- 神はまた言われた。「水は魚の群れで満ち、鳥は地の上、天の大空を飛べ」。神はこれらを見て良しとし、また祝福して言われた。「生めよ殖えよ。魚は海の水に満ちよ、また鳥は空に殖えよ」。
神様は海には魚を、空には鳥を、それぞれあるべきものとして創られたそうだが、そのとき何かの手違いで、海に放り投げられた鳥、空に飛びたたされた魚がいたかも知れない。エラを持たぬ鳥も羽を持たぬ魚も、間違った場所で喘ぎながらも、結構生きながらえていっただろう。もっとも、そこにあるべくしてある連中に比べれば何倍もやりにくかっただろうけれど。
そうして、「やりにくかった連中」にだって「うまくいった一瞬」はあったはずだとわたしは思うのである。
本文 海の鳥・空の魚 あとがきにかえて より引用
ここにあるのは小さな、本当に、小さな心です。
それは、痛みだったり、憧れだったり、憤り、優しさ、感謝 あるいは、言葉に出来ない何か。
「どんな人にも光を放つ一瞬がある。その一瞬のためだけに、そのあとの長い長い時間をただただすごしていくこともできるような―――」
作品中で語られるのは、決して華々しい物語ではありません。
上手に息が出来ない。そんな閉塞間の中で、それでもフンと笑って生きているような人たちと、その人たちの環境や人に当たることなく、ひたむきに歩き続ける姿。
だから地味、だけど胸を打つのです。
短編集で、ほとんどの作品は8枚ほどの短い話です。ふっと疲れたときに、お勧めの一冊です。
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