「なんかもってきて、たたいたろかー、あほー!」母の日常、その(100)
2006/1/30(月) 午後 0:33
某月某日 母の世界から、私を見て「お袋ちゃんは僕を本当に、信頼してくれてるんやろな~」とつくづく感じるのだ。夕食後。
「さあ、薬飲もうか~」
「うん!」
「は~い、あ~んしてな、これだけやから、飲んどこな~」
「むぅ~ん」と、母が口を噤んだ。
「飲まなあかんがな~、これな、咳止めやで~、お袋ちゃん、咳したら、苦しいやろ~?」
「くるしないー!、せきなんか、せーへんわー!」
「ほんだら、これ飲もう、これは、風邪の薬やから、小さいやろ~、こんなんやで~」
「あ~ん」母が、口を開けた。
「飲めるやんか~、はい、もう一つなっ」
「どうやって、のむのん?あ~ん」
「このお湯で飲みや~、ゴックンしてなっ」
「べェ~や」と、母が舌を出した。白い錠剤の薬が二つ溶けかかって、母の舌の上に乗っているのが見えた。
「何してるん?飲まな~、あかんやん、ゴックンせな~」
「にがい!、ぷぅふーっ」と、母が薬を吐き出した。
「わーっ、何すんねんな~、もう、飲まなあかんやんか~、こないしたろ~かー!」と、私は母の両足の裏をくすぐってやった。
「あほー、なにすんねん」すかさず、母が私の頭を叩き始めた。(このパンチが素早いのである。何時も交わし損ねる)。
「痛いっ、痛いー!、薬な~、吐くからや~、ちゃやんと、飲まなあかん、ゆ~てるだけやんか~」
「いらん!、なんかもってきて、たたいたろかー、あほー!」と、母が口を尖らせた。少しやりすぎた。いま薬を飲ませるのは、まずい。「ま~寝る前に飲ませよか~」と思い。
「分かった、わかった、お茶でも、飲むか~?」(お袋ちゃん、白旗挙げるわ)。どうも、薬を飲ませるタイミングが、だんだん難しくなってきた気がする。(前はこれでうまいこといったんやけどな~)と私は、心の中で呟いた。