2010年に書かれた本で、この作家の本は2,3冊読んだことがあり直木賞その他賞を獲得しており図書館で目に留まったので読んでみた。
この本はあの「放浪記」の林芙美子のまだ世に出ていない自伝記みたいな
ちょっと変わったスタイルになっている。
この中で二つの発見があった。一つは第二次世界大戦の終わりに近いころ
約20名くらいの(女性作家を含め)文士が新聞社の嘱託として軍の統制のもと(或いは徴用といってもよい)戦地に派遣され現地の状況を報告するという戦意高揚の一翼を担わされていたことである。文章はいちいち軍にチェックされ都合の悪いのは焼却され言論の自由はなく林芙美子もそれを経験したということ。その作家たちは実名で出てくるので事実であろう。
二つ目は林芙美子がこんなに奔放な作家であったかということである、瀬戸内寂聴の若い時に勝るとも劣らない行状である。
夫がいながら新聞社の社員と激しい恋に落ち戦地でも逢瀬を重ね終には身籠り夫にも内緒で出産し私生児として育てていく激しさである。
林芙美子の小説は読んだことがなく一冊ぐらいは読もうかとも思ったが今更という気持ちもある。このように今まで持ってる観念を変えさせてくれる一面を持っているのが読書の面白さかもしれない。
KAZUSAGA