「孫」代理出産:院長「娘への愛」強調 還暦目前、母体に危険も
「自分は長く生きた。娘のためになりたい」--。還暦を目前にした母が、子どもを産めなくなった娘を思い、代理出産した。実施した「諏訪マタニティークリニック」の根津八紘院長は「娘を思う親の愛から始まった。母親の代理出産はベスト」と理解を求めた。だが、危険性をはらんだ高齢出産となる「孫」の代理出産は海外でも少なく、懸念の声が上がっている。【田中泰義、森禎行、池乗有衣】
根津院長は15日午前の会見で、娘が子宮の摘出手術を受ける際、母親が「私が産んであげるから手術を受けなさい」と励ました経緯を紹介した。母親が「孫」を出産した異例の事態にも「奇異だが違和感だけで否定してはいけない。家族も了解し、問題ない」と強調。今回公表した理由について、「代理出産で生まれたタレントの向井亜紀さん夫妻の双子を実子とした東京高裁決定を不服とし、東京都品川区が最高裁に抗告したことに憤りを感じた」と説明した。
ただ、母親による代理出産は海外でも少数だ。国内でも01年に米国で卵子の提供を受けた女性が60歳で出産しているが、高齢出産による母体への危険は高く、根津院長も「母親の健康状態に問題はなかったが、致命的なことが起こるかもしれないと話した」という。
一方、柘植あづみ・明治学院大教授(医療人類学)は「そもそも50代の出産は危険」と述べたうえで「自分の娘が子どもを持てなかった責任の一端を母親が感じたと言える。子どもがいないことがつらい、かわいそうという見方に結びつく風潮を懸念する」と語った。斎藤有紀子・北里大助教授(生命倫理)は「どんなに信頼関係がある親子でも生涯変わらないとは限らない。子どもを産めない時は、母親が代わりを務めればいいという『人体の道具化』を招きかねない」と指摘した。
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■解説
◇早急なルール作りを
病気で子宮を失うなど自ら妊娠できなくなった女性にとって、代理出産は我が子を抱く唯一の方法だ。国や学会が代理出産を認めない中、現実には、タレントの向井亜紀さん夫妻のような海外での実施例も含め、出産数が増えている。
厚生科学審議会生殖補助医療部会は03年、代理母にとって妊娠・出産に伴う身体的な危険を与えることや家族関係を複雑にする恐れがあることから、代理出産を罰則付きで禁止すべきだとの報告書をまとめた。日本産科婦人科学会(日産婦)も同年、代理出産の実施を禁じる指針を策定した。
高齢女性が「孫」を産んだ今回のケースには、「死を覚悟した出産と言わざるを得ない」(日産婦倫理委員会の吉村泰典委員長)との指摘があるほか、「法律上の妹や弟」が「遺伝上の子」という極めて複雑な家族関係を生じさせたと言える。
一方、不妊治療に詳しい専門家からは「『どうしても子どもが欲しい』と考える患者は多く、その気持ちを最大限尊重すべきだ」(森崇英・京都大名誉教授)と、代理出産を認める制度の策定を求める声もある。
専門家だけでなく、世論も分かれている。厚生労働省研究班が03年に実施した調査では、代理出産を「利用したい」と答えた人が43%、「利用したくない」が57%だった。日産婦の指針では、将来的に代理出産を容認する社会的合意ができれば、「例外的な実施を再検討する」との付帯事項が付いた。「一学会で是非を決められない問題だから」(同学会)という。
厚生科学審議会の報告書以降、法制化に向けた議論は宙に浮いたままで、「国会議員の間でも議論が分かれており、今後の見通しは立っていない」(厚労省)。日産婦の吉村委員長は「代理母には妊娠・出産によるリスクがあり、女性を道具として扱っているとの見方もある。国は法制化を含め、早急に方向性を示すべきだ」とルール作りを急ぐよう求めている。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20061016ddm041040067000c.html
親子間だから 他人に依頼するより 代理母が親権を主張するなど問題は少ないとは思う
確かに 本当に子供を望む人には朗報なのかもしれない
美談と捉える人も居るんだろうな・・・と
でも・・・母親の体を危険にさらしてまで
大きな危険を含んでいることをさせていいのか・・・
この場合は無事だったから結果オーライなのかもしれないが
高齢による不測の出来事から 子供だけでなく母親にも何かがあったら
それぞれの家族の価値観なんだろうが
・・・・・・難しい問題です。
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