上橋菜穂子の“鹿の王”を読んだ。これは今年本屋大賞を受賞した作品で昨年秋に発売以来100万部売れたというから凄い。上下巻合わせて1000頁を超える大作であるが、今まで自分の読んだ本とはイメージが随分、異なる。
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読み始めた当初、作品の舞台は中世の東北アジア、モンゴル周辺の小部族の出来事を描いているのかな、と思ったりしたが、これは全く異世界のことを描いている。当初、慣れない名前の登場人物の多さと多様さに戸惑うが、登場人物の相関関係が分かってくると段々、面白くなってくる。作者はこの作品を書きながら、昨年、西アフリカで猛威をふるったエボラ出血熱と人間の闘いをイメージしたのではないかと思う。更に今、話題の腸内フローラ(善玉菌と悪玉菌の闘い)などもイメージされたのかな、とも思う。これからの世界はウイルス対人類の闘いと“鹿の王”は予言しているようだ。(現実に韓国ではMERSと闘っている)。
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作者は元々、児童文学作家として有名で、2014年には国際アンデルセン賞を受賞している。今回、“鹿の王”を書き上げるまでには大変、苦労されたのだろう。実際、著者のあとがきにあるが、ストーリー展開で何度も壁にぶち当たったとあるものの、それを乗り越え、優れた内容の本に仕上がっているのはまさに本作者の実力だろう。

気分はあらせぶマイナス