jp/articles/-/21583

「通勤バス・電車は姿消す」 自動運転車の未来予測、100年に1度の大変革
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/161027/mcb1610270500028-n1.htm

簡単に言えば、自動運転車により、渋滞、駐車場、通勤地獄がなくなるか、なくなると言わないまでも激減するようなことが書いている。

私は、全くそうは思わない。

例えば、東日本大震災の時に、東京では電車やバスが止まった。その結果、歩道に人があふれて、車道にまで人が歩き出した。
郊外でも、都心で働くお父さんたちを車で迎えに行こうとしたお母さんが、郊外の自宅から自動車で出発したところ、渋滞に巻き込まれて、自動車ならば往復で数十分の距離なのに、5、6時間もかかった。
このような体験をした方は多く、またこのようなニュース映像を多く見ているはずである。

なぜ、このような現象が起きたのかと言えば、多くの自動車は普段は駐車場に停まっており、道路を走っているわけではないからである。そのため、自動車が集中して大量に道路を走り始めると渋滞が発生するのである。

また、人間1人当たりの面積で考えてみる。
人間が、通勤電車や通勤バスで立っていたり、座っていたり、また、歩いていたとしても、他人との車間距離ならぬ人間距離を保ったとしても、1㎡で足りる。
ところが、自動運転車であれば、自動運転車そのもので全長3.4m以下、幅1.48m以下の軽自動車サイズでも5㎡必要である。車間距離を考えれば20㎡が必要であり、これが自動運転車で車間距離が狭まっても、10㎡ぐらいは必要である。
つまり、人間が電車やバスでは1㎡で足りるが、自動運転車はその10倍の面積が必要となる。自動運転車で、車間距離が縮まろうが、渋滞を避けようとAIが抜け道を駆使しようが、10倍もの圧倒的な物理的な差は、どうしようもならない。

そして、今まで電車やバスで通勤していた多くの人が、自動運手車で通勤を始めると、東日本大震災の時のように、各地で渋滞が発生することは明白である。

さらに、駐車場がないならば、ますます道路に、人間が乗っていない自動運転車までが溢れて、渋滞に拍車を掛ける。

だから、自動運転車がレベル5の完全な自動運転が達成され、値段も現在の自動車と同じ100万円程度で販売されたとしても、都心では、渋滞、駐車場、通勤地獄がなくなることはなく、むしろ悪化すると考えられる。

ちなみに、Wikipediaによれば、新宿駅の「1日平均乗降者数は約347万人(2016年)[3]と世界一(ギネス世界記録認定)多い駅であり、地下道などで接続する西武新宿駅・新宿西口駅まで含めると約371万人(2016年)となり、この数字は横浜市の人口に匹敵する。」とある。
変なたとえかもしれないが、新宿駅というたった一つの駅だけで、横浜市の人口が一日乗降するわけで、人間1㎡ではなく、巨象より大きい人間10㎡といった自動運転車が乗降すると考えると、新宿駅周辺の自動運転車による渋滞は半端ではない。
新宿の超高層ビル群に、人間10㎡といった巨象が通勤に集まるとすれば、とても通勤できるとは思えない。
新宿駅周辺の混雑ぶりを知っている者ならば、この混雑ぶりが自動運転車に置き換わることを想像すると、とても混雑が解消されるとは想像できないであろう。
例えば、自動運転車が、軽自動車サイズで10人ぐらい人間が乗れるようになったとしても、新宿駅のような超都心では渋滞が解消されるものではない。

もっとも、これは都心での話で、地方では、自動車がそもそも少ないので、自動運転車が普及すれば、運転のストレスから解消され、非常に便利になる。

しかし、都心では逆だろう。
結局、自動運転車が普及したところで、渋滞で遅刻することを恐れ、通勤地獄を覚悟して電車やバスで通勤を続けることになる。
タクシーも、自動運転車になれば、料金は確かに下がるだろうが、渋滞が悪化していれば、いくら料金が安くても使う気にはなれない。

個人的には、自動運転車が普及しても、個人の自動運転車が都心へ流入することは厳しく制限して、都心の自動運転車は、タクシーやバスといった公共交通機関を優先すべきであろう。
そうすれば、タクシーもバスも料金が格安となって、ますます都心の交通が便利になろうが。

自動運転車は、私も期待するが、上記の記事を鵜呑みにすることはできない。