「怖いお話をして欲しいんです」
いきなりかかってきた電話から流れて来たのは、陰気な女性の声でした。
「あの、どちらさまでしょうか?」
「あなた、怪談をする方でしょう?怖いお話を聞かせてください」
時々、うちを訪ねて来てこういうことを言う人がいる。
だが、携帯にかかってくることは珍しい。
番号を知っているということは、業界の誰かから私の名刺を手に入れたのだろうか?
普段なら無視して電話を切るところだが、なんとなく興味を感じて友人が体験したと言うとびきり怖い実話怪談を話してやった。
「ありがとうございます」
女はそれだけ言うと、あっけなく電話を切った。
なんとなく気になったので、翌朝、着信番号にこちらから電話をかけてみた。
「この番号は使われておりません」というアナウンスでも流れれば“怪談”として発表してやろうという下心もあったのだ。
意に反して発信音が鳴る。
「はい、もしもし。どちらさまでしょうか?」
年配の男性の声が聴こえた。
「あの、私、昨夜、こちらの番号からかかってきた女性に頼まれてお話をお聞かせした者ですが」
「ああ、あなたですか。その節はありがとうございました。おかげで、娘はおだやかな気持ちで旅立てたようです」
「旅立てた?」
「はい、医者からも見離されておりましてね、昨夜が峠だったのですが『怖い、怖い』と言っておりました。そのうち急にあなたの怖い話を聴きたいと言い出したのです。電話を切った後、『今のお話に比べたら、自分が死ぬことなど少しも怖くなくなった』と安心したように眠り、そのまま亡くなりました。安らかな死に顔でした
いきなりかかってきた電話から流れて来たのは、陰気な女性の声でした。
「あの、どちらさまでしょうか?」
「あなた、怪談をする方でしょう?怖いお話を聞かせてください」
時々、うちを訪ねて来てこういうことを言う人がいる。
だが、携帯にかかってくることは珍しい。
番号を知っているということは、業界の誰かから私の名刺を手に入れたのだろうか?
普段なら無視して電話を切るところだが、なんとなく興味を感じて友人が体験したと言うとびきり怖い実話怪談を話してやった。
「ありがとうございます」
女はそれだけ言うと、あっけなく電話を切った。
なんとなく気になったので、翌朝、着信番号にこちらから電話をかけてみた。
「この番号は使われておりません」というアナウンスでも流れれば“怪談”として発表してやろうという下心もあったのだ。
意に反して発信音が鳴る。
「はい、もしもし。どちらさまでしょうか?」
年配の男性の声が聴こえた。
「あの、私、昨夜、こちらの番号からかかってきた女性に頼まれてお話をお聞かせした者ですが」
「ああ、あなたですか。その節はありがとうございました。おかげで、娘はおだやかな気持ちで旅立てたようです」
「旅立てた?」
「はい、医者からも見離されておりましてね、昨夜が峠だったのですが『怖い、怖い』と言っておりました。そのうち急にあなたの怖い話を聴きたいと言い出したのです。電話を切った後、『今のお話に比べたら、自分が死ぬことなど少しも怖くなくなった』と安心したように眠り、そのまま亡くなりました。安らかな死に顔でした
