TAD捜査本部
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相棒を捜して

3/7 13時50分都営新宿線市ヶ谷通過の笹塚行き 一両目後方の網棚から僕の相棒は消えた。

九州への異動内示を伝えられてから,1週間。

気持ちの整理もつき、化粧直し(タップ交換)をして九州にいっしょに連れて行こうといった目論見。

相棒を電車に乗せたのはその日が初めて。

いつもは家のショウケースに飾り、眺める都度目を細めていた。


出合ったのは、とあるHP上。

手が届かない定価を眺めつづけて1年以上の月日が過ぎた。

買えないくせにいつも売れないように願ってた。いわゆる憧れ。まるでアイドル。

突然、ネットオークションに出品される相棒。憧れが現実になる。

相棒は払った金額以上の喜びを僕に与えてくれた。

イメージの中でしか出来なかった球も、相棒でなら現実にすることが出来た。

勝てないと思って対戦を避けていた相手にも相棒となら挑んでいけた。


そんな、相棒は今はいない。


相棒がいなくなって今日で1週間。

すこしづつ、立ち直りつつある自分に嫌悪感を感じる。

「もう出てこないんだろうな」といった諦めと「きっと見つけ出してやる」といった気持ちが交差する。

あれから,球は撞いていない。

相棒と出会う前に10年以上使っていたショーンは今でも健在だが、どうしても撞く気が起きない。

撞くことによって、相棒とはもう会えないと認めてしまうような気がするから。


相棒はTADの中でもアタリだったと思う。いや間違いなくアタリだった。

相棒を貸してあげると皆、賞賛と供に彼を僕の手元に返してくれた。


4月には博多に赴任しなければならない。

単身赴任も相棒がいれば寂しくない。

赴任まであと2週間。諦めずに相棒を捜そう。