先日訪れた香川県高松市の名園・栗林公園。その広大な敷地の中をゆったりと散策していると、思わず足を止めて見入ってしまう一本の松に出会いました。それが「鶴亀松(つるかめのまつ)」です。

青空を背景に、枝を大きく広げた見事な黒松。まるで鶴が羽ばたいているかのように、優雅な姿で私たちを迎えてくれます。足元には、百十個もの石が丁寧に組み合わされ、まるで亀が松を背負っているようなユニークな石組。まさに「鶴亀」という縁起の良い名前にふさわしい景観です。
この松には「百石松(ひゃくこくまつ)」という別名もあります。実はこの呼び名には、ちょっと面白いエピソードがあるのです。江戸時代、天明4年(1784年)に高松藩の家臣だった稲田外江貞一という人物が、この松をあまりにも愛し過ぎて、手入れに夢中になるあまり、お城への登城に遅刻。結果、なんと藩主から百石の俸禄を減らされてしまったというのです。
それほどまでに心奪われる美しさを持った鶴亀松。長い年月を経て、今も変わらず多くの人々を魅了し続けています。

写真を撮った日は、ちょうど空が澄み渡り、松のシルエットがくっきりと浮かび上がるような好天でした。自然の中でじっと佇むこの松は、まるで時間が止まったかのような穏やかな空気をまとい、見る者に深い癒やしを与えてくれます。
栗林公園は四季折々に美しい風景を楽しめる場所ですが、この鶴亀松はその中でも特に印象的な存在です。静かに見つめていると、自分もまたこの風景の一部になったような、不思議な気持ちになります。
香川に訪れた際には、ぜひこの名木に会いに栗林公園を訪れてみてください。歴史と自然が調和した空間の中で、心穏やかな時間を過ごすことができるはずです。