前回、完全発酵の日本酒について書きましたが、少し違う話をします。
ドイツワインについてです。ドイツは最近は温暖化の影響でそうとは言い切れないようですが、冷涼な気候です。したがって、一般的に葡萄の糖度が低く、酸度が高い。そんな葡萄でワインを普通につくると酸っぱくバランスの悪いワインになってしまいます。
それで昔から、葡萄の糖度を高めたり、ワインに糖分を残すさまざまな工夫をしてきました。
葡萄の糖度を高める工夫としては、遅摘み、凍らせる、干すなど。まだ人工的に糖度を上げるために補糖も行われます。
ワインに糖分を残す方法としては、亜硫酸による発酵の抑制、発酵途中でのフィルターによる酵母の除去、温度などでの発酵のコントロール、発酵後のワインに果汁を加える方法などです。
これらは、完全発酵とは真逆のベクトルですね。
完全発酵か否かという議論の前に、「どういう味、風味がいいのか」という問題があると思うのです。
味、風味を決める要素は、原料である米の品質や個性が大きいし、さらに生産者がどんな味をめざしているかが大きいと思います。ある作り手が目指す味、風味を実現する手段として完全発酵の理論を採用し、一定の支持を集めているといえるのではないでしょうか?
私個人としては、完全発酵の日本酒は、日本酒が到達した風味のひとつの方向性の境地だと考えます。
しかし、それだけが日本酒の風味ではないのではないかとも思うのです。