インフルエンザ、すでに去年のピークに迫る勢いの流行です。

↓の植物のように、盛りを過ぎてくれれば良いのですが…

 

 

 

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前回までの流れ

 

インフルエンザ予防接種のお話

ワクチンにより抗体が出来て、病気から守られる。集団を守るのが大事。

破傷風には毒に対するワクチンがある。ボツリヌス菌も破傷風菌と同属。

Q. ボトックスも繰り返すと予防接種みたいに抗体ができる??

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回答

A. 抗体が出来ることはあります。

 

実際に、多くの美容クリニックでは、ボトックスの説明を行う際に、

打ち続けていると効かなくなる

 

という説明をしております。

 

美容目的のボトックスビスタの添付文書から抜粋

こちらは保険診療のボトックスの添付文書から抜粋

抗体が産生されることにより、耐性が生じる可能性、記載がございます。

そして抗体が疑わしいときには検査をするように記載がございます。

 

Q. 抗体検査とは??

A. 原則は、マウス中和試験。

患者さんの血清(血液)とボトックスを混ぜて、マウスに注射。

マウスが死んだらボトックスは中和されていない→抗体は出来ていなかったとみなす。

マウスが死ななければボトックスは効かなくなっている→抗体が出来て中和されたとみなす。

 

手間

時間

動物実験への忌避

 

など、相当ハードルが高いのがマウス中和試験。

代替の検査方法は提唱されておりますが、それでも

マウスの生死ではなく

 

細胞への反応

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0014579307009660

 

A neuronal cell-based botulinum neurotoxin assay for highly sensitive and specific detection of neutralizing serum antibodies

Sabine Pellett, et al

 

筋肉の反応

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0041010109004553

Quantification of potency of neutralizing antibodies to botulinum toxin using compound muscle action potential (CMAP)

Yasushi Torii, et al

 

などでの判定となりますので、『その場で分かる』にはほど遠い状況でございます。

実際、美容医療でボトックスなどを打っていらっしゃる方で、効き目が足りなくなったように感じた方、

ほとんどの場合は抗体検査はしていらっしゃらない & 医療機関側も抗体検査をお勧めはしないのではないでしょうか。

 

美容医療については統計のデータが乏しいのですが、

保険診療でボトックスを使用されている方がたくさんいらっしゃり、そちらのデータはございます。

 

脳卒中などの麻痺 (痙縮)には

 

最大600単位

 

最短12週間隔で

 

という、美容医療では中々お目にかからない量を投与することがございます。

では、気になる中和抗体の出現は…

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0149291807001154

Formation of neutralizing antibodies in patients receiving botulinum toxin type a for treatment of poststroke spasticity: A pooled-data analysis of three clinical trials

MD Stuart A. Yablon, et al

 

脳卒中後の麻痺での100-400単位の投与では、191人のうち1人が陽性、と、かなり低頻度だった、という結果に至りました。

 

抗体出現の頻度は、研究ごとに開きがございますが…

ボトックスが効きにくく感じた際は、中和抗体以外に原因があるかもしれません。

美容のお話を外れている期間が長いのも心苦しいので、美容クリニックでたまにお悩みのタネになる、

 

ボトックスを打っているとだんだん効かなくなるかどうか

効かなくなったら、その原因を調べられるか

効かなくなったらどうすればいいか

 

の3点について触れてみたく思います。

 

ボトックスは製品名で、主成分はボツリヌストキシンA型。クロストリジウム属のボツリヌス菌が作り出す毒素になります。

クロストリジウム属でございますが、ボツリヌス菌の他に破傷風菌も、その強力な毒素で有名です。

 

破傷風菌が作り出す毒素 (テタヌストキシン、テタノスパスミン)は筋肉を緊張させ、ボツリヌス菌が作り出すボツリヌストキシンは筋肉を麻痺させる…

 

同属の菌で、毒素の構造も似ている、

それなのに毒の効き方が逆??

 

になってしまう理由は、

破傷風菌の毒素が、体全体の『抑制』に作用する、中枢神経からのGABA、グリシンの放出を抑えるから、になります。

 

さて、ホルマリンで無毒化した破傷風菌の毒素を投与すると中和抗体が出来、破傷風を予防することが出来ます。

じゃあ、同属のボツリヌス菌の毒素を繰り返し投与したら、効かなくなる??

 

忍者が少量の毒を飲んで耐性をつけた言い伝え…

本当にそれが有効な毒は少ないのですが、正しく処理した破傷風の毒素は耐性をつけられる。

はてさて、ボトックスも同じように耐性がつくかどうか、繰り返すと効かなくなるかどうか!?

 

種を蒔いてから出るまでタイムラグがあるように、
インフルエンザ予防接種も効くまでにタイムラグがあります。
効き目については、個人が発症したかどうか、ではなく、
・十分な抗体が出来た人の割合
や、
・接種した集団としなかった集団を追いかけて比較した際に、発症した人や重症化した人を有意に減らせたと言えるか
で評価することになります。
 
フルミストよりもデータの揃っている注射のワクチンでは、インフルエンザの発症を50~60%減らす、といった報告があります。
33%だけ発症が少ないような報告もございますが、これは予防接種を打つ集団と打たない集団が異なることも原因として挙げられます。
 
打つ人の傾向:
女性、年齢が高い人、前年度・前々年度にも接種していた人、前々年度インフルエンザにかかった人、定 期的に病院にかかっている人、肺炎で入院した事のある人、健康状態のよくない人、タバコを吸わない人、 人込みへの外出をする人、デイケアを利用している人、手洗いやうがいの習慣のある人
 
では、半分の人は打っても感染してしまうとして、それなら打つ甲斐が少ないかといえば…
・重症化予防の効果はより高く認められている。
・インフルエンザ感染者一人が感染させる人数(基本再生産数)がおよそ2のため、半分の人が免疫されるだけで感染者が増えていかず流行が成立しない
 
安全な集団ができれば、ワクチン接種が出来ない人も守られます…集団で守ればみんな幸せ。
 
10月26日の都内の状況でございます。注意報基準超えをいたしました。
そして11月2日の定点当たり報告数、倍以上の伸びでございます。
ハイペースの増加、引き続き注意が必要そうでございます。