2004年の作品で少々古いが、映画も見てなかったので借りてきた。
「永遠の0」が零戦の物語ならこちらは人間魚雷「回天」に乗ることになる大学野球部のピッチャーのものがたりである。
どちらの小説にも言えることだが当時の軍部の人を戦地に送り何人もの犠牲者を作った罪よりも必ず死ぬと分かって乗り込む兵士の心情をも踏みにじった罪の重さである。
出口のない海とは海に出ていくが帰りの海はない、つまり一方通行であるという意味で必ず死ぬことが義務付けされた任務である。
特に任務遂行の2,3日前に回天に乗ることは秘したまま帰省を許され実家に戻った時の描写が印象に残る。(横山秀夫は警察ものしか読んでいないがこういう描写もなかなかだと再認識)
最後は突撃の最終訓練で故障で回天が発射してしまい体当たりすることなく行方不明になり、後日見つかり亡骸とともに魔球を投げる練習をしていたボールが哀れであった。
それにしても訓練中兵士を罵倒し殴打を繰り返していた当時の上官が生き残っていたら戦後どういう感想を持っていたか聞いてみたい気がした。

KAZUSAGA