道庵の弁 | arigioari

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今は公開していない、過去のブログの記事や、

現在の徒然なる思いの、寄せ集めです。

「友様……人間には魂と肉体というものがあって、肉体は魂について廻るものだ。肉体は死んでも魂というものは残る。早い話が、家でいえば肉体は、この材木と壁のようなものだ。たとえばこの家は焼けてしまっても、崩れてしまっても、家を建てたいという心さえあれば、材木や壁はいつでも集まって来るぞ。で、前と同じ形の、同じ住み心地の家を、幾度でも建てることができるぞ……いいか、その心が魂なんだ。だから人間に魂が残れば、死んでもまたいつか元通りの人間が出来上がって来る。だから何も悲しむがものはねえ……お前の尋ねる人も魂が残っているから、いつかまたこの世へ生まれてくるんだ。しっかりしろ」

「大菩薩峠-流転
の巻」中里介山