キズナ(ディープインパクト)
ディープインパクト×ストームキャットのニックスのGⅠ馬7頭の内、唯一の長距離GⅠ馬で(他馬のG1勝ちは全て2000m以下)同ニックスの特徴である非根幹距離への強さを見せながら、2013年の日本ダービー馬。同年のニエル賞で本家イギリスのダービー馬・ルーラーオブザワールドを撃破し本番の凱旋門賞でも4着と好走した、ディープインパクト後継種牡馬で最大級の期待を寄せられる種牡馬。
能力のバランスとしては今年デビュー種牡馬の中でも随一かと推測。母のキャットクイルからはファレノプシス、3代母Fijiの牝系にはナリタブライアン、ビワハヤヒデ、ビワタケヒデの3兄弟がいるのでスタミナは十分。母母父ダマスカスは米2冠馬である事に加え本馬が欧州の馬場で好走した事でパワーもある。この母系的に短距離が多い2歳戦では苦戦するかもしれないが、3歳以降の中長距離戦、非根幹距離で期待。また、ファルコンステークスで勝ったハッピーアワーの母はこのニックス。「黄金ニックス」は産駒も走る。合いそうな母馬は、トニービンなどのグレイソブリン系やブライアンズタイムなどのロベルト系を父に持つ馬。ディープインパクト後継種牡馬産駒の2頭の重賞馬(セダブリランテス、ミッキースワロー)は母馬がこれに該当。中長距離スタミナ血統ばかりで重厚になり過ぎそうなものだが、広い馬場で根幹距離向きの瞬発力のみならず、セダブリランテスが福島芝1800のラジオNIKKEI賞を勝っているように小回り非根幹距離への対応力が見込める。特にブライアンズタイム系牝馬であればキズナの姉ファレノプシス(GⅠを3勝)の父はブライアンズタイムであるし、キズナの近親ナリタブライアンの父はブライアンズタイム。キズナの母系と相性バッチリなので、キズナとの相性は良さそう。また、キズナの近親ビワハヤヒデの父はシャルードでグレイソブリン系。東京巧者という共通点もあり、トニービンもキズナとの相性は良さそう。
 
エピファネイア(シンボリクリスエス)
皐月賞はロゴタイプに、ダービーはキズナに1/2馬身差及ばず2着も秋に本格化し菊花賞は5馬身差で圧勝。その後惜敗が続くもJCで4馬身差の圧勝。ダービー2着→秋GⅠという点は父シンボリクリスエスと共通している。
母はGⅠ馬3頭(リオンディーズは朝日杯FSを、サートゥルナーリアはホープフルS)を輩出した日米オークス馬シーザリオ。母父スペシャルウィークの父はサンデーサイレンス。サンデーの孫世代との配合で4×3の奇跡の血量になり、2001年以降の父ロベルト系重賞勝ち馬80頭のうち母父サンデー系は29頭。対して、母父キングカメハメハは1頭もいなかったというデータからもサンデー系母馬との産駒を狙うべきなのは確実。
 
リアルインパクト(ディープインパクト)
3歳時、古馬相手に安田記念を勝ちこれが初重賞制覇。以降阪神カップ連覇、7歳時には豪GⅠジョージライダーステークス勝ち、ドンカスターマイル2着と海外遠征で実績を残した。
母父メドウレイクは米GⅠアーリントン・ワシントンフューチュリティ勝ち馬。ここから受け継いだ早熟性は申し分ないが、7歳で2度目のGⅠ制覇を成し遂げた競争寿命の長さも特筆すべき点。安田記念のような高速馬場から稍重、重だったが結果を残した豪州遠征から見ると馬場適性は広い方であろう。マイル以上では勝ち鞍は無く、ディープインパクト産駒には珍しい短距離傾向の馬。ディープインパクト産駒はこの馬同様、母系に米国スピード系が入っていることが多いが、適性が短距離化することは少ない(マイラーになりやすい)。また、母母父インリアリティはマンノウォー系で、現存する数少ないゴドルフィンアラビアンの直系。インブリードが避けられ、より純度が高い米国スピード血統を作る事が出来る。兄にはアイルラヴァゲイン(GⅢオーシャンS)、ネオリアリズム(香港G1QEⅡC)とファミリーも良血。産駒がデビュー済のディープインパクト後継種牡馬には、先述した通り短距離馬が居ない(ほとんどマイラー)。これまでとは一線を画し、牝馬の母系が米国スピード系であればディープ系らしからぬ短距離適性の高い快速馬となるだろう。二歳から活躍できそうで、新馬戦から狙いたい。
 
フェノーメノ(ステイゴールド)
ダービーはディープブリランテのハナ差2着。1番人気に推された天皇賞秋はエイシンフラッシュに差され2着。4歳時には天皇賞春を制するも故障で半年休養。その後5歳時に天皇賞春2連覇を達成。
父はステイゴールド。母父のデインヒルはイギリスの短距離GⅠを勝った馬。早熟性を伝える血統で英仏では計5度、オーストラリアでは9度のリーディングサイアーに輝いた。日本での代表産駒に秋華賞・エリザベス女王杯を制したファインモーションがいる。この馬も他のステイゴールド後継種牡馬と同じく、母父米国型と配合すればスピード馬場にも対応できるはずだ。
 
マジェスティックウォリアー(エーピーインディ)
通算成績米2勝のうち1勝は2歳GⅠホープフルステークス。種牡馬としては産駒に米GⅠ4勝のプリンセスオブシルマー(社台ファームが310万ドルで落札)、南部杯2連覇のベストウォーリアなど。
父はブリーダーズカップ勝ち馬エーピーインディ。母ドリームシュプリームもGⅠ2勝の名牝。セクレタリアト、ボールドルーラー、バックパサーのインブリードが起きているなど米国競馬の結晶と呼ぶべき血統。母父がミスタープロペクター系であれば3×4を作り出すことも可能。事実、日本での活躍産駒2頭は母父ミスプロ系。
 
ワールドエース(ディープインパクト)
4戦3勝で皐月賞に臨み、スタート時に落馬寸前の不利があったもののゴールドシップの2着。ダービーでも1番人気に推され、明け4歳の2戦目、読売マイラーズカップでは1分31秒4の脅威のレコード勝ち。4歳の春までは一度も掲示板を外さなかった堅実派。しかし成長期の3歳、左前脚に球節炎と屈腱炎を発症した事が響いたのか、その後は振るわず、オーストラリア遠征もリアルインパクトの方が活躍、本馬は振るわず…結局GⅠ未勝利で終わってしまったが、スケールの大きさを感じさせる強烈な末脚からファンも多い。
母はドイツオークス3着のマンデラ、叔父にはGⅠ・3勝のマンデュロ。母父はドイツリーディングサイアー5度の実績を誇るアカテナンゴで、当馬は母父としてもケンタッキーダービーとドバイワールドカップを制したアニマルキングダムを出しているゴリゴリのドイツパワー血統(マイラーズカップを勝てたのはドイツのシュタルケ騎手がハマったからかも)だが、早い上がりのレースのも対応できる、更に母母父ビーマイゲストは典型的な欧州マイラーで、パワーに負けない瞬発力を持っている。母父として愛史上最強マイラーとの呼び声高いロックオブジブラルタルやNHKマイルカップ馬のウインクリューガーなどの活躍馬を輩出。
ドイツ血統の種牡馬というとエイシンフラッシュやノヴェリストの成績が微妙な事から、初年度産駒からは狙いづらいイメージを持つかもしれないが、本場には追い風が吹いている。JC世界レコード決着が影響したのか、最近は馬場の作りが重めに。ノヴェリスト産駒のラストドラフトが京成杯を制したように、パワー系種牡馬に追い風が吹いている。ノヴェリスト産駒やエイシンフラッシュ産駒がデビューしたのは近年でも硬い馬場の頃で完全に逆風の中でのスタートであったが、本馬の場合はドイツ血統にぴったりの重めの馬場で競馬ができるだろう。繁殖牝馬も米国系ではなく欧州系で良し。ダービー後までこの馬場傾向が続けばの話であるが、少なくとも昨年のようなスーパーレコード続出馬場にはならないはずだ。
 
エスケンデレヤ(ジャイアンツコーズウェイ)
ダート9FのGⅠウッドメモリアルステークスを制覇するも故障によりケンタッキーダービーには出走できなかった。ストームキャット産駒の父ジャイアンツコーズウェイは英仏2000ギニーで2着も、英愛の8F〜10FGⅠ5連勝。ブリーダーズカップクラシックでも2着に入るなどダート適性もあった。半兄バルモントは英2歳GⅠを制した。
父ストームバード系の馬はマイルCS、朝日杯FSそれぞれ2勝、ダートGⅠ3勝。ストームバード系のエーシンフォワードは母父にヘイルトゥリーズン系の米ダートGⅠ馬を持つマイルCS馬。サンデー系との親和性もありそうだ。米国型ミスプロも注目。
 
トゥザワールド(キングカメハメハ)
皐月賞に5戦4勝で臨み、GⅠで3度の2着の実績馬。オーストラリア遠征でも2着し、海外への適応力を見せた。
母はドバイワールドカップで牝馬として史上最高着順である2着に入ったエリザベス女王杯馬トゥザヴィクトリー。兄は重賞5勝のトゥザグローリーで、善戦マンの血には抗えなかったものの、実力は折り紙つき。
こちらもワールドエース同様、パンパンの良馬場より重めの馬場が合う。種牡馬としては良いスタートが切れるだろう。また、キンカメ サンデー ヌレイエフと主要種牡馬がたくさん入っていて、なかなか付けやすい牝馬が居ないのが事実で、相手とすれば「米国型」か「欧州型」の二択になるだろう。ここでは「欧州型」に注目したい。パワー馬場への適応力と、サドラーズウェルズが入っている血統であれば名牝スペシャルのインブリードが発生する。このインブリードはエルコンドルパサーやリオンディーズなど成功例が多く、絞られた産駒の中で該当する馬は何頭かいるはず。POGなどでも狙ってみたい。
 
ゴールドシップ(ステイゴールド)
稍重の皐月賞では2着のワールドエースに2 ½馬身差を付けて快勝。ダービーでは5着に敗れるも神戸新聞杯→菊花賞→有馬記念と3連勝し満票で最優秀3歳牡馬に。4・5歳時に宝塚記念連覇、4−6歳時に阪神大賞典3連覇、6歳時天皇賞春制覇などGⅠ通算6勝。
父ステイゴールド×母父メジロマックイーン(通称ステマ配合)はドリームジャーニー、オルフェーヴルなどGⅠ15勝、重賞31勝。
母ポイントフラッグはチューリップ賞3着など。
8代母の星旗の産駒クモハタは1939年のダービーを制し、種牡馬としては産駒がGⅠ17勝。同じステマ配合のオルフェーヴルが輩出した2頭のGⅠ勝ち馬(ラッキーライラック、エポカドーロ)は共に母父フォーティナイナー系。オルフェよりもさらに重厚な牝系を持つゴールドシップなら、母系にスピード血統を持っていなければ日本の芝のスピードに対応できないだろう。
 
スピルバーグ(ディープインパクト)
2歳新馬勝利後、ダービーを目指し重賞やOPを使ってプリンシパルステークスを勝利、ダービー14着後、休養に入る。4歳、5歳で条件戦とOPを勝利し、2015年の天皇賞秋で重賞初制覇がGⅠ初制覇。ジェンティルドンナやエピファネイア、フェノーメノ、イスラボニータといった超一流馬相手の勝利である。(唯一の重賞勝利)
ミスタープロスペクターとサドラーズウェルズが入っており、この馬自体も5代血統表内に3頭のインブリードが発生。キングカメハメハを父に持つ母馬とであれば、成功例の多いミスタープロスペクターの4×3が発生。
 
カレンブラックヒル(ダイワメジャー)
デビュー4連勝でNHKマイルカップを制すると、初の古馬とのレースになった毎日王冠もジャスタウェイを抑えて勝利。古馬になって以降は道悪で重賞を2勝した。道悪を苦にせず、東京でGⅠ、小倉でGⅢ勝利とコースへの適応力も高い。東京のマイルを逃げ切り勝ちできることから、ポテンシャルは極めて高い。距離は1600〜1800で適性は芝。
ダイワメジャー産駒のGⅠ馬の産駒デビューは、コパノリチャードと当馬で初めて。どんな馬が出るか大まかに予測すると「広いコースが得意なパワー系マイラー及び短距離馬」であると考えられる。ただ、カレンブラックヒルは自身が小倉でも重賞を制しているように小回りでも十分通用。坂のあるコースの方が得意であるだろう。米国型と合わせても当馬のパワーで坂も苦にしないと思われる。早熟性もあり、2歳から高いパフォーマンスが期待できる。
 
ウインバリアシオン(ハーツクライ)
ダービー、菊花賞ともにオルフェーヴルの2着。その後も天皇賞春、有馬記念と通算4度のGⅠ2着。引退後1度は乗馬の報道が出たが、青森で種牡馬入りすることとなった。
父はハーツクライで、母父のストームバードはイギリスの2歳GⅠを制した馬。産駒にディープインパクトのニックスでも知られるストームキャットがいる。父ハーツクライ×母父米国型は軽い芝への適性が強く出る傾向有り。同じサンデー×ストームバード系のディープインパクト×ストームキャットとは違った適性を持つことに注意されたし。