補論2-7 台湾地位未定論は国家成立の4要件を満たさない根拠となるか | 中国について調べたことを書いています

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2.香港・六七暴動
3.農業生産責任制と一人っ子政策
4.浦東新区から雄安新区へ
5.尖閣問題の解決策を探る
6,台湾は国家か

⑦台湾地位未定論は国家成立の4要件を満たさない根拠となるか。

最後に、台湾地位未定論は国家成立要件を満たさない根拠となるかどうかを検討する。

結論を先に言えば、ならないというのが本稿の立場である。

この両者の因果関係は薄いと考える。

 

なぜなら、台湾の地位の問題は、法的な問題という意味では主にカイロ宣言の有効性の問題であった。また、これは領土問題という側面も強くある。つまりこれは合意文書の有効性の解釈の問題である。また、領土問題という意味では双方の意見が異なっているというだけの問題である。一方、国家が成立するかどうかということは、比較的客観的な判断基準によるものである。4要件は実効性を中心に国家が成立するかどうかを判断しようという問題だった。これはいわば実効性の程度の問題である。したがって、この2つの問題は、まったく別の種類の問題であると考えてよい。

 

地位が未定であることと、国家が成立することとの間に直接の因果関係はなく、それぞれ別々に解釈されるべきだというのが本稿の考えである。いずれかの結論が他の結果に影響を与えることはない。

 

そうだとすれば、台湾の地位の問題と国家成立の問題は、立場としては以下の4つの立場が考えられる。

 

国家成立

国家未成立

地位既定

   

地位未定

では、この4つの立場に該当する国や政府は実際には存在するだろうか。以下、これを考えてみることにする

 

①台湾の地位は既定で、国家として成立

これは中華民国政府(国民党政権、民進党政権)、ツバルやホンジュラスなどの台湾承認国、19451970年代の主要国の立場である。

 

②台湾の地位は既定だが、国家としては不成立

これは中国政府の立場である。ただし、台湾の地位は中国の一部であるとする。

 

③台湾の地位は未定だが、国家としては成立

これは1945年から1979年のアメリカの立場であり、台湾独立派もこのような立場だと言える。

 

④台湾の地位は未定で、国家として不成立

これは1979年以降のアメリカの立場である。

 

このように、①から④まで、すべて該当する立場が存在する。同じ立場であっても、その主張の内容は違っていたりするが、それは様々な立場が考えられるということであり、多様性を意味する。つまり、台湾の国際法上の地位が未定であることと国家の4要件による成立は、多様性を許してしまうほど様々な関係がありうるということになる。言葉を換えれば、地位が未定であることと、国家として成立することは同時に存在することも可能である。

もし台湾の地位が未定であったとしても、それを理由に台湾の国家成立要件を否定することはできない。