高2 K.Y

初めに、文化祭が無事終了しました。来場してくださった方、本当にありがとうございます。サラ研は高校校舎3階の教室を利用しました。他の団体と比べると明らかに集客力は悪かったですが、会誌や展示物を通して我々の馬への愛を十分伝えられたと思います。特に二日目は大雨にも襲われ、高温多湿のかなり居心地の悪い廊下に比べるとスカスカのサラ研は快適だったのかも...

 

 

ひとまず大仕事を終えたということで、今週から(ほぼ)毎週、競馬に関するコラムを書いていこうと思います。二月ごろに書いた「ゴルシワープ」の記事が結構バズったので、それに続ければなと。

 

さて今週取り上げるのは、史上初の無敗牝馬三冠を達成し、最近ではウマ娘にも登場していて話題沸騰中のデアリングタクトです。

 

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今週日曜のオールカマーにて秋初戦を飾る予定ですが、非常に特徴がつかみにくい馬でもあります。

 

突然ですが自分の競馬予想の主軸は「絶対的な競争能力」と「馬特有の特徴やクセ」の二つです。これを過去のレース映像やデータから導き出し、他馬と比較して今回のレースに合うかどうかを見抜くというのが基本だと考えています。このプロセスを事細かに言語化してブログに投稿することはあまりしません。(かなり文量が長くなってしまうので)ですが今回はかなり面白い議論ができそうなのに加えて、デアリングタクトの人気も考えれば良い記事になるんじゃないかな、ということで色々書いてみます。

 

まずは競争能力について。

 

とにかく意識したいのは、無敗牝馬三冠のインパクトに釣られてはいけないということです。デビューからの二戦は悪くないですが、クラシックの三戦はどれを見ても「圧倒感」は全くありません。強いて言えばオークスはずば抜けたトップスピードで差しを決めましたが...(後に詳しく説明します)。その後の金鯱賞も大きな不利はなかったはずだが前に届かなかったりと、不甲斐ない走りが続いています。いわゆる「復活」を望む声がよく上がるものの、むしろクラシック時もそこまでの能力があったわけではないと考えるのが自然。「G1好走レベル」に届くか届かないか、くらいの認識が適切なのではないでしょうか。

 

デアリングタクトの弱点として、「競馬の教科書」でも有名な玉嶋氏が何度も指摘していたのが、コーナリング能力の低さです。詳しくは本人のツイートをご覧になってください。

https://twitter.com/keiba_tamashima?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

 

コーナリング能力は簡単に言えば「どれだけ上手く曲がれるか」ということですが、指摘通りデアリングタクトは明らかにコーナーを苦手としています。

ひとえにコーナーが苦手と言っても、デアリングタクトの場合はコーナーで加速できないということです。それが現れていた例として特に挙げられるのが秋華賞やジャパンカップ。実際にレース映像を見てみれば、コーナーで大して位置を上げていないことがわかります。スピード持続力には長けていない馬なので必然的に後ろからの競馬が適してくるわけですが、特に小回りコースではコーナーで加速をしなければ前に届きません。

 

意識しておきたいのは、この馬の重心が比較的後ろにあるということ。これは三歳の時もそうでしたが、右前の繋靭帯炎を発症してからは、より前脚の負担を軽減させようとしてコーナーで推進力が得られていないように思えます(あくまで個人的な考察です)。

 

コーナーで加速する力がコーナリング能力だとすれば、デアリングタクトの加速力は必然的に低いだろうと推察できます。そうなると...

 

 

この上がりの速さはどのように理論付けるべきでしょうか。

 

ひとつはシンプルにトップスピードが速いということです。2020年のオークスが行われた東京競馬場は例年通り超高速馬場でした。2,3着馬(ウインマリリン、ウインマイティー)が共に母父に米国型ミスプロを持っており、明らかに先行有利のハイスピード持続馬場であったとわかります。それに逆らって圧倒的なスピードで差してきたということは、やはりスピード値は高いということです。もちろんこれは加速力に頼った「切れ味」とは違うことも意識しておくべきでしょう。長い直線を生かしてじわじわと伸びてくる、そんな競馬が得意だと考えられます。

 

 

ところでこの記事の執筆中に、「なんかこの馬にすごい似ているかも...」ととある重賞馬が頭をよぎりました。皆さんは誰だかわかりますか? そう

 

イルーシヴパンサーです。

 

こういう強引な比較はあまり好まれるべきではありませんが、例えば東京新聞杯で圧倒的な末脚を見せたときも、決して「切れ味」という言葉で形容していい走りではありませんでした。つまり、ハイペースで前が崩れたところにジリッジリッと伸びてきて、結果的に抜群の上がりタイムを記録した、ということです。直近の関屋記念は道中相当なスローペースで進み、直線に向いてからはわずかに加速しましたが力強さもないためそこまでスピードに乗れずという感じ。

そう考えるとデアリングタクトもこういった展開は苦手にするはずですが、似ているレースとしては2021年の金鯱賞が該当します。ギベオンが緩いペースで逃げて前が有利に。時計のかかる馬場はこの馬向きでしたが、比較的半径の小さいコーナーを持つ中京で大外を周ってスタミナを削り、直線の坂にも苦しめられ結局前を捉えられませんでした。

変わって宝塚記念ではペースと馬場を考慮すれば持久力が必要とされたでしょう。エピファネイア産駒で持久力には長けており、好走したのも納得できます。

 

以上を踏まえてオールカマーへの適性を考えます。詳しくは翌日のレース見解で話しますが、馬場が湿ったままであれば前が捉えにくいでしょう。もし多少乾燥して外差し馬が台頭してきたとすると、中山はコーナーが緩いほうですからそこまでコーナリングで差がつく舞台ではありませんから、こちらの条件のほうが狙えそうです。これに加えて持久力が要求されるようなレース、例えば有馬記念ではよりいい成績が残せる気がします。今回は無論オッズがかなり低くなりますから、期待値を考えれば重視するべき馬ではないでしょう。