継続は力なり」はプロポライフ社長の野澤 泰之(のざわ・やすゆき)さんの座右の銘です。社会人になる前は夏に冬によく山に登っていた。地道にコツコツ山頂を目指す過程は経営にも相通じるものがあるという。「継続は力なりですね。ただ、これが一番難しい」としみじみ語る。
野澤泰之さんは、1980年神奈川県生まれ。東京の世田谷学園高中退。神奈川県内の不動産会社、マンションデベロッパーなどを経て独立。2006年にプロポライフを設立し、社長に就任した。2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災の経済危機を乗り越え、マンション分譲など一事業に偏らない不動産の多角経営で同社を急成長させる。
                                           野澤泰之さん
イメージ 1プロポライフ 野澤泰之社長 急成長生んだっかけ
 
少子化で縮小する不動産市場のなか、気を吐く新興企業がある。フローリングや壁紙(クロス)などに天然木材を施す斬新なリノベーション(改修)で知られるプロポライフだ。創業わずか7年で年商60億円に迫る同社のコンセプトは、徹底した消費者本位。業界にありがちな供給サイドの考え方を封印する姿勢が急成長の原動力となっている。 
 --天然の無垢(むく)材などをフローリングだけでなく壁やドア、キッチンに多用する発想が注目されています
 「もともと子供のころにアトピー(性皮膚炎)だったので、(内装に)化学的な材料ではない何かいいものはないかなぁと漠然と感じていたのが出発点で、5年ぐらい前に東京の池尻で、中古のマンションを仕入れて内装を新しくして売り出す、いわゆるリノベーション再販で試してみたところ、購入していただい方にすごく喜んでいただいて。それで自信を持つようになりました」
 --身近なところがきっかけなんですね
 「天然木材の質感や自然感は人を安心させたり、和ませたりするので、それを活用したら、きっといい空間ができるだろうと。だから、収益ありきで始めた事業というわけではないですね」
 --いまやそれで年商60億円に手が届くところまできています
 「牽引しているのは自然素材にこだわった弊社ブランド『クロニクルマンション』、フルリノベーションマンション住戸のことですが、この事業だけで伸びているわけではありません。仲介、マンション・一戸建ての新築分譲、リフォーム、賃貸管理などが合わさった結果です。実はここが弊社の持ち味でもあって、各事業を供給数で(他社と)見比べてみると、上位に入っているものはないくらい。ウチが新築の分譲だけをやるというような一事業だけに偏った企業になると経営的に危険が増すので、それぞれをまんべんなくというスタンスでいます」
 --独立は26歳。そのわけは
 「この多角的な事業展開に通じていくのですが、神奈川県のマンションデベロッパーに勤務していたとき、作り手側の利益を優先した物件、例えば、間取りも細かく割って部屋数を増やしてとか、使い勝手がさほどよくもない設計・施工のものを同じように作って売るとか、デベロッパーの都合で物件を作り、それを営業が売る繰り返しで、嫌気がさしたんですね。私としては、こんな風に部屋をレイアウトし、間取りをこうして、内装もこうすれば、住む側が気分がいい、住む側の望むことを追求すればもっと手応えがあるのにといつも思っていた。それをやりたい欲求が強くなったのが理由でした」
 --不動産市場は少子化で縮小が進み、今後一層拍車がかかっていきますが
 「確かにそうではあるんですが、中古物件のリフォームには需要はあり、先程の話ではないですが、一個一個の事業をみると供給数では(シェアが低いだけに)単純に伸びしろはあると思っています。後は、お客さまが望む、よりよい住環境をどれだけ安く提供するか。一戸建てでも注文建築に近づけて、価格は(手頃な)ビルダー並みというような。その一方で、いまのうちに海外進出を手掛けておこうとベトナムで不動産の仲介、内装業のライセンスを取得しました。香港、台湾でも住宅設備には潜在的な需要はあると踏んでいます。住む側に立った供給を貫けば、頼りにされ続けると思いますし、徹底して応えていくつもりです」
 【家族】 2歳年上の妻と娘の3人家族。
 【リラックス】 基本的に土日は休日。疲れを癒やすのは「娘の笑顔」。おむつを替えてお風呂に入れて。「ストレスを忘れられるひとときですね」
 【ゴルフ】 職業がら月に1回はラウンドする。
 「でも一向にうまくならずで、100を切るなんて全然」と頭をかく。
 【アルコール】 ハイボールを少々。「強くはないので量はそれほど」
 【目下の悩み】 平均睡眠時間は6時間。朝は6時半には起きている。
 「子供のおもりもあって運動不足で。体重が増えつつあるのでそろそろ走ったり、泳いだり。ジムに通おうかと」
 【近代ビジネス史】 最近、百田尚樹著の『海賊とよばれた男』(講談社)を読んだ。
 同書は、石油会社を率いる主人公が敗戦直後、借金以外のすべてを失うなか、石油を武器に世界と戦う歴史経済小説。
 「主人公が格好良すぎるんですけど、自分もあやかりたいな、と。この本以外でも幕末から戦後の近代史、ビジネス史に興味を持ってます」
 【尊敬する人物】 ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長。経営に対するひたむきさ、失敗してもめげない力強さにひかれる。
 「『一勝九敗』(新潮文庫)など柳井さんの本は全部読んでます。仕事以外に趣味があるのかと思うほど経営に向き合っている姿がいい。尊敬している一人です」
 【社名の由来】 プロポライフは「PROPOSAL FOR YOUR LIFE」の略。購入する側にとって住まいは大きな買い物。人生の重要なワンシーンに最良の提案ができる集団でありたいという願いを込めて付けた。

 会社メモ 新興不動産会社。本社・東京都中央区。2006年8月、横浜市鶴見区で創業。仲介業務でスタートし、現在、中古マンションのリノベーション販売、新築マンション・戸建ての分譲、賃貸管理、内装など幅広く展開する。なかでも天然の無垢材を使った物件の内装に定評があり、ファッション誌で特集が組まれるほどの人気。資本金約1億8000万円、2013年2月期の売上高56億7000万円。従業員100人(今年5月現在)。

MSN産経ニュース2014812日)
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