紙面に黒いインクが文字を描く

字は最初に比べると上手くなってきているようだ



名前にー込める思いはなんでしょう

名前を捩ったー詩を書かせて頂いているとー時折思い浮かべます

想像してみる名前の意味

貴方の名はーどのような願いの下に付けられたのか


そっと教えてー下さいませ

そう文字に語りかけてー詩を綴ります



綴りながらー思うのです

どうしてー文字の様な不便な物をー使うのか

言葉の様なー不確かな物を使うのか

私がー森で過ごしている合間はー根で会話をーしていました

其処には嘘もー偽りも無く

意思を伝える手段ーですから其れが当然のはずーなのですけれど

人の世界でー学んだ言葉と文字はーそうではなく

嘘も偽りも真実も、全てがー混ざり合った不思議な伝脱手段ーでした


これではー思う事の半分すらー伝える事が難しいのではーないでしょうか?

会話をしなければー相手に意思が伝えられない

根で通じ合って居るー状態と比べれば何と不便なー事でしょう

けれど、混ざり合っているからーこそのバランスがあるのーでしょうね

人の世界ではー真実は時に残酷ですもの


ああ、でも、助けが欲しい時やー誰かに傍に居て欲しい時

言葉を出せない方はーどうするのでしょう?

誰かに意思を伝えたい時ーに言葉を上手く仕えない方は?

小さな合図でー気付ける人は多くなく、やはり言葉でー望みを伝えるしかー無く

どんな感情もーそうやって伝え合えればーと思えど、一握りしかー出来ないのでしょうね


ああ、そう思うとーやはり不便な


けれど、その楽しさにー魅せられた私はー言葉を愛しく思うのです





此処で文字は途切れている

今日は此処までのようだ

数多の世界を彩る英雄伝

紡ぎ謳われ受け継がれる



………ポロン


ハープの揺れが最後の旋律をそっと響かせる

一拍の静寂の後、その場を支配するのは人々の拍手

沢山の音に囲まれ、謳い終わった奏者は軽く一礼を

其れに呼応するように大きくなる拍手



此処は何処にでもある静かな街の酒場

そして、その中で謳ったのは何人居るとも知れない二流の吟遊詩人の一人

小さな町では詩人は滅多に現れない

そんな娯楽の少ない街だからこそ、吟遊詩人は歓迎された

これがもし大きな町であれば、客の奪い合いで二流の詩人は苦労をした事だろう



「ふぅー。今日は結構お客さんが多かったですねぇ」

「お疲れ様、おかげでうちも何時もより繁盛してるよ。ああ、お茶でよかったかな?」

「ええ、一応喉が商売道具ですからエールやラム酒はちょっと」

「はは、そりゃそうだな。お、そうだ。良かったら息子の面倒頼めないかな。まーたお前の子守唄が聞きたいってせがんで寝やしないんだよ、あいつ。ほら、これでどうだ」


トンっとテーブルにカップが置かれる

沸き立つ湯気に甘い香り

温かい紅茶だった


「あはは、小さいとはいえお客さんがついてくれるとは僕もそろそろ一人前ですかね。あ、有難う御座います」

「お前さんは十分良い歌い手だよ。昔此処に来た歌い手を思い出したよ。あの人も立派な歌い手だったなぁ。多分聞きに着てた町のもんもそう思ってるだろうさ」

「へぇ、そりゃ嬉しいですね。でも、これが実際大きいところへ行くと中々で。やっぱり一流の人には遠く及ばないですよ」

「そんなもんなのかねぇ。まぁ、頑張ってりゃ何時か納得出来る日が来るさ。ところで、後数日は居るんだろう?」

「ええ、良ければもう3,4日歌わせて頂きたいですね」

「OKOK。じゃあ、もう少しだけ頼むな。さて小さなお客がお待ちかねだ。悪いが頼んだよ」

「はは、了解。営業活動してきますよ」


紅茶を飲み干すと酒場の奥の一家が暮らす母屋へ

その中の一室。子供用の部屋だろう、玩具や絵本が転がっている

部屋の窓際に置かれたベッドの上には小さな男の子が目を輝かせて待っていた


「もー、遅いよ。僕待ち草臥れちゃった」

「ああ、ごめんごめん。少しお父さんとお話してたんだよ」

「パパかぁ。むー、早く呼んでねって言ったのに」

「後、お茶を頂いていたからね。お父さんは悪くないさ」

「うんー。解った。あ、今日のお話は何?」

「そうだねぇ、今日はどんなお話にしようかな」


はて、と考える

酒場での歌は彼も毎日聞いている

そうして此処に着てからは毎晩彼の為にも歌っている

ともなれば謳える歌はそう多くは残っていない

ならば


「今日は歌に憧れる男の話をしようか」

「英雄さんのお話じゃないんだ?歌に憧れるってどんな人なのー?」

「その人はね。勇者と呼ばれるほど勇気も無くて、戦士の様に腕っ節も無くて、でも、ある事にだけは自信が有った人なんだよ。それは…」


ポロン…と持っていたハープを鳴らす

すると少年はまだ何か聞きたそうにしながらも黙って奏者の歌を待った


「それは世界の片隅の物語


英雄でもなく勇者でもない日々を慎ましく暮らし、彼らに憧れる者達の物語


一人の吟遊詩人の物語」


ポロン、ポロン・・・とハーブが音を奏でてゆく

客は一人

けれども奏者は歌を疎かにする事は無く謳い続ける


「彼が生まれたのは山間の村

其処では娯楽も何も無く、変わらない日々が続く

そんな彼に訪れた一つの転機、それは……」


ハープの音が止まる


音の変わりに部屋を彩るのは奏者の声

低く、染み渡る様に

決して一流とは言えない、けれども耳に優しい低い音色


「村を訪れた一人の吟遊詩人

村の人々はその声に、その物語に酔いしれる

彼の歌声は神の声、山の獣も聞き惚れて

村の酒場は大騒動

連日連夜、詩人の歌声は山間の村を彩り続けた


その歌を聞いた少年は自身の声を省みる


声変わりをしていない高い声

村の中では一番と思った自慢の声


打ち砕かれた自信と同時に得たのは強い憧憬の念


少年は吟遊詩人に憧れた

そうして彼は試みる

あの人へついて外へ出ようと」



再び弾かれるハープの音色

それは低い声と重なって部屋に世界を作り出す



「願いは軽く受け入れられ

少年は夢の世界へ一歩踏み出す

初めて見た外の世界

師と旅して周る世界は刺激的だった

見る物触れる物出会う物、全てが新しい世界

それは若い少年には刺激的で

彼は何時しか歌う事を忘れていった


ついには師とも別れ、彼は一人で世界を歩き始める


歌を忘れて世界を歩き、気付いた時には彼の声は死んでいた


そこで彼は漸く気付く


自分があの日、追い求めた世界を」



窓から小さく虫の声が響く

ハープに声に虫の音

三者が織り成す小さな世界



「死んだ声を追い求めて彼は再び旅をする

師と巡った旅路を

あの時覚えた憧憬を追い求めて


けれど一度死んだ声は元には戻らず

彼は街を行く度に自身の声に打ちのめされた

それでも旅を続ける内に彼は死んだ声でも術を得て

やっとの事で歌を謳う

それは憧れには程遠く

亡くした声にも届かない


それでも彼は歌を謳う


追い求めたのあの日を取り戻そうと」




ハープの音色が止まる

聞こえる音はもはや彼の声だけ

そうして最後の一小節が紡がれる



「それは世界の片隅の物語

 

英雄でもなく勇者でもない日々を慎ましく暮らし、彼らに憧れる者達の物語

 

歌を志し、歌を求めた、一人の吟遊詩人の物語」



ポロン…



ハープが透き通った音を奏でる

そして一拍

部屋に訪れるのは静寂


そして


「スー、スー・・・・・・・・・」

「おや?」


少年の寝息

どうやら何時ものように歌の途中で寝てしまったようだ

奏者は軽く微笑むと彼にそっと毛布を掛けて部屋を去る


そうして酒場の二階にとった自分の部屋に

戻ってすぐに着替えもせずにベッドの上に倒れ込むと、数秒後には此処でも寝息が聞こえ始めた



明日は何を謳おうか




世界を巡る彼の旅は終わらない




fin

黒いインクが紙面を踊る

字は大分見れるようになってきた


先日、最近、お顔がー見えない方が気になってご近所までーお伺い致しました

そっとテントの様子を伺えばーお風邪を召されているようで

急いでー帰宅すると食べやすい物を作ってーお見舞いにー出掛けて参りました

夜も遅かったのでー音は立てずに

貴方の眠りを邪魔しないーように

お元気な姿、はやくー見せて下さいませ、ね


そうそう、農業をー始めて見たのです

まずはーアムアムを育てるのーです、よ

虫さんは現在4匹

ふふ、沢山居ればー元気になるとお伺いしたのでーお試し中なのでした

あ、でもー葉っぱを食べてしまいますからー少し困ってーしまいます

むむむ、バランスがー難しいです、ね



先日、さくらんぼを届けた方がー訪ねて来てくださいました

こちらはーもう大分元気になられたみたいで、ふふ、良かった

けれど、病み上がりーなのですし、余り無理はーされなければ良いのですけども

少し、心配ーなのです


昨日の御話ーですけれど、一文字遊びをー始めました

夢でお伺いしたのーです、名付け親に

人を表すー文字を一つ思い浮かべてー其れを謳う


リズの名前詩のーおまけにつけた感じのものーです、ね


シャオさん、緋炎さん、氷蒼さん


お三方のーイメージをお借りいたしました

お気にー召して頂ければーいいな



あ、今日はーですね

ルドラムまでーお出かけしてきたのーです

ふふ、色々な方とー出会えました

暑さが苦手なー炎の精霊さん

闇エルフーだそうですのにエルフと言い張るらしい闇エルフさん

鳩と猫のーキメラさん

大きなー親御さんをお持ちの方。4階建てのー建物くらい大きいのーですって

上半身がー裸の方

クールでオトナなー鴉さん

可愛らしいワーキャットさん

緑の髪が印象的なー月光の方


ふふ、そうそう。お久しぶりにー鉄のお嬢さんともーお会いしたのでした

覚えて下さってーいて、凄くー嬉しかったのです

逆に、鴉さんのーお名前を渡し忘れてーいたみたいで、大変失礼をーしてしまったのでした(がくし

うぅ、気をつけーませんと


夜のお散歩にーお誘い頂きました

嬉しいお誘いー有難う

魔獣さんとー3体でゆっくりー歩きながら御話致しましょうかーね


肖像画までー頂いてしまって

大事に大事にー致します

有難う


お誘い、とってもー嬉しかったのです、よ


それから、私のつたない詩をー喜んで下さって、懐炉はーとても幸せです


夜風に吹かれてー何処へお散歩致しましょうか






此処でインクは途切れている

今日は此処までのようだ

紙面の上をペンが走る


不覚にー気付いてしまいました

と言うよりも、教えてー頂いたのです


名前詩のー事なのですけれど、義理の娘のリズの詩をー書いて先日お届けにあがった時の事


リズニモでなくリズモニ


私とーした事が気付いてー居りませんでした

うぅ、娘のー名を間違えるとは親としてーとても恥かしく

私、久しぶりにーがっくしと膝をついてしまいました


リズ、ごめんなーさいね

ちなみに名前詩ーなのですが

直ぐ、書き直してーお届けしました

もう、ぜーったい間違えないのーです、よ



そうそう、ニーヴェルドさんはー女性なのでした

先日テントにお伺いした時に櫛をお持ちにーなっていたのですけれど、首飾りと一緒にとてもー彼女に似合っていました

うん、人型の種の女性がー着飾るのは綺麗でーよいですね

着飾るとーいえば、麗凰さんとー先日御話したのですけれど、とてもー綺麗な服を着ておられました

ゴスドレスとー言うのですって

ふふ、黒いレースの付いた一色で統一されたー服

彼女の髪と目とー肌が映えてとてもーお綺麗なのでした

黒もーお似合いになるのですね


そうそう、少し前の夜にートゥーレさんが御話にー着て下さいました

夜遅くにー目が覚めてしまったそうで、ふふ、柿でよければー何時でもー御話相手になりますから

あ、名前詩ーですけれど彼女の誕生日にはー間に合いませんでした

うーん、お返事頂く前にー書上げてお届けーするべきだったでしょうか、ね

今度、お会いする時にはーおめでとうの言葉をつれてーお伺い致しましょう

別の名前詩を持って



此処で文字は途切れている

どうやら今日は此処までのようだ

名付けの親

右手に赤き瞳を埋め込んだ半人半魔


彼は言うのです

相容れないと


私は言うのです

理解しあえると


彼は言います

空いた穴は埋められないと


私は言います

それでも傍に在りたいと


彼は寂しく微笑みます

何時か亡くしてしまうと


私は無言で見つめます

枝で根で、包み離さないと


彼は…哀れみを浮かべます

心を縛れはしないと


私は…


私は……


それに答えを返せませんでした





名をくれた人は失った人

何度も亡くした事のある人

そして、今も無くし続けている人


その言葉に、私は何も言えませんでした

私も、失いかけているだろうから



答えを求めて叫んだ言葉は、再び私に返って来ました

何の答えも見出せないまま