ひと雨ごとに  風は涼しく
ひと雨ごとに  空は遠く
ひと雨ごとに  光は迷いをなくす


幼く淡い夢はいつからか
鮮やかさとしたたかさを身に纏い
生々しい紅の獣に姿を変えた


月夜には子守唄を唄う

髪を乱す夜風が
白い月の輪郭が
あの獣を目覚めさせぬように


風が凍り
空が透けて
真っ直ぐな光の束が
纏ったものすべてを溶かすまでは




『涙と木琴』小川ゆか  より




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