⚪︎2024年7月20日(土) 二期会/プッチーニ「蝶々夫人」(Madama Butterfly)
於:東京文化会館大ホール 全3幕 日本語及び英語字幕付き原語(イタリア語)上演
「蝶々夫人」に関しては、いずれもアスミク・グリゴリアンがタイトル・ロールを演じて評判となったMETライブ・ビューイングとROHイン・シネマの映像が記憶に新しいところ
彼女の絶唱もあって、個人的には、プッチーニのオペラの中でのお気に入りが「トスカ」から「蝶々夫人」になりつつあります😅が、実はフルの実演舞台を生で見るのは今回が初めてそれまではピアノ伴奏による抜粋版や映像のみでの鑑賞でした💦
ということで、満を持してのナマ“蝶々夫人“、二期会と海外の劇場との共同制作(の再演)のようですが、キャストは全て日本人、演出はミュージカルで知られた宮本亜門、衣装は数年前に亡くなった高田賢三ということで、果たしてどんな「蝶々夫人」となっているのか、少なくともヘンテコな“日本“を見せられることはないだろうと思いつつ、行ってまいりました
⚪︎キャスト等:
指揮 ダン・エッティンガー(Dan Ettinger)
演出 宮本亜門
衣装 高田賢三
蝶々夫人(S) 大村博美
ピンカートン(T) 城宏憲
シャープレス(Br) 今井俊輔
スズキ(Ms) 花房英里子
ゴロー(T) 近藤圭
ヤマドリ(T) 杉浦隆太
ボンゾ(B) 金子宏
ケート(Ms) 杉山由紀
神官(Br) 大井哲也
子ども(黙役) 大塚稜久
青年(黙役) Chion
合唱 二期会合唱団
管弦楽 東京フィルハーモニー合唱団
⚪︎感想:
うーん、ひとことで言って演出が感心しませんでした💦
(以下ネタバレ注意)
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まず幕が上がると、病室らしきものが現れ、白衣の医師、着物姿の老女、洋装の中年女性がベッドに横たわる白髪の高齢の男性を見守っている模様。そのまま音楽なして黙劇が進行し、臨終の近い高齢男性が、病室に駆け込んできた息子と思しき青年に、今際の言葉?をかけ、さらに手紙のようなものを渡すと、それを読んだ青年は驚愕の表情を浮かべ、そこから音楽が始まり、以降はお馴染みのストーリーが展開して行きます。
実は青年は、ケートとともに引き取った蝶々さんとの間にできた息子が成長した姿で、ピンカートンが死ぬ間際に、何が起こったか、家族の秘密をその息子に告げるという、元々の台本にはないお話をくっつけたもの。
さらに、手紙を読んだ青年は、過去に起こったことを頭中で再現しているのか、それとも時空を超えて過去に飛んだのかわかりませんが、蝶々夫人のお輿入れから自死までの場面の全てに臨場し、目撃することになります。
ということでこの青年(黙役)は、最初から最後まで蝶々夫人以上に文字どおりの出ずっぱり💦それだけでも嫌でも注意が行ってしまうのですが、舞台をちょろちょろとあちこち走り回って、誰それのところへと駆け寄ったり、慨嘆したり憤ったりと忙しいので、見ている方としては気が散ってしょうがありませんし、バタバタと足音もするので音楽の邪魔にもなっていました
(幕間でも、他のお客さんからの「あれうざいわよね」という声が聞こえました💦頑張って演じている青年役の方には申し訳ありませんが)
気になったのはそれだけでなく、例えば、ピンカートンの人間性に少し共感を持たせようという趣旨かわかりませんが、彼が蝶々夫人の元を去った後、従軍の際負傷したという語り(テロップ)を入れて、再度日本に現れた際は松葉杖をつかせるという演出、さらには、蝶々夫人が自死した後、再び病室のシーンが現れ、ピンカートンが死の淵から蝶々さんの名前を呼んでいるかのようなシーン、加えて幕が降りる直前、婚礼衣装姿の蝶々夫人と軍服姿の若きピンカートンが仲良く腕を組んで去っていく後ろ姿が描かれるという、謎のハッピーエンドシーン😅で終幕となりました💦
これは何だったのでしょう、青年(息子)の錯乱だったのか、願望だったのか、はたまた神の救済だったのか....。
「蝶々夫人」は確かに救いのないお話ですが、救いのない話であること、そう感じさせるお話しであることに意味があると思うのですが…。
正直、宮本亜門の演出は、ミュージカルでいくつか見ていますが、どれも感心したことはありません
いつも言うことですが、傑作は(基本、本も音楽も良いはずなので)下手にいじる必要はないので、普通にやってほしいです
というか、いじって面白くなる(良くなる)ケースは個人的にはかなり稀なように思います。
舞台美術に関しては、ほぼ納得のいくもので、プロジェクトマッピングを使った背景なども美しく見応えのあるもの不満と言えば、蝶々さんの家はせいぜい3メートル四方の正方形のミニマムな作りでしたが、病室など必要ないので、そちらにもう少しお金を使って、大きめのものにして欲しかったかなという程度でした。
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キャストに関しては、皆さん頑張っていたと思います。
タイトル・ロールの大村博美さんに関しては、フォルテ部分では個人的にはもう少し突き抜けた強さが欲しかったですが、さすが世界各地で蝶々夫人を演じてきただけに安定の出来でしたし、何より演技が素晴らしかったです個人的には「ある晴れた日に」より、「坊やの母さんは」と「さよなら坊や」の方が好みなのですが、今日もその2箇所はグッときました
対するピンカートンの城宏憲氏、相変わらずのイケメンボイスですが、こちらもやや線が細い感じ。ただ、善人性を強調する?演出の意図からするとこれぐらいで丁度いいのかも😅
ピンカートンは(少なくとも1幕は)もっと自信たっぷり、余裕たっぷりのイケすかない好男子として存在して欲しいのですが、演出もあってか、城ピンカートンはやや神経質で、シャープレスの忠告にもイラつく感じ。加えて、城さん、腕や体の使い方など演技はあまりお上手ではなく(あくまで個人的見解です😅)、全体としてちょっとバタバタというかワチャワチャした感じでした💦
脇を固めるスズキの花房さんとシャープレスの今井さんは、二人とも声がよく通っていて、とても良かったと思いますカーテンコールでは主役の二人に勝るとも劣らぬ声援が飛んでいました
ということで、元々の音楽が素晴らしいだけに、疑問符だらけの演出を除けば大きな不満はなく(ヘンテコな日本を見せられることもなく😅)、そこそこ楽しめました来シーズンの新国立でも「蝶々夫人」がかかるらしい(タイトルロールは小林厚子さん)ので、演出面も含め、どんな舞台になっているのか楽しみにしたいと思います
⚪︎評価:☆☆☆★