海童のブログ

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チャラチャラの実を食べた霊能者です

Amebaでブログを始めよう!

 

寒くはなかったと思う。

長袖だったから春先か夏を過ぎた頃か。

24歳になった僕は、就職活動を始めた。

 

自分で言うのもなんだが勉強なんてまったくやってこなかった。

今、皆が思う勉強してこなかった奴を想像してもらって×3倍くらい勉強できない奴を想像してほしい。

数学、いや算数レベルで今、分数を頭に浮かべてみたが吐き気がする。

英語なら、そう言えば教科書にナンシーという女の子が登場してたなくらいのレベルである。

社会なら、いやもうやめとこう…。

 

とにかく勉強は嫌いだ。

 

それでも、良い給料をもらえるなら多少きつい仕事でもやるつもりだった。

何でもいい、とにかく働かないと。そう思いながら求人雑誌を開き一番最初に目に入ってきた会社。

不動産売買の営業である。

 

「不動産かぁ…。考えたこともなかったな。」

そうは思ったが、躊躇することもなく携帯電話をひらき電話をする。

『トゥルルルル トゥルル ガチャ』

ツーコールもならず受付の方が電話に出る。

「はい。お電話ありがとうございます。○○でございます。」

「あっすみません求人を見てお電話したのですが…。」

 

それから事務の方とやりとりをして面接は一週間後に決まった。

 

一週間後

久しぶりのネクタイとスーツに革靴。

息苦しい…。

革靴なんて安物も安物。見たら分かる安いやつ!なので足が痛い!

「はぁ、金がないと痛みをともなうねぇ…。」

ぶつぶつ文句を言いながら最寄りのバス停まで急ぎ足で向かった。

 

拘置所を出てからはあまり遊びに行くこともなかったので

久しぶりの街中に少し胸が高ぶっていた。

 

バスを降り住所と求人雑誌の地図を見ながら探す。

今思えばこの当時に携帯の端末に地図アプリなんてなかったので、お店や目的地を

探すときは上を向いて歩くことが当たり前で「歩きスマホで衝突事故」なんて考えられない。

良い時代になったのか悪くなったのかは結局、んーー、決められるものでもないな。

 

「このビルかぁ」

エレベーターに乗り緊張と期待を思い会社の扉を開けた。

受付には綺麗な花が飾ってあり、清潔感のあるオフィスだった。

「ピンポーン」

受付のベルを鳴らす。

事務の女性が来て「面接の方ですね。こちらへどうぞ」と応接に案内された。

 

「わっ豪華!」

大き目の革張りのソファーにガラスのテーブル。

あと訳の分からない絵。俺なら絶対買わない絵。

 

座って待っているとほどなくして応接のドアが開いた。

やってきたのは顔の怖い男性。身長も高くスタイルも良いが

いかんせん顔が怖い。

僕はすぐに立ち上がり挨拶をした。

 

「いいよ座って」

「あっはい。」

「どうも社長の宮川です。」

あっ社長なんだこの人…。だから顔が怖いんだ…。なんて思っていると。

パッと僕の顔を見て「何か?」

「いや何もないです!すごい部屋だなと思って。」

顔が怖いサイキックかよ!

 

「普段はね面接なんてしないんだけど、みんな忙しくてね。」

「あっそうなんですね。」

「履歴書見せて。」

カバンから履歴書を取り出し渡すと、履歴書、僕の顔、履歴書、僕の顔

〈いや、その眼が怖いんすけど…。〉

何度か顔の上下運動を繰り返したあとに

「うちはね土日は休み基本給と歩合でやってます。」と条件の話をし始めた。

「どうする?来月の頭から来てみる?」

「え?いや、いいんですか?とういうか何も聞かれてないんですけど…。」

「まぁ、それは追々ね。まずは自分の気持ちでしょ?」

〈いやそりゃそうだけど…話が早過ぎる…。なんか妖しくもある…。〉

「何か質問は?」

この社長は僕の心を見透かすように喋ってくる。

「なんか妖しく思ってるでしょ?」

〈出たっ!サイキック社長っ〉

「いや、そんなことないです!けど…本当にいいんですか?」

社長の間が少し空き

「とにかくやってみて決めな。やってみないと何も変わらないから。」

「あっはい!よろしくお願いします。」

 

豪快は豪快だが、

なんというか押し切られたわけでもない。圧があったというわけでもない。

この人の不思議な空間に流されてみたかったというのが本音だったと思う。

 

今後、僕の人生を左右する内の一人であるということは言うまでもない。