2001年5月。


僕は実家には寄らず、
直接、父の入院している病院へと向かった。




玄関には母が待っていた。



病室へ向かう途中、
母は病気については言わなかった。





「で、結局、腫瘍は悪性、良性?どうなの?」


それでも真相にはふれようとしない母。


ただ廊下に足音だけが響き渡る。







とうとう、病室に向かうエレベーターの中で僕は聞いた。

「バカな息子じゃないんだから、さすがにわかるぞ。 癌なんやろ?」




そのひとことで、母は目に涙を浮かべ、泣き出した。





「全部とったんか?」「おとんは知ってるんか?」

その後もいろいろ母に尋ねたが、
母は涙を流しながら、ただうなづくだけだった。








涙がとまらない母は、病室にはすぐに入らず、

僕ひとり、父を見舞うであった。