いくつか書いてきた体験話 今回がラスト
もっといっぱいあるはずなんだけど 忘れちゃってるし
地元へUターンしてからというもの すっかりなりを潜めていた霊感体質
おそらく いちばん出ていたじぃちゃんの側へ戻ったからだろうと 勝手に納得していた
そんなこんなでボーっと過ごしていたところに 以前勤めていた東京の会社から
しばらく手伝いにきてくれないかの連絡があった
と 言うのも
私がUターンした原因は いろんな意味からの疲れで 登社拒否みたいになっちゃったから
地元に戻って数ヶ月 症状も良くなっただろうし 会社も人が減って大変だということからのお誘い
ハッキリ言って 戻ってきてみれば 見た目は健康で
ひどかったメマイや吐き気なんかも無くなっているし
なんせ 田舎で面白みも何も無い生活に飽き飽きしてきていた
とりあえず 働きだして調子を崩すようならば 即戻るという約束で再び上京
住むところはビジネスホテル とりあえず7月半ばから2週間と言うことで
お茶の水周辺のホテルを会社でとってくれた
時はバブル 一泊8000程のホテルで日給1万
今考えても かなり美味しいアルバイト
その2週間と言われていたのが伸び伸びとなり
お盆で一旦帰省したものの 8月いっぱいなんとか手伝って欲しいといわれ
ホテル住まいは続く
段々のびる滞在期間の為 同じホテルに連泊出来ない時は
あっちゃーこっちゃのホテルを転々とする生活
8月末も近くなり そろそろ美味しいバイトも終盤
一番の友達と想い出作りで 東京ディズニーランドへ
日帰りは当然可能だけど 奮発してリゾートホテルへ宿泊
(ボーイさんが荷物を部屋まで運んでくれるホテルへ宿泊なんて 後にも先にもそれっきり・・・(爆))
楽しい時間を思いっきり過ごし 日曜の午後 定宿化しているホテルへチェックイン
友達も一緒だったけど ロビーで待ってもらい部屋へと荷物を置きに急ぐ
・・・・・と 相変わらず 前置きが長い(爆)
部屋のカギを開け 一歩中に入ると ちょっと空気が違う気がした
けれどロビーには友達が待っている 入口附近に荷物を置くと
バタバタと友達の元へ戻った
夜 食事を終え 一人部屋に戻ると
やっぱり空気の臭いが違う タバコ臭いとかとは違う 何かが焦げたようなきな臭さ
とりあえず一度窓を開け空気を入れ換え
なんたって まだ頭の中はディズニーワールドの余韻の中
気分は高揚ハイテンションのまま 前日の夜とはかけ離れた狭さの風呂に入り
早めに床についた
深夜 とんでもない音と揺れで目が覚め とっさに地震!と飛び起きようとしたら
金縛り 目さえ開ける事が出来ない
ベットが踊るようにガタガタと音を立てるのが止まっても金縛りはとけない
ベットが踊るようにガタガタと音を立てるのが止まっても金縛りはとけない
いつものように 足の親指に力を入れ踏ん張っても効き目は無い
そのうち ベットの頭の上の方から 赤ん坊の笑う声が近くなってきた
当然 ベットは壁際だし 目が開けられない状態だけど
明らかに 頭の上の方から近づいてきたのがわかる
「キャッキャ キャキャッ!」
ハイハイをしながら 私の顔の回りを笑い声をたてながらぐるぐる回り続ける
果てしなく回り続けるのだろうかと思うほどの後
ピタッと声が無くなり ホッとしたのも束の間
足首をギュっと握られ グッとベットにめり込むように押さえつけられた
全身が総毛立つ
次の瞬間 まるでベットの下から何かが這い上がってくるかの気配と感覚
再び 赤ん坊の笑い声
「キャッキャ キャキャッ!」
でも声は赤ん坊でも 這い上がってくる何かの重さは尋常ではなく
足先から膝 膝から腿へと圧迫され ベットへどんどんめり込む感覚に襲われる
胸元まで来たとき呼吸すら出来ず
恐怖でパニック状態に陥った私は 渾身の力を込めて
「やめてっ!!!」
フトンを跳ね上げた・・・・・柔らかい「ふにゅ」っとした感覚が右手に・・・
とにかく金縛りはとけ 部屋中の明かりを点け その場にへたれ込み
右手の感覚でまた恐怖に陥る
私はフトンを跳ね上げた 何か判らないものを払った瞬間
握った感覚・・・
あきらかに赤ん坊の暖かくて小さな柔らかいコブシ
すっぽりと私の右手の中に まだ感覚が残っている
右手をジッと見つめる・・・・
クーラーは利いているのに 吹き出してくる汗
この部屋には居られないと思い 荷物をまとめたものの まだ深夜である
どこにも行けるところは無い まんじりともできないまま朝を待ち
始発が動き出すと同時に出社 会社でしばし仮眠
朝一番に出社する社長が 私が居ることに驚き
事情を話すと ホテルに言えば部屋をかえてもらえるとアドバイスをもらった
そうか 言えば良かったんだ・・・・
とにかくパニクっていて ただこの部屋を早く出たい思いだけだった
夕方仕事を終えホテルに戻り 部屋をかえて欲しい話をすると
理由を聞かれ・・・・
「幽霊が出た」と小声で言うと 明らかに驚いた顔をして奥へ一旦消え
「お客様 申し訳ございません 本日満室でして お部屋を替える事は難しく・・・」
そう・・・朝申告していれば なんとかなったであろうに・・・
でもその部屋へは2度と入りたくないし
「今夜は別に泊まるので 明日からまたお願いします」と頼み
「お客様 手荷物をフロントに持ってきて頂ければ移動しておきます」の言葉に
「2度と あの部屋には入れないので 申し訳ありませんお願いします」と ホテルを後にした
しょうがない・・・会社のソファーで寝るか・・・
翌日ホテルのフロントへ行くと すっかり顔を覚えられたようで
満面の笑みでカギを差し出しつつ「お荷物は運んでおきましたので」
当たり前だろと心で思いつつ 「すみませんでした」と頭を下げカギを受け取る
入った部屋は 問題の部屋と離れた棟で階も違い
なんたって明らかに広さが違う 1ランク上の部屋(笑)
さて・・・この出来事から 私の霊感体質はすっかり大人しくなり
見える事もないし 金縛りすら無くなった
ただ あの赤ん坊の小さなコブシの感触だけは 今でもはっきりおぼえている。