「かき揚げ丼」



出演:海老(ギター)、三つ葉(ベース)、たまねぎ(ピアノ)、人参(ドラム)、衣(その他)、試食人(会場)





かき揚げ丼って好きですか?

僕は好きです。

特にこだわり抜いたかき揚げは、

海老や季節野菜の風味や食感、一つ一つ食材の食感も感じられて、本当に美味しいです。

きっとこだわって集めた食材で、それぞれの旨みを殺さないように作ったかき揚げなんでしょう。

ではコレ全部ミキサーで潰して、団子にして出されたらどうでしょうか?

食感も感じられず、風味もよく分かんないですよね。ちょっと食べたくないです。笑

これが地下ライブハウスのアイドルライブなどで使われる事の多い、一般的な2ミックスといわれるオケです。(決して2ミックスが悪いわけじゃないし、勿論メリットもあります🙋‍♂️)


かき揚げを客席まで送り届けるには、1本のケーブルに通して運ばなければいけません。

1本のケーブルに通して届けるには、かき揚げを潰して塊にする必要があるんですね。

でもできれば、団子にせずに客席に送り届けたいですよね?!そりゃあそうです。

こだわった食材なんだもの。

人間だもの。

活きたまま届けたい。

海老(ギター)の風味を、

玉ねぎ(ベース)の甘さを、

全てを新鮮な状態でそのまま届けたいです。


その為には食材を団子にしなくても済むように、食材毎にケーブルを用意する必要があります。


そこで、

「へっへー、ケーブル10本も用意したったぜ!!!」


これが普段、うちがやってる

ステム出しというものですね。

これで海老の風味も玉ねぎの食感も、そのまま皆様に届けられるんです。

でもこれをするには、楽曲を理解してくれててスケジュールに柔軟に対応してくれて、専門の知識を持ってるエンジニアの派遣、

機材を揃える為の費用、そしてなによりPAさんの顔色を伺いながら()、沢山の準備や時間を要します。

どんな海老を使って、どの大きさの海老をかき揚げに使うのがいいのか、

海老が大きすぎたら口にいれた時、ほぼ海老フライですから。

玉ねぎはどれくらいの辛みがあるものを、

どれくらいの量がかき揚げに合ってるのか、

玉ねぎを入れすぎたら、もうオニオンリングですから。

そして、毎回違う試食人(会場)味覚や好みもバラバラです。しっかり玉ねぎをいれたつもりでも、

「玉ねぎの味しないじゃねーか」なんて顔する時もあります。

違う試食人(会場)に同じかき揚げを出したら、

「玉ねぎ多すぎ、これじゃオニオンリングっすよ」なんて言われたりもします。

だからリハーサルの時間に、試食人(会場)に何回も食べてもらいながら、その好みに合わせていきます。

周波数や音質、音域、音量、ひとつひとつ調合しながら、一つのかき揚げを作っていくんです。

これがミックスという作業です。

会場によって音の鳴り方は全然違います。

その会場で聴いたとき、最高のブレンドになるようにマニピュレーターは機材を持ち込んで、その場で聴きながらブレンドしていきます。

こう聞くと結構大変な作業ですよね。

「すげーこだわっちゃってカッコいいじゃん!」って雰囲気さえ出てます。

でもそんな簡単じゃなかったんです。笑

時間に制限がある箱を貸し切って、ライブを組んでくれてる主催者さんから更にリハーサル時間を奪う必要がでてきます。

アイドルイベントは沢山の出演者が出る事も多く、転換時間もない中、10本のケーブルを挿して、専用のPCを立ち上げて、準備するのにPAさんにも待って貰わなきゃいけません。

そもそもイベント自体に、手間暇のかかってしまう美味しくてこだわりのあるかき揚げは求められていないですし、高度な技術が求められますので、当たり前ですが

嫌な顔される事も多いです。笑

そんな中、

10chのステム出しでお願いしゃす!」は中々ハードル高いですから、

こっちにもスピーディーな対応を求められるし、主催者さん、PAさんとのコミュニケーションも大切です。


でもそのせいで主催者さんに迷惑かけたり、チャンスを逃すのは違うので、時には

2ミックス全然オッケーっす!丁度2ミックスの気分だったんすよ、まいったなぁ〜!」

の顔も持ち合わせております。笑




僕は音楽が好きで、音楽に何度も救われてきました。

音楽と出会って、自分を肯定してあげられるようになったし、コンプレックスさえも愛せるようになりました。

音楽があったおかげで、今は天国にいる親にもいっぱい親孝行できました。

今の居場所も今の自分も全て、音楽が繋いでくれたものです。

だから音楽に携わる限りは嘘つきたくないし、その音楽に失礼なことはしたくないです。

音楽ってこんなに素晴らしいんだよってことみんなにもっと伝えていきたいし、

自分が音楽に救われてるように、プロデュースしてるメンバーやそのリスナーにも沢山救われて欲しいなって、関わってくれてる人みんなにそう思います。


そして幸せなことに今日も音楽に関わらせていただいてます。

みんなが楽しんでるのを後ろで観てるともう幸せでとろけそうです。

現実的に難しくてできないってイベントも沢山あります。

でもだからってステム出しできない=良くないイベントだなんてことは勿論ない。


難しかったんだな〜くらいに思っといてください。



アイドルイベントに来られるお客さんって、思ってるより耳が肥えてきてるんだなって感じます。

最近はお客様から声かけてくれて、

「音いいっすね?!」

的なこと言ってもらえることも増えてきて。


「だーれも分かんないんだろうな」なんて内心思ってたけど、結構みんな気づいてくれるんです。

なんかそれもすげー嬉しいです。

たかが音の出し方だけど、

裏には沢山の努力があったりするし、

それを全部分かってくれたような気持ちになって、うるっときます(音を楽しむことだけがアイドルじゃないと思うので、勿論分からなくても大歓迎です^^)


誤魔化しきれない時代です。

プロデュースしてるグループの楽曲は89割くらいかな?

自分が書かせて貰ってるんですけど、当たり前にどれも愛してやまない楽曲です。

その楽曲を、自分が愛してやまないグループのメンバーが大切に大切に歌ってくれるんです。

そしてそれを皆さんは、

大切な休みを使って、大切な時間を使って、大切なお金を払って聴きに来てくれるんですから、

そんなのできるだけいいモノ届けたいに決まってるじゃないですか、

これからもうちのグループを、うちの楽曲を楽しみに観に聴きに来てくれる人がいる限り、周りに迷惑をかけない可能な範囲で()、拘り続けていくつもりですので、皆さん楽しみにしててくださいね^^



以上、マニピュレーターのお仕事について

でした。


よろしくどーぞ。