ゆっくりと文字が書き込まれていく


一つのー言葉を頂きました

大切にーしないといけないー言葉

内にーしまって大事にーするのです

大事にー大事にー色褪せない様に


同時にー初めて感じた表現が出来ないー感情

締め付けられたー様に感じたーのです

どうー言い表せばー良い感情なのーでしょうね

手を伸ばそうとーして躊躇ってー結局引っ込めるー様な


もしかしてー切ない、とー言うのかしら

違うのーでしょうか、うーん、難しいーのです



あ、闘技場でキーシェさんとー偶然御手合わせをーすることに

ふふ、これで2度目とーなるのですーけれど、今回はー負けてしまったのーです

前回はー勝っていたのーで、これで1勝1敗なのーですよ

次はーまけませんーからね


後でーいたいのいたいのーとんでいけをーしに来てくださいーました

ふふっ、痛覚はーないのですーけれど、気持ちが暖かくーなったのーです

有難うーです、キーシェさん


休む前にー明日の準備をしっかりーして



ここで文字は途切れている

今日は此処までのようだ

冬の夜明け前はとても静かだ

けれど、ついさっきまでは周囲を喧騒が包んでいた

戦争と言う名の舞曲が


けれど、空が白み始める頃には終わった様で、護衛として来ていたケルベロスが気配を感じたのか

身体を伏せて休み始める

冬の朝に注ぐ日の光はとても気持ちが良い

だから、任務の最中だと言うのに少しだけ謳ってしまった


空気を震わせて音にして、気持ち良さを謳う


呼応する様に周囲の木々も草花も

そして、傍に伏せていたケルベロスも


朝日を浴びる事の出来る幸せを謳う



今だけは見張りも何も忘れて光の中に



暫く後に伝令が来て伝える

自国の勝利を



淘汰の終了

天翼解放についで二つ目


過ごした森と近い世界

弱肉強食の理は人の世でも


きっと基は変わらない


樹も人も世界も


弱いモノから消えていく



ヒトに聞けば其れは悲しいと言い

彼らは一つ一つの死に意味を求める

騎士道、宗教、色々な物を死に添えて彩る


其れはとても歪で素敵だと柿は思う


ヒトにしかないものだ


だから彼らを見るのは面白い


まだ暫くは見ていられるだろう

此度はこの身は朽ちなかったのだから





根を新たな場所へ追加

ゆっくりと白い紙の上に文字が載っていく

ただし、美しい字とは程遠いが



ゼブさんからー御手紙を頂いたのーです

それも、綺麗なー白い便箋に入ったー御手紙を

今まで御手紙はー色々頂いてーきたのですーけれど、便箋入りなんてー初めて頂いて

とてもー嬉しい気持ちにーなりました


呼鳩さんのー御宅を訪ねた時に彼女にー渡した香木もしっかりとー使って頂けましたし

ふふ、有難うーをいいませんーと、ね

元気になってーらした様でよかった


そうそう、その後にーメルザライアさんと闘技場でばったりとーであったのです

勿論、対戦相手とーしてですけれど


ふふ、彼女はーとても強かったのーです

魔法を使えるー方々にはやはりー及ばないのーかしら、ね

私も使えればー良いのでしょうーけれど、私が同属とお話できる事ーも人にとっては魔法の様なー物なのですよ、ね

そう思うとー得た魔法が違うだけーとも思えるのーです

どちらがー良いのかは得たもの次第ーなのかしら


あ、そうそう。そうーなのです

私がーゼブさん達に送った香木、メルザライアさんもー私の怪我を心配して下さってー届けて下さいました

ふふ、凄いー偶然なのです

残念なー事は私に嗅覚がーない事なのだけど

でも、朝やー夕方に訊ねてくれる小鳥達はー普段より気分良さそうにーして居たから

きっとーとても良い物なのでしょうーね、香りとー言うものは


嗅覚もー真似出来たら良かったのーですけれど、ふふ

視覚、聴覚、触覚だけーではやはり見える世界はー狭いのーかしら



その後でー更に嬉しい事が

アニマさんからー肖像画が届いていたのーです

彼女のーあの独特の文字をー大きな掲示板でお見掛けーして、洞窟を訪ねてーお願いしたら受けてー下さって

ふふ、それがー昨日の事ーですのに


なんてー素敵な肖像画

私だけでー無く腰をかけた同属のー生き生きとした姿

見ているだけでーふっと微笑が浮かんでーしまうのです

嬉しい気持ちーを抱きしめて

今夜はー眠りにつきましょう




ここで文字は途切れている

今日は此処までのようだ

相も変わらず読み辛い字が紙の上に生まれていく



呼気、とーいうのだったーかしら?

夜、月明かりのー丘で話している方のー口から白い煙のー様なものが出ているのーです

私からはー出ない其れ

とてもー不思議


種の差なのーでしょうーけれど

生まれてーすぐに闇とー同化して

朝にもー見えてー空に同化して

すぐにー見えなくなる其れーは何だかとてもー綺麗なのーです

最初、見つけた時ーは大発見だとー思ったのーです

けれどー、冬には普通にー起こる事なのですって


森の小鳥達ーからは出ていた事がーなかったのでこの年までー知らずに過ごしてー居りました

大きな動物ー例えば鹿や熊ーでしたら見えるかもしれないのだーそうですけれど

熊も鹿もー冬に近くで見たー事がないのーです


うーん


不思議ですーよ、ね?

どうしてー呼吸に色がーつくのかしら

私の呼吸ーには色なんてー付きませんーのに

ふふ、何だかー其れを知っただけでもー素敵な事なー気がして嬉しくーなります

明日はー何か新しいー発見はあるのーかしら



ここで文字は途切れている

今日は此処までのようだ

メモ用紙が挟み込んである


ヴァルドさん

大きなー身体の方

そしてー揺らぐ事のないー己だけの矜持をきちんと持ってー居られる方

娘さんとはーとても仲が良さそうーなのです

戦争でもー頼りがいがーありますし、頼られるー存在ではないーかしら

色合いはー深い蒼色の内にー脈打つ赤をお持ちの方


もし彼をー謳うーならば

響かせるは『猛』き咆哮
彼の存在は誇りを掲げ憂わず爪牙を奮う者
其は『猛る者』也


名のー音では謳えないーので代わりに色をー謳にして

うん、この様にー見えるのです




時折、冬でもー雨が降るのーです

染み渡るーかのような雨が


雨の立てるー音は心地よく

樹皮にー葉に触れるー感触も愛しく

身体にー染み渡るー其れを私は大事にー思うのです


昼夜ー関係なく降る雨


香りがーあるそうなのーですけれど、香りをー知らない私にはー其れが何なのか見当もー付かず

経験をー伴わないー知識だけでは感じ得ない世界がーある事を少し寂しくー思います

それはーどうあっても全てを知り得る事ーが出来ないと言うー意味ですーから


ああ、でもー視覚と聴覚、わずかなー触覚からだけーでも感じる事の出来るー世界はとてもー素晴らしく

ふふ、生まれ出でてー毎日が幸せなのーです


日の光も、曇り空もー降る雨雪も

水もー土も風もー身を焼く炎でーすら大切で


ああ、でもーより大切にーしたいのは繋がったー縁


誰かを知るー事が出来るのはとてもー幸せな気が致します

っふふ、どうせならー世界中の人をー知りたいーのです

途方もー無いかしらーね?


雨が緩やかにーなって参りました

そろそろー止むのだとー思います

周囲からはー歌う音が

畑からー道からーいいえ、周り全てーから

雨を愛するー属を同じくするー者達の大合唱

『人』はー精霊使いでもーなければほとんど聞けないーその歌を、雨が止むまではー聞いてー居ましょう


久しぶりのーこの冬の雨をーもう少しだけ楽しみーたいですもの



ここで文字は途切れ散る