○○駅から徒歩□分.賃貸住宅の広告などでよく見かける表現です.東京など鉄道網が発達している場所ではお馴染みのこの表現,私の地元・福岡では違和感を感じることも.“博多駅から徒歩15分”などと書かれていると,駅からちょっと離れていて不便そうに思えるのですが,福岡市内とその近郊は西鉄(西日本鉄道)の路線バスが発達しています.逆に鉄道の路線は多くありませんので,近くにバス停があって運行本数が多ければ,近隣の移動にはバスのほうがはるかに便利です.

 公共交通機関といえば,私は鉄道よりバスのほうが馴染みがあります.ですので,鉄道網に負けず劣らず市内バスの路線が発達しているソウルやその近郊でのバスの利用も,行先や経由地のハングルさえ分かれば難なく…と言いたいところですが,やはり福岡のそれとは勝手が違うところがあります.今後,ソウルなど韓国の市内バスを活用しようと考えている方の参考になるかもしれませんので,利用する上で気にかけておいたほうがいいことを書き留めておきます.

 まず,これは日本でも同じですが,乗車前に路線やバス停の位置を確かめておくことと,交通カードを入手しておくことは必須です.しかし,この2つは日本よりも簡単です.バス路線はNAVERやDAUMの地図アプリで調べられますし,交通カードは街の売店やコンビニで購入できます.運賃は現金でも支払えますが,交通カードに比べてやや割高ですし,乗換え割引も適用されません.単に便利というだけでなくメリットは絶大ですので,交通カードを利用しましょう.

 ここまでは特に問題がないと思います.問題は実際にバスを利用するときです.日本では,バス停の近くに一人でも人がいれば,バスの運転手はバス停に停車したり,あるいは減速して,その人が乗車するかどうかようすを窺いますが,韓国ではそのような配慮はまずありません.ですので乗りたいバスが見えたら,そのバスをずっと見ながら“乗りますアピール”をしなければなりません.タクシーを止めるときのように,腕を斜め下に伸ばすジェスチャーをすればさらに良いです.

 上は乗客が少ないバス停の場合ですが,乗客の多い繁華街のバス停でも安心してはいけません.福岡の場合,バス停でバスが数台連なっているときは,まずバス停の少し手前で降車する客を先に降ろした後,改めてバス停近くに移動して乗客を乗せる,という方法を取るのが見られます.しかし,韓国ではそんな面倒なことはしません.自分の乗りたいバスから降車客が降りているのを見かけたら,どんなにバス停から離れていても駆け寄って乗車しないと,バスは客を降ろすとすぐに次のバス停に向かって走り去ってしまいます.

 無事乗車できて車内で一安心できるのもつかの間,降車バス停が近づけば注意しなければいけない事が….日本の路線バスでは,車内のどこにいても手を伸ばせば届くような場所に降車ボタンがありますが,韓国のバスの車内に設置された降車ボタンは,それほど多くありません.降りる直前に慌てないよう,最寄の降車ボタンの位置に気をつけておくと安心です.降車ボタンは1つ前のバス停を出た途端に押し,降車ドアのそばに移動するのが韓国流です.

 たまには運転手さんがうっかりして,バス停に着いても降車ドアが開かなかったり,さらには,バス停で止まらず通過してしまうこともあります.そんなときは大きな声で“문 열어주세요!”,“여기서 내려요!”などと言う必要があります.単にバスを利用するだけなら韓国語が話せなくても特に問題はありませんが,このような事態に備えて,念のためこの2つは言えるようにしておいたほうがいいかもしれません.

 こう書くと市内バスは何だか面倒にも思えますが,地下鉄と併用すればさらに便利に移動できますし,バスなら車窓越しに街のようすを見ながら移動できます.万一乗り間違えたときは,降りてタクシーで引き返したり,地下鉄の駅の近くで降車して,地下鉄で後戻りするという方法もありますので,あまり心配は要りません.