この詩に出会ったのが小学6年の時。オマセだった僕は、その時以来この詩を生涯の詩と決めた。そして、茨木のりこさんを生涯の師と決めた。そしてまた、今年も6月がやって来た。振り返ってごらんと、あたかも茨木さんが囁くが如く。

六月 茨木 のり子          

どこかに美しい村はないか
一日の仕事の終わりには一杯の黒ビール
鍬を立てかけ 籠をおき
男も女も大きなジョッキをかたむける

どこかに美しい街はないか
食べられる実をつけた街路樹が
どこまでも続き すみれいろした夕暮れは
若者のやさしいさざめきで満ち満ちる

どこかに美しい人と人の力はないか
同じ時代をともに生きる
したしさとおかしさとそうして怒りが
鋭い力となって たちあらわれる
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