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K中とウチでは、部員数も戦力も全く違う。

多分、10回やって9回は負ける。
残りの1回もかろうじて引き分け。

それくらい差があるから、
試合会場に向かう車の中で
私は次男に言った。

真顔今日はまあ……
悔いのないようにプレーしてこいや

と、敗戦→引退 前提の声かけ(笑)

ただ、負けるにしても1点は取りたい。
多分マークは厳しくてなかなかシュートまではいけないかもだから、もしフリーキックになったらどんなに距離があっても全部狙え、とだけ言っておいた。


試合前、しょうまのお父さんに声をかけられた。
多分私よりかなり若いと思われる。
今日は対戦相手になるので、挨拶程度。

「なんか………複雑ですよね😅」

「おてやわらかにお願いします」

会話がもう、勝ち負け決まってる感じで(笑)

当然あちらは勝利を確信しているし
こちらはなんとか大差がつかないように祈ってるチームなわけで。


ところが、

勝ってしまった。

なぜかはわからない。
奇跡としか言いようがない。

K中イレブンの気迫は凄まじく
予想通り次男に3人もマークがついている。

笑い泣きおてやわらかにって言ってるでしょーに

何本もピンチがあったが
ことごとくセーフ。

唯一のチャンス、フリーキックこぼれ球ちょんゴールで1点を取り、
なぜかなぜか勝ってしまった。

まさにジャイアントキリング。

ウチは11人中3年が5人、2年が5人、この前入部したばかりの1年生が1人。
それくらい人数ギリギリ。

対してあちらは全員が3年生で、
それも何人もが市の代表クラス。



いや、勝てるわけないっしょ。


でも勝ってしまった。


なぜに?



試合終了のホイッスルと同時に
その場で泣き崩れるK中の子達を見て、
私は胸が痛くなった。

負けてこんなに泣きじゃくるのを今まで見たことがない。

それくらい、この大会に賭けていたということなんだろう。こんなに泣くほど、たくさん練習してきたんだろう。ウチよりよっぽど気持ちがこもっていたのだろう。

特にしょうまは小学生の頃からウチの次男をライバルとしてものすごく上達した子。
しょうまはキャプテンとしてこの試合もめちゃめちゃ気合入ってたし、周りに声をかけまくってそれはそれは素晴らしいプレーだった。


試合後にK中の子達が
私達の前に整列してくれた。

なかなか挨拶ができない。
悔しさがものすごく伝わる。

私は思わず
「しょうま!頑張ったぞ!」
と声を出してしまった。




試合が終わったK中の選手達は
控えタープの下でまだ泣き崩れている。

数十分経っても、
呆然としているだけ。
それを遠巻きに見守るK中の保護者達。
お母さん方も、泣いている。

私は声をかけるつもりはなかったが、
しょうまのお父さんが私を見つけて
こちらへ来た。

「………お疲れ様でした」

「………お疲れ様です」

「いやもう……なんて言っていいか……」

勝ってしまった私は、
何をどう言っていいかわからない。
何を言っても、よくない気がする。

しんみりした沈黙のあと、

しょうまのお父さんが私に言う。

「………どうして負けたんでしょうね」

「ん〜………わからないですよね……」

「kaiさん教えてください。ウチの敗因はなんだったんでしょうか」

「……………」

技術的にも気迫でも完全にK中の方が上。
負ける要素は何もない。

「何かがあると思うんです、負けるには何か」

「……………」

多分、子供達も親も、負けを受け入れられない。
受け入れるには、何か理由がほしいんだな。

「言いにくいことでも何でもいいです、はっきり言ってください、何かあったら教えてください」

仕方なく私は答えた。

負ける要素は何もない、
とにかくみんな声を出して走り続けた。
みんな必死に頑張っていた、
ただ………


「『10番を潰せ』、ですかねえ……」

試合中何度も聞いた『10番を潰せ』『10番を削れ』の声。
サッカーは戦争ではない。
K中全体が次男を意識するあまり潰せ、削れ、という怒鳴りが出てしまうのは、スポーツマンシップに反する。いや、仮に子供達が気合が入り過ぎてそういう状態になってしまったら、顧問が諌めるべきだし、保護者が止めるべき。
勝ちた過ぎて、何か見失っていたのかもしれませんね。

しょうまのお父さんはしばらく「ああ……」と絶句した。

「kaiさんだったら、もし次男くんが相手選手を試合中に『潰せ』と言っていたら……」

「ぶっ飛ばしますね(笑)。それと……」

しょうまは素晴らしいキャプテンシーを発揮していた。
ただ、ウチが先制点を取ったのは後半10分。
まだ残り20分あった。

「焦るな!」「焦るなよ!」を何度も何度も大声で発することで、逆にチームが動揺することもある。
自分が1番焦ってしまいそれが他の選手に伝染したのではないか。
もっとどっしり落ち着いて丁寧にプレーすれば、残り時間を考えてもK中の力なら逆転できたはず。
全ては、勝ちたいという気持ちが強すぎたために周りが少し見えなくなっていた「可能性」はある。


真顔これは「強いて言えば」、の話です。
気合が入るのは悪いことではないし、
K中さんの士気はずっと高かった。
集中力も途切れたようには見えなかった。
だからあくまでも「私が気になった点」ということでご理解ください。


「いや……なるほどです。
勉強になります……」


しょうまのお父さんもかなり動揺というか
敗戦はショックだったのだろう。

こういう時に負けた方が勝った方に言う
「おめでとうございます」は
最後までなかった。





その後


我がY中は準々決勝の試合で
あっけなく大敗した。

次男は
時に5人の相手に囲まれていた。

親の私が見ているのが辛くなるくらい
徹底的にマークされ、潰された。

試合後、
観戦していた大会本部のお偉いさん方が
立ち話しているのが聞こえた。

「Y中の10番、あれはかわいそうだよ」

そうかもしれないなー
でも、勝つために相手も必死だからね、
仕方ないよ、うん。


次男のY中学校でのサッカーは終わった。

入部と同時に試合に出してもらい、
学年が上がるごとにプレッシャーを受けながら
ケガもたくさんしたけど
我が息子ながらよく頑張ったと思う。


お疲れ様✋


この視点シリーズは
次男のライバル・しょうま本人とそのお父さんとの間で、小学生時代から総体までに交わした会話の数々を元に書いたものです。
お読みいただきありがとうございました。