『真剣』『命かけろ』はサイボウズ社長の青野 慶久(あおの・よしひさ)さんの座右の銘です。「そういう思いがないと経営はできません」
青野慶久さんは、1971年、愛媛県生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工に入社。1997年、26歳でサイボウズを設立。取締役副社長に就任後、マーケティング担当としてWebグループウェア時代を開く。2005年からサイボウズ社長。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)。
                                  (青野慶久さん
イメージ 1女性がつくる新しい働き方 情報と感動も共有
グループウェアソフトの開発・販売を手掛けるサイボウズ。創業から上場までわずか3年、IT時代の寵児的な存在だ。出勤時間から服装までさまざまで、女性社員が全体の4割、青野慶久社長は共働きでイクメン中でもある。新しい発想、組織、行動力を持つ21世紀型企業として注目されている。 
 --グループウェアの先駆者と言われています。どのような商品を
 「簡単に言えば、グループ間で情報を共有するソフトで、これを使えばお互いのスケジュールや会議室の予約情報などを共有することができる。その結果、個人や組織の生産性が大きく向上することになります」
 --情報の共有化が1つのポイントですね
 「働く人の満足度の向上も大きい。社長方針などを出す場合、グループウェアで発表すると、情報がすぐに伝わり、わからない時はグループウェア上で質問できる。そのやり取りを第三者も見ることができます。社員満足度が高いことで有名な伊那食品、東海バネ、万協製薬さんなど10年以上のヘビーユーザーです。経営者に情報を共有して皆の意見を引き出そうという姿勢がありますね」
 --そこに着目して17年前に起業した
 「松下電工時代から、なぜ社内の情報共有化をしないのか、できないのか。もったいないな、という問題意識を持っていました。そんなときにインターネット技術が出てきて、これを使ったらいいソフトができるのでは、と。そう思ったとき会社を辞めていました」
 --創業丸3年で東証マザーズに上場しました
 「1997年8月の創業ですが、4カ月後には黒字になっていた。運が良かったといえるのかもしれませんが、苦労や努力は昔の経営者以上と自負しています。最初は中小企業向けからスタートし、最近は大企業向けの商品。それもグローバル戦略商品と位置づけ、『Kintone』というブランドを付けて力を注いでいます」
 --同じグループウェアでも中小企業向け商品とは相当異なるのでは
 「最近、盛んにクラウドと言われていますが、それを活用したもので、より多様な情報共有を実現できるソフトです。申し込んだらすぐに使え、システム構築の必要もありません。これからの情報社会を大きく変えていく可能性を秘めたツールともいえます」
 --女性社員が多く、働き方も多様化しています
 「現在、女性社員の比率は約40%。より多くの人が、より成長をして、より長く働ける環境を提供するポリシーで、制度の改善を進めた効果の1つです。例えば残業をしない勤務、×時から×時までと時間を限定した勤務、在宅勤務。最長6年間の育児・介護休暇制度といった具合にたくさんの勤務制度を設けています。自分で×時から×時までと勤務体制を宣言すれば、上司はそれ以上の勤務を強いてはいけないことになっています」
 --なぜそのような人事制度を作ったのですか
 「根本は日本の出生率にあります。一家庭が子供を産む数が年々減っていき、このままいけば日本は年寄りばかりの国になってしまうという危機感です。私は社会人になって約20年ですが、ずっと不景気ばかり。政権も何度か変わり、景気対策もいろいろ行われてきましたが、一向に景気は回復しない。それは出生率、人口減少に原因があり、それを解決しない限り、景気も良くならない。そんな危機感から始めたのが、いまの人事制度です。当社の女性社員はイキイキと自由に働いています。私も共働きで子育てを頑張っています」
 --感動課という組織にも驚きました
 「もともと開発部の人間なのですが、社内新聞の編集を担当させたら面白い新聞を作る。そこで人事部に感動課を設け、感動づくりを担当してもらっています。社内イベントの企画や新人の営業研修、顧客への取材等で走り回っていますが、社内では大人気です。どんな小さなものでもそこに感動が生まれれば、社内は明るくなります」
 【イクメン】 夫人と共働きで、子育て(男4歳と2歳)を分担。新聞に子育て日記を連載している。「育児は大変な作業で女性一人に任せては気の毒です」
 【通勤】 自宅から本社まで自転車、あるいは徒歩通勤している(15~20分)。「健康のためできるだけ歩くようにしています」
 【読書】 ビジネス書では『ビジョナリー・カンパニー』(日経BP社)のシリーズを愛読、なかでも「その2」にしびれたという。最近では漫画の『ワンピース』(集英社)。「経営者間で話題になるので何十年かぶり(の漫画)です」
 【テレビ番組】 ビジネス番組は必ず録画する。『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)、『ガイアの夜明け』(同)、『がっちりマンデー!!』(TBS系)、『NHKスペシャル』などをよく見るそうだ。
 【英語】 通勤時間を英語の勉強に。「戦う相手がIBM、マイクロソフト、グーグルといった強豪ですから」
 会社メモ グループウェアのソフト開発を主力事業とするIT企業。1997年8月、松山市で創業。同年10月、中小企業向けのグループウェア『サイボウズOffice』を発売した。2000年、「日経コンピュータ顧客満足度調査」グループウェア部門で1位となり、以後、9年連続1位。1998年大阪、2000年東京に本社を移転。00年、東証マザーズ上場。06年に東証1部に指定替えした。売上高51億9700万円、経常利益2億6400万円(13年12月期)。従業員478人(役員、派遣含む)。

MSN産経ニュース2014318日)
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