様々な会社から本音の質問をいただく。
「新サービスのリリースにあたり、
自社にて利用規約をつくらなければならないが、
どうやって作成すべきだろうか?」
「ようするに利用規約には
何が書かれているべきだろうか?」
この質問はとても多いが、各社の対応も似通っている。
たいていは、社内の法務または総務担当者が他社の利用規約を参照しながら自力で作成しておいてから、顧問弁護士などにチェックしてもらう、というやりかたに落ち着くようだ。
うまくいくこともあるだろうが、危険なやりかたでもある。
なぜこの流れになるかというと、利用規約を作成するには、まず対象となるサービスの内容を熟知していなければならないから、外部の専門家が作成するとなると、先にサービスの説明を受けて十分に理解していただく段階が必要となる。
ところが問題はその段階にどれくらいの時間を要するのかがみえにくいことである。まだ世にでていないウェブサービスであれば実際に目で見て確認することができなかったり、制作途中であると細部の仕様は未定だったり変更されたりもする。
となると、どのタイミングで説明すればよいのか、どれくらいの長時間を説明にあてなければならないかがわからないから、時間的なコストが見積もりにくい。
だったら、社内でいちど作成しておいて、その後チェックしてもらえばいいのではないか、という話になるのである。これは合理的なようでいて、危険もある。
もし、社内で作成された利用規約に事実とは異なる記述があっても、外部の専門家がそれを見抜けるとは限らないからだ。外部の専門家は、契約法務のプロではあるかもしれないが、御社のサービスについて熟知しているわけではない。法的に間違っていなければ、書かれた規約をそのまま信用するのが自然であり、これでオーケーです、となる。
結局、効率良く解決できたかと思いきや、それほど適切な規約には仕上がらないだろう。
そうならないためには最初から専門家をチームに引き込むのがベストであるが、前述した理由で難しいようであれば、できるだけ社内で作成する下書きの精度を上げるしかない。
つまり社内できちんとした利用規約を作成できるようになる必要がある。
その際のコツは、良いお手本を見つけて分析し、自社のサービスにあてはめていくことである。結構根気のいる作業になるが、他に道はない。
他社事例を参考にする場合、一流企業の利用規約を参考にすることが多いと思われる。まず入手しやすいだろうし、それに信頼性があると考えられるからである。
しかしここにも落とし穴がある。
いうまでもなく、一流企業の利用規約だから正しいとは限らないからである。特に知的財産権の取り扱いだとか個人情報の提供など、正解の定まらない問題は多い。大きな企業だからこそ負えるリスクの質や量は変わってくるのであって、そういう企業の規約だけがすべての規模のビジネスにとって妥当なわけはない。
もちろんその企業の対象となるサービスにとっては適合的であるかもしれないが、それが御社のサービスにとってもあてはまるとは限らない。一流企業の規約だから大丈夫だろうと考えて使ってみても、かえって自社にとってはリスクを負うはめになるかもしれない。