○2025年12月21日(日)  13:15-  英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ2025/26
  プッチーニ「トスカ」於:TOHOシネマズ日本橋(現地2025年10月1日の公演を収録したもの)

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久しぶりのROHシネマは「トスカ」。何度も観た演目ではありますが、お気に入りの作品、しかも2019年以来、コロナとロシアのウクライナ侵攻問題で英国の舞台から遠ざかっていたアンナ・ネトレプコが復帰、しかもトスカを演じるとなると、中々日本では見れそうもないので、頑張って行って参りました
初演は1900年ですが、コベントガーデンでも上演されたらしく、その際はプッチーニもその場にいたとのこと今回は何十年ぶりかの新演出ということで、舞台が現代のローマと聞いて、その点にはちょっと不安を感じながらの鑑賞となりました😅
 

 

 


キャスト等:
指揮 ヤクブ・フルシャ
演出 オリバー・ミアーズ

トスカ アンナ・ネトレプコ
カヴァラドッシ フレディ・デ・トマーゾ
スカルピア ジェラルド・フィンリー
スポレッタ カルロ・ボージ
アンジェロッティ オシアン・ハスキンソン
堂守 アレッサンドロ・コルベッリ
その他


感想:
いやー、ネトレプコ、期待どおり素晴らしかったです

心配したオリバー・ミアーズの演出に関しては、可もなく不可もなくといったところ😅
第1幕の教会のシーンは、ミサイルが突っ込んできて瓦礫が積まれた半壊状態の教会内部、第2幕は白い大理石で囲まれた、やたら広くてがらんとした無機質なスカルピアの執務室、第3幕は窓からバチカン聖堂が覗く、白いタイルが敷かれた拷問室のような処刑部屋、といった感じ。
とりわけ第3幕は上記のような設定なので、ちょっとむごたらしい、刺激強めの描写がありました

このような設定だと、どうしても現在進行中のロシアとウクライナの戦争を想起してしまい、トスカとカヴァラドッシ、アンジェロッティなど市民がウクライナ側、スカルピアやスポレッタ等官憲が侵略してきたロシア側に見えてしまうのですが、他方でネトレプコはロシア出身で、ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、METや欧米の主要劇場から事実上追放された過去があるだけに、この演出でトスカを演じている彼女が、どう感じていたのか気になるところです💦

キャストのパフォーマンスについては、上述のようにネトレプコが素晴らしく、力づよさや華やかさに加えてピアニッシモの繊細な美しさ、華のある立ち姿などトスカが憑依したかのような歌唱と演技は圧倒的でした対するカヴァラドッシのフレディ・デ・トマーゾも負けず劣らずの出来で、圧倒的な声量を誇るスピント系のテノールで、その声の密度と圧力は凄かったです。両者とも、それぞれの聴かせどころ、「歌に生き、愛に生き」と「星はきらめき」では拍手と歓声が止まず暫くショーストップの状態でした

大体「トスカ」ではスカルピアの存在感が凄まじいので、カヴァラドッシが目立たなくなることが珍しくないのですが、これだけ強力なテノールだと流石にそんなことはなかったです(^^;;
かといってスカルピアのジェラルド・フィンリーが物足りなかった訳ではなく、こちらも快演
演出家がインタヴューで、スカルピアは労働者階級出身で、貴族階級出身のカヴァラドッシにコンプレックスとライヴァル心を持っているみたいな設定を言っていましたが、その辺りが滲み出てくる名演だったと思います

ということで3幕にサンタンジェロ城が登場する伝統的な演出の方が好きではありますが💦キャストのパフォーマンスが圧倒的だったので、満足のいく公演でした

ネトレプコは2年前にも来日していますが、その時は元夫君とのコンサートということで行きませんでしたが行っておけば良かったかなと後悔😅
しかし、今回英国ロイヤルオペラとの縁が復活したようですので、近いうちにお引越し来日公演で舞台上の姿を見てみたいものです


評価:☆☆☆☆

○2025年12月14日(日) マチネ(14:00-)  東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ(セミ・ステージ形式)
  ベルリオーズ/劇的物語「ファウストの劫罰」 於:東京芸術劇場コンサートホール
    オペラ全4部 フランス語(日本語字幕付き)上演

久しぶりに池袋は東京芸術劇場、演目はベルリオーズの「ファウストの劫罰」。あまり馴染みはありませんが、上演機会も少なそうだったので参戦することに😅
コンチェルタンテとなっていますが、セミステージと銘打っているので何らかの演出があるのだろうと期待しつつ、また、また、年初にブリュンヒルデで観た池田香織さんがマルグリート役ということで、それも楽しみにしつつ、氷雨がぱらつく寒空の中、頑張って行って参りました

 

 

 


○キャスト等:
指揮 マキシム・パスカル(Maxinme Pascal)
映像 上田大樹

ファウスト(T) 山本耕平
メフィストフェレス(Br) 友清崇
マルグリート(Ms)  池田香織
ブランデル(B.Br) 水島正樹

合唱指揮 三澤洋史
合唱 二期会合唱団

児童合唱 NHK東京児童合唱団

管弦楽 読売日本交響楽団


○感想:
なかなか面白かったです
元々劇的物語と銘打たれていただけに、印象としては、声楽付き、4部構成の交響詩という感じ^^;
これは、セミステージ形式とはいうものの、歌手陣は譜面台を見ながらで、ほとんど演技らしい演技もなかったことにもよるかもしれませんただ、「演出」がない代わりに「映像」となっていたように、オケの背後のスクリーン及びその周辺の壁いっぱいに映し出されるイメージ映像?は、中々工夫されていて面白かったです

音楽自体は、通常のオペラのアリアのように歌唱部分が際立っているわけではありませんが、声楽と合唱に大規模な管弦楽が融合した、ロマン派らしい色彩豊かで起伏に富んだ楽曲はなかなか聴きごたえがありました

歌手陣については、ファウストの山本耕平さんは、声量が圧倒的というわけではないものの、非常に鳴りの良いイケボは今日も健在ちょっと高音が苦しそうな部分もありましたが、まずまずの出来だったと思いますメフィストフェレスの友清崇さんは初見でしたが(たぶん😅)、こちらも安定の出来でとても良かったと思います
お目当てのマルグリートの池田香織さんについては、予想どおりの力みのない、芯の通った歌唱で美しい響きを聴くことができて満足でしたが、もっとマルグリートの出番が欲しかったです😅

ということで、そこそこ楽しめたのですが、やっぱりオペラを楽しんだ、という感じではなく、良いコンサートだったねという印象^^;
きちんと演出したフルのステージ版で見るとまた印象が違うかもしれないので、機会があれば見てみたいと思った次第です

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○評価:☆☆☆

○2025年12月6日(土) 13:00-  デビュー50周年 千住真理子 平和への祈り
J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ全曲演奏会

     於:東京ペラシティ コンサートホール  タケミツメモリアル

 

 

 

かなり久しぶりの純器楽曲の鑑賞となります
今日は特に予定はなかったのですが、相方とこじゃるが猫の絵を見に府中に行ってしまい、余されてしまった😅ため、1人でどこへ行こうかと思案したところ、お隣のオペラパレスでは「オルフェオとエウリディーチェ」の公演があり、そちらで良かったのですが、お安い席が全部売り切れていたため断念💦

対してこちらの千住さんのコンサートが断然お求めやすかったという不純な動機😅に加え、バッハの無伴奏チェロ組曲とともに、この無伴奏ヴァイオリンソナタも好きな曲であったこと、千住さんの演奏を生で聴くのは初めてということもあって、喜んで行って参りました

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○感想:
いやー、行って良かったですバッハの素晴らしい音楽と銘器ストラディヴァリウス“デュランティ“の深い音色に酔いしれた3時間50分でした
対位法と重音奏法が駆使され、たった1台のヴァイオリンなのに、2台、3台で合奏しているかのように聴こえるところは、やっぱり録音より生音ならではその和声的・多声的な音楽を聴いていると、何かシンフォニックな響きを感じてしまいます

技術的なことはよくわかりませんが💦千住さんも素晴らしかったと思います。
とにかく全曲で2時間半近くになるものを途中休憩2回を挟みながら、4時間弱弾きっぱなしになるのですから、その集中力、精神力は大変なものです流石に全力を出し切ったのか、アンコールはなしですが、納得です
中でもやっぱりソナタ第3番の長大なフーガと、パルティータ第2番のシャコンヌは圧巻でした

近年はオペラ鑑賞に時間と体力、お金を集中投下していますが^^;たまには純粋器楽曲も聴かねばと思いながら、初台を後にした次第です。

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(假屋崎省吾さん制作?のクリスマスツリーが飾られていました(^^))


○評価:☆☆☆☆


○2025年11月30日(日)マチネ(14:00-)  北とぴあ国際音楽祭2025  於:北とぴあ さくらホール
    G.F.ヘンデル作曲「ロデリンダ」 全3幕 イタリア語上演(日本語字幕付)  セミステージ形式

 バロックオペラ推しの相方の好物なので、ヘンデルのオペラはなるべく行くようにしています😅恥ずかしながら「北とぴあ国際音楽祭」なるものがあることを知りませんでしたが、今年で30年目とか2019年には「リナルド」も上演したそうです
 指揮の寺神戸亮さんについては、名前のみ存じ上げていましたので、演奏のレ・ボレアードともども初見となります会場の北とぴあも初めて訪れる場所ですし、実力者揃いの歌手陣も含め、どんな演奏を聴かせてくれるか楽しみに行ってまいりました

 

 

 




○キャスト等:
寺神戸亮 指揮・ヴァイオリン
演出 小野寺修二

ロデリンダ(S)  ロベルタ・マメリ(Roberta Mameli)
ベルタリード(C.T)  クリント・ファン・デア・リンデ(Clint van der Linde)
グリモアルド(T)  ニコラス・スコット(Nicholas Scott)
エドゥイジュ(Ms)  輿石まりあ
ウヌルフォ(C.T)  中嶋俊晴
ガリバルド(Br)  大山大輔
ダンサー 崎山莉奈、大西彩瑛

管弦楽 レ・ボレアード


○感想:
いやー、なかなか面白かったです
まず会場の「北とぴあ さくらホール」ですが、南北線王子駅と直結で交通の便が良く、やや築年数は経っていますが、扇形の2層構造で視界も良く、音響も悪くなかったです

本日はセミステージ形式ということで、舞台設備は可動式の段差を数箇所設けているのと、背景のスクリーンにプロジェクトマッピングを用いている以外は、特に仕掛けはなし。衣装も現代風のタキシードやドレスなどで統一。極めてシンプルながら、舞台を一杯に使って演技はしっかりつけていました
ダンサーの方2人も時に登場人物と絡みながら、場面に応じてコンテンポラリー風の踊りを披露。割と単調なお芝居ですので、そこそこ変化がついて良かったです

音楽については、いつものヘンデルで基本歌合戦😅登場人物が舞台に次々に登場してアリアを歌い、歌い終わると退場します😆曲はどれも美しい旋律だと思うのですが、急速調の部分はどれも同じように聴こえてしまいます💦もっともこちらも歌唱を楽しむモードになっているので無問題^^;それでも2幕ラストのロデリンダとベリタリードの二重唱は非常に美しく感動的でした

キャストについては、まずタイトルロールのロベルタ・マメリさんが素晴らしかったです
リリカルかつ強靭、華やかな声質で声量も十分、どのアリアも声の響きが素晴らしく(特に微弱音が素敵でした)、ヒロインらしい長身と容姿も相まってぴったりの役どころでした
対するベルタリードのリンデさんも会場を包み込むような広がりのある美しい響きの声の持ち主で、こちらも声量も十分アジリタも見事にこなして拍手喝采を浴びていました。
敵役その1?のグリモアルドを演じたスコットさんは、声量こそ、そこまでではないものの、非常に美しい音色のリリカルで端正なテノールで、バロックオペラにぴったりの美声でした
日本人キャストの皆さんも良かったのですが、特に印象的だったのは敵役その2?の大山大輔さんこの方も大変な美声の持ち主で、かつてミュージカル「オペラ座の怪人」でタイトルロールを演じたこともあるそう。聴いてみたかったです😅

演奏の方も古楽器のオケらしい素朴で優しい音色、比較的前方の客席で聴いたためか、特に音量や音圧が足りない感じもなく、気持ち良く音楽に浸ることができました

ということで公演に関しては大いに楽しめてほぼ満足したのですが、2回休憩を挟んで約4時間はちょっと長いかなという感じ途中、1、2回意識が飛びましたが、歌詞は同じことの繰り返しで、歌っている間は全くストーリーが進まないので全く支障なし😅
この北とぴあ国際音楽祭、来年のオペラ演目はモーツァルト18歳のオペラ・ブッファ「偽の女庭師」だそうです。これまで聞いたこともなかった作品ですが都合がつけば聴いてみたいと思います

○評価:☆☆☆★

○2025年11月27日(木) 10:40-  MET LIVE VIEWING 2025-2026  
   ベッリーニ「夢遊病の娘」 全2幕 (現地上演日時:10月18日午後1時~) 於:新宿ピカデリー

MET LIVE VIEWING 2025-2026シーズンの第1弾はベルカントオペラの傑作、ベッリーニの「夢遊病の娘」(日本語の定訳は「夢遊病の女」だと思ってましたが、お話の内容としては娘が適切なんでしょう💦)

主役のアミーナ役は今をときめくネイディーン・シエラということで見逃す訳にはいかず😅週末は予定があったことから、平日昼間の上映に出かけて来ました
本作は映像で1回実演で1回見ましたが、息の長い美しい旋律に溢れた聴きごたえ十分の作品という印象高名なテノール歌手、ローランド・ビリャソンが演出した新演出版ということで、N.シエラがどう演じるのか楽しみに行ってまいりました
 

 



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○キャスト等:
指揮 リッカルド・フリッツァ(Riccardo Frizza)
演出 ロランド・ビリャソン(Rolando Villazon)

アミーナ(S) ネイディーン・シエラ(Nadine Sierra)
エルヴィーノ(T) シャビエール・アンドゥアーガ(Xabier Anduaga) 
ロドルフォ伯爵(B) アレクサンダー・ヴィノグラドフ(Alexander VInogradov) 
リーザ(S) シドニー・マンカソーラ(Sydney Mancasala)
アレッシオ(B) ニコラス・ニュートン(Nicholas Newton)
テレーザ(Ms)  デボラ・ナンスティール(Deborah Nansteel)

○感想:
実に素晴らしかったです
まず演出に関しては、ビリャソンはインタビューの中で、舞台となるスイスの山村を抑圧的な家父長制の支配する場所と設定し、他方アミーナについては、そんな中で窮屈さを感じ、より自由を求めるキャラクターとして造形したようなことを言っており、それがN.シエラのキャラや天衣無縫?系の演技とぴったりハマって、実に痛快な喜劇に仕上がっていましたこういう設定ならラストの解釈はこうだろうなという納得のエンディングでした

舞台美術自体はシンプルで、たくさんの扉が付いた白い塀に囲われた中庭のような場所で物語が進行、塀の向こう側には美しいアルプスの白い山並みが窺えるというもの。衣装に関しては、村の人々は黒っぽい修道服のような制服?を着ており、主要な登場人物たちも奇を衒ったところのないシンプルな衣装で、ドラマを邪魔するところのないのが好印象でした

キャストについては、なんと言ってもN.シエラの歌唱力が圧巻でした
湿り気と温もりのある独特の響きの美声には磨きがかかり、1幕冒頭のアリアからエンジン全開、2幕ラストの長大なアリアや重唱も含めて全て歌唱が聴きどころ満載でした決して軽い声質ではないのですが、超高音の超絶技巧も軽々とこなし(そう見えました💦)た上に、少女のように無邪気でお茶目なアミーナを実に魅力的に演じており、客席からの盛大な歓呼も宜なるかなと言ったところMETのP.ゲルブ総裁が冒頭語っていたように、今が彼女のキャリアのピークにあるのでしょう

対するエルヴィーノのアンドゥアーガも良かったです
パヴァロッティの再来と呼ばれているという紹介が冒頭ありましたが、パヴァロッティほど底抜けに明るくはありませんが、確かに輝かしい響きのテノールで、超高音も無理強いしたものではなく、美しい歌声でしたまだ、30歳と言うことですが、早くもトップクラスのテナーというのもわかりますこちらも演技の方でも、生真面目でアミーナを心から愛してはいるものの、旧弊とした考え方に囚われており、アミーナの本当の理解者にはなりきれていない若者を好演

このほかロドルフォ伯爵のヴィノグラドフ、リーザのマンカソーラも素晴らしいパフォーマンスでお芝居を大いに盛り上げていました

ということで今年も注目作が目白押しのMET LIVE VIEWING、第5弾には同じベッリーニの「清教徒」も控えてえおり、楽しみな1年となりそうです


○評価:☆☆☆☆★

○2025年11月22日(土)  マチネ(14:00-)  アルバン・ベルク「ヴォツェック」  
   全3幕ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付 於:新国立劇場オペラパレス

 久方ぶりの新国立劇場オペラ、今回は映像でしか見たことがありませんが、ちょっと救われない感じの悲劇だったという記憶のある😅アルバン・ベルクの「ヴォツェック」。しかし、何といっても新制作で今シーズンの目玉とされており、指揮も大野和士マエストロということで、楽しみにしていました
が、タイトル・ロールのトーマス・ヨハネス・マイヤーが木曜のソワレを降板、案じていましたが、やはりこの日のマチネも降板ということでややテンションは下がり気味でしたが😅気を取り直して行ってまいりました



 

 

 




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○キャスト等:
指揮 大野和士
演出 リチャード・ジョーンズ(Richard Jones)

ヴォツェック(Br) 駒田敏章
マリー(S) ジェニファー・デイヴィス(Jennifer Davis)
鼓手長(T) ジョン・ダザック(John Daszak)
大尉(T) アーノルド・ベスイエン(Arnold Bezuyen)
医者(B) 妻屋秀和
アンドレアス(T) 伊藤達人
マルグレート(Ms) 郷家暁子
第一の徒弟職人(B) 大塚博章
第二の徒弟職人(B.Br) 萩原潤
白痴(T) 青地英幸
兵士(T) 二階谷洋介
若者(T) 寺田宗永
ほか
合唱指揮 冨平恭平
合唱 新国立劇場合唱団
児童合唱 TOKYO FM 少年合唱団

管弦楽 東京都交響楽団


○感想:
なかなか面白かったです。この作品は、語るような歌い方(シュプレヒシュティンメ)に象徴されるように、非常に演劇(ストレートプレイ)に近い性格のオペラ(と言い切って良いかすらわかりません💦)なのですが、舞台装置もシンプルで抽象化されたもので、ベニヤ板で囲われた兵舎やヴォツェックの自宅、トレーニングルーム?が、場面に応じて回転しながら舞台に登場する仕掛けがまず面白かったです

無調の楽曲は場面場面で変化に富んでおり、不思議なことに聴いていると段々心地よくなって来て、時に美しさも感じます2幕の途中では気持ち良くなって来て意識が飛んだほどです😅
不条理劇のような、ヴェリズモのような悲惨で幻想的なストーリーと、貧困と嫉妬に徐々に狂気を孕んでいくヴォツェックの精神状態、さらに彼に写っているであろう世の中の姿を描くに当たって、こういう音楽、こういう歌唱法がピッタリ来るというのは確かです

キャストについては、まず、タイトルロール代役の駒田さん、健闘していたと思います良く声も出ていましたし、演技も悪くなかったです。しかし、招聘歌手陣が声量豊かな方ばかりでしたので、相対的にやや迫力不足に感じるところも特に低音部にもう少し響きが欲しいところでした。
招聘歌手3人については上記のとおり、いずれも強い声の持ち主で演技も堂に入ったもの特に男声テノールのお2人は強力でしたし、マリー役のジェニファー・ディヴィスも良かったと思います
日本人では、アンドレアスの伊藤達人さんが相変わらずの美声を聴かせてくれました

オケの良し悪しは良くわかりませんが、アンサンブルも良く迫力ある立体的なサウンドが聴けて個人的には満足です

ということで、演出も含め概ね満足できたのですが、こうなるとやっぱり評価の高いトーマス・ヨハネス・マイヤーさんのヴォツェックを聴きたかったところ
3連休の初日のマチネにも関わらず、今日の入りは7割程度でしたが、当日券の売れ行きが多少左右した可能性もあるかも知れません。最終日は24日、自分は行けませんが、マイヤーさんが復活して有終の美を飾られることをお祈りしております

○評価:☆☆☆★

○2025年11月16日(日) マチネ(14:00-)  NISSAY OPERA 2025  ジュール・マスネ

「サンドリヨン」  全4幕 原語(フランス語)上演・日本語字幕付き 於:日生劇場

恒例のNISSAY OPERA、第1弾はマスネの「サンドリヨン」。当然初見ですし、そもそもマスネのオペラは見たことがありませんん💦知りませんでしたが、マスネは30作ものオペラを作曲したらしく、かの有名な「タイスの瞑想曲」もオペラ「タイス」の間奏曲
今回の「サンドリヨン」は「マノン」や「ウェルテル」、「タイス」ほどは知られていないようですが、現在までそこそこ上演されているようです😅
気軽にみられるNISSAY OPERA、しかもよく知られた「シンデレラ」のお話ということで、特段の予習もせず、肩の力を抜いて観劇に行ってまいりました
 

 

 



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○キャスト:
指揮 柴田真郁
演出・振付 広崎うらん

サンドリヨン(リュセット)(Ms)  金子紗弓
シャルマン王子(Ms) 山下裕賀
妖精(S) 横山和美
ド・ラ・アルティエール夫人(Ms) 星由佳子
バンドルフ(Br) 河野鉄平
ノエミ(S) 別府美沙子
ドロテ(Ms) 北薗彩佳
王(Br) 龍進一郎
大学長(T) 照屋篤紀
儀典長(Br) 湯浅貴斗
総理大臣(Br) 的場正剛
ほか

合唱指揮 安倍克彦
合唱 C.ヴィレッジシンガーズ

管弦楽 読売日本交響楽団



○感想:
いやー、良かったですいつもながらNISSAY  OPERAはコスパが良いです💦
お話自体は、基本我々がよく知るシンデレラの物語ですが、陰湿陰惨な要素が薄め、エンディングを含めコメディに特化したバージョンといったところでしょうか。
舞台設備はNISSAY OPERAらしい一点豪華主義😅で、中央の回転舞台上に設置されたサンドリヨン(リュセット)の屋根裏部屋と宮廷の大階段?が背中合わせになって幕ごとに活躍する仕掛けを除いては、極めてシンプル。しかし、ディズニーアニメを意識したかのような平面的なデザインや義姉たちのキッチュな衣装など、低予算(低料金?💦)の中でよく頑張っている方だと思います

マスネの楽曲に関しては、緩急強弱明暗高低の対比の効いた、フランス人作曲家らしい色彩感に富んだ旋律という印象ニコニコなかなか良かったです(^^)

キャストに関しては、まず、これが日本デビューとなるサンドリヨンの金子紗弓さんが素晴らしかったです特に声量が圧倒的ということはないのですが、ほどよい膨らみがあって響きの深い声、透りも良く非常に心地よく聴けましたサンドリヨンは本来、ソプラノの役とされているようですが、何ら問題なくこなしていましたし、今日に限って言えば、シャルマン王子役の山下裕賀さんとのダブルメゾの声の相性が素晴らしく、2人の声の溶け合うさまは非常に聴きごたえがありました

その山下裕賀さん、豊かな響きと声量で流石の出来でした(^^)下手をすると滑稽になりかねない(それが狙い?)、あくまで受け身の王子役ですが😅数々のズボン役をこなしているだけあって、大仰な苦悩ぶりもサマになるイケメンぶりでした

このほか、妖精役の横山和美さんのコロラトゥーラも良かったですし、バンドルフの河野鉄平さん、ド・ラ・アルティエール夫人役の星由佳子さんらも好演全編を通じて、楽しむことができました

日生劇場は客席数もほどほどの中規模の劇場で、全体に見通しも良く、好きな劇場のひとつ。比較的天井の低い、平たい感じの空間故に音響が良い(というか反射音で比較的間近に聴こえる)。オーケストラピットもギチギチで大編成の楽曲は向かなでしょうが、今日のような演目にはちょうど良い感じ
来年以降、都内の劇場が軒並み建て替えや改修で使用不能となるようですから、(設備的に大作は難しいでしょうが)是非この劇場での上演機会を増やしてもらいたいものです

○評価:☆☆☆☆★ 

○2025年11月15日(土) マチネ(12:00-)  音楽座ミュージカル「リトルプリンス」 於:IMMホール

今年6月に上演された音楽座ミュージカル「リトルプリンス」、秋シーズンに(予定どおり?)再演となり、東京は初めてのIMMシアターでの公演となります。
何せご近所の劇場ですので、これ幸いと視察がてら行って参りました😅
問題は、ダブルキャストのどっちの組み合わせで行くかでしたが、初めて音楽座ミュージカルを実演で見るこじゃるを連れて行くことから、6月の観劇結果を踏まえ、より安定した組み合わせの山西・小林コンビの組を見に行くこととした次第
音楽座ミュージカルの代名詞とも言える作品、こじゃるの感想が楽しみです


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○キャスト:
王子 山西菜音
飛行士 安中淳也
花 岡崎かのん
キツネ 小林啓也
ヘビ 上田亮
黄花 毎原遥
王様 清田和美
実業屋 新木啓介
呑助 北村しょう子
うぬぼれ屋 泉陸
点灯夫 大須賀勇登
地理学者 五十嵐進
弟 森彩香
ほか

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○感想:
いやー、メチャクチャ良かったです
山西王子、明らかに進化していました前回も決して下手と言うわけではなく、初主演とは思えないほどお上手だったのですが、今回、台詞回し、表情、間の取り方など、すべての面でより説得力が増す演技でした。歌唱に関しては、やはり最高音部にやや不安定さが残るものの大きな問題はなく、駆け回った直後の歌唱やセリフから連続しての歌唱など、難所が多いのですが見事にこなしていたと思います
キツネの小林啓也くんも期待どおりの出来、飛行士の安中さんはいつもの安中さんでしたが😅汗だくで頑張っていました

そして今日も主演級の存在感を見せたのが、花の岡崎さん。癖のないどこまでも伸びる素晴らしい歌唱、ケレン味タップリの演技、容姿の美しさ今日も登場しただけで舞台が華やぎ、歌い始めれば思わず聞き惚れてしまう素晴らしさ もはや音楽座ミュージカルの看板女優と言って良いでしょう
脇では、上田さんの不気味なヘビ、清田さんの愛嬌満点の王様がやはり目立っていましたいつも感じることですが、清田さんの芸域の広さ、エンターテイナーぶりは圧巻です😅

それにしても、この作品は本当によく出来ていて、まず何より楽曲が素晴らしいですほぼ全曲が耳に残るメロディと独特の雰囲気はまさに宇宙的💦シンセサイザーとの相性は抜群です♪さらに簡素ながらよく工夫された舞台装置や照明、鮮やかで印象的な衣装、ダイナミックな群舞ストーリーもサン=テグジュペリの原作に沿って要所要所を押さえつつ、飛行士(≒サン=テグジュペリ)とその弟(≒サン=テグジュペリの弟)との関係、飛行士とその恋人(サン=テグジュペリの妻?)及び花(≒恋人)との関係など、さりげなく登場人物たちの対話中に織り込んで、ちゃんと音楽座ミュージカルらしい人間ドラマに仕立てているところも良いですね

と言うことで音楽座ミュージカル初見のこじゃるも大満足終演後は音楽の素晴らしさ、役者さんの演技に感動したとの賜わっており、音楽座推しのこちらとしては面目躍如😅ほぼ満席の観客もカーテンコールでは大勢の方がスタンディング・オベーションで喚呼を挙げるなど、みなさん満足したと思われます

唯一問題を挙げるとすれば、今日の公演会場であるIMMシアターですキャパが約700席ということですが、ホワイエを兼ねたエントランスは券売所、売店などでほぼスペースがない状態休憩時間は混雑防止のため、1階側出口は封鎖され、2階部分まで一旦上がってから階段を降りてトイレに向かう必要があり、面倒くさいですし、肝心のトイレも男女1箇所ずつで、少なくとも男性用は便器の数も少なくかなり混雑するなど、居住性、快適性からはほど遠い状況新しい劇場なのだから、もう少し余裕を持って作って欲しかったところですが、まあ吉本ですからねえ💦客席自体は、今日は最前列だったので見えやすさは判断できませんでしたが、見たところ、舞台の見通しは悪くなさそうでした

ロビーでは早速来年7月上演予定のマドモワゼル・モーツァルトの特別前売り券が売り出されていましたが、注目は主演のモーツァルト最近の公演を見る限り、もう岡崎さんしかいないような気もしますが、客演も含め、意外性のあるキャスティングもあり得るところで、今から楽しみにして発表を待ちたいと思います

○評価:☆☆☆☆☆

○2025年10月20日(月) マチネ(15:00-)  ウィーン国立歌劇場2025年日本公演
 R.シュトラウス「ばらの騎士」全3幕 於:東京文化会館大ホール

9年ぶりウィーン国立歌劇場来日公演の第2弾は「ばらの騎士」ちょっと冗長なところもありますが💦結構好きな演目で、第1弾の「フィガロの結婚」とは時代設定も近く、筋立てや登場人物にも共通性・関連性があり、組み合わせの相性も良さそう、ということで、引き続き頑張って行って参りました
「フィガロ結婚」の演出が割と現代的でスタイリッシュなものだった一方、こちらの「ばらの騎士」の方は伝統的でオーソドックスな演出のようだったので、そのあたりも楽しみにしていました


 

 

 



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○キャスト等:

指揮:フィリップ・ジョルダン

Musikalische Leitung:Philippe Jordan

 

演出:オットー・シェンク

Inszenierung:Otto Schenk

 

装置:ルドルフ・ハインリッヒ

Buhne:Rudolf Heinrich

 

衣裳:エルニ・クニーペルト

Kostume:Erni Kniepert

 

合唱監督:マーティン・シェベスタ

Choreinstudierung:Martin Schebesta

 

 

 

陸軍元帥ヴェルテンベルク侯爵夫人:カミラ・ニールンド

Feldmarschallin:Camilla Nylund

 

オックス男爵:ピーター・ローズ

Baron Ochs auf Lerchenau:Peter Rose

 

オクタヴィアン:サマンサ・ハンキー

Octavian:Samantha Hankey

 

ファーニナル:アドリアン・エレート

Herr von Faninal:Adrian Erod

 

ゾフィー:カタリナ・コンラディ

Sophie:Katharina Konradi

 

マリアンネ:レギーネ・ハングラー

Leitmetzerin:Regine Hangler

 

ヴァルザッキ:トーマス・エベンシュタイン

Valzacchi:Thomas Ebenstein

 

アンニーナ:ステファニー・メイトランド

Annina:Stephanie Maitland

 

警官:ヴォルフガング・バンクル

Polizeikommissar:Wolfgang Bankl

 

ファーニナル家の家令:ダニエル・イェンツ

Haushofmeister bei Faninal:Daniel Jenz

 

公証人:マークス・ペルツ

Notar:Marcus Pelz

 

歌手:エンジェル・ロメロ

Ein Sanger:Angel Romero

 

帽子売り:イレアナ・トンカ

Modistin:Ileana Tonca

 

居酒屋の亭主:ヨルグ・シュナイダー

Wirt:Jorg Schneider

 

侯爵家の家令:ユーライ・クハール

Haushofmeister bei der Feldmarschallin:Juraj Kuchar

 

ウィーン国立歌劇場管弦楽団

Orchester der Wiener Staatsoper

 

ウィーン国立歌劇場舞台上オーケストラ

Buhnenorchester der Wiener Staatsoper

 

ピアノ/チェレスタ:アントン・ツィークラー

Klavier/Celesta: Anton Ziegler

 

ウィーン国立歌劇場合唱団

Chor der Wiener Staatsoper

 

ウィーン国立歌劇場助演

Komparserie der Wiener Staatsoper

 

バンダ指揮:マルクス・ヘン

Leitung Buhnenmusik: Markus Henn

 

演出補:  ピーター・パッヘル

Abendspielleitung: Peter Pacher

 

プロンプター:  イエラ・ペトリチェック

Maestro Suggeritore: Jera Petriček

 

 

 

 


○感想:
いやー、今日も良かったです
今日は特にウィーン・フィルの演奏に感心しましたどこまでも甘い弦の調べから怒涛のようにうねる金管の響きまで、時に豪快、時に繊細なR.シュトラウスの管弦楽技法をダイナミックレンジの広い、かつ、解像度の高い演奏で堪能させてくれました聴いていて気持ちよかったです

演出(美術)面で言えば、衣装や第1幕の元帥夫人の居室などはロココ調?風でそれなりに見応えがありましたが、第2幕のファーニナルの屋敷では、奥行きのあるスケールの大きいセットながら、美麗さには欠けており、本場ウィーン版と比べるとかなり簡素化されている感じ招聘費との見合いでしょうが、ちょっと残念なところでした💦

歌手陣については、まず、元帥夫人のカミラ・ニールンドはど迫力のボディとそれを強調する衣装に目を奪われましたが😅歌唱も貫禄の出来声量はそれほどでもありませんが、佇まいと抑制的な歌唱で元帥夫人の苦悩と受容を好演、ラストの三重唱はやはり素晴らしかったです

オクタヴィアンのサマンサ・ハンキーはさすがMETでも同役を演じているだけあって堂々の演技と歌唱、今日一番声が飛んでいましたゾフィーのカタリナ・コンラディも声が良く透っており、この若い2人はまさにお似合いのカップルでしたそれにしてもカタリナ・コンラディは、「フィガロの結婚」でスザンナを代役で5公演を演じ切った8日後から「ばらの騎士」を4公演に出演とは大変です

オックス男爵のピーター・ローズは品のない役柄に反して😅とにかく声が美しく聞き惚れました下品でいながらも威儀を失わないところはさすが男爵という演技ファーニナルのアドリアン・エレートもお上手でした
フィガロの結婚でも感じたことですが、歌手陣は全体に高水準でバランスが取れており、全体に国際的な大スターはいなかったかもしれませんが、底力を感じました

それにしてもこの演目、3幕ラストの三重唱以下がなかったら(ドタバタでオックスが退場するところで終わっていれば)、オックス男爵を主人公とするファルスタッフ的な喜劇で終了、それはそれで成り立つと思うのですが、そこからの音楽の力で、なんとなく内省的な、人生の悲哀すら感じる大人の苦いラブストーリー?に仕立ててしまうところは凄いです。よく考えれば、元帥夫人の火遊びが当然ながら長続きせず、迎えるべき結末を迎えるのですが、オックス男爵がそのトバッチリを受けたような感じで、男爵が気の毒な面も😅男爵がなんとなく憎めないのも、そのあたりがあるように思います

ということで、個人的にはこれで今年のウィーンか劇場来日公演は聴き納め、次はいつ聴けるかわかりませんが、しばらく余韻に浸っていようと思います^^;


○評価:☆☆☆☆

○2025年10月11日(土) マチネ(14:00-) ウィーン国立歌劇場2025年日本公演
 モーツァルト「フィガロの結婚」 全4幕 於:東京文化会館 大ホール


ウィーン国立歌劇場の来日公演は9年ぶり10回目とか。はるか昔にウィーン・フィルの公演を聴きに行ったことがあるような気がするのですが、もはやその時の記憶はなし💦もちろん、歌劇場としてオペラを実演で聴いたこともないので初めての体験となります
メトロポリタン歌劇場が世界一?お金をかけ、今とときめくスター歌手を擁してオペラを上演しているのは周知の事実でしょうが、真に世界一のレベルかどうかは別問題。MET、ミラノ・スカラ座と並んで世界3大歌劇場の一つとされるウィーン国立歌劇場の実力や如何?と、清水の舞台から飛び降りるつもりで😅今回の「フィガロの結婚」と次演目の「ばらの騎士」を購入した次第
それだけに、直前になってアルマヴィーヴァ伯爵役のアンドレ・シュエンとスザンナ役のイン・ファンが降板と聞いて、大変残念でしたが、気を取り直して秋雨の上野に行って参りました

 

 



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○キャスト等:
指揮:ベルトラン・ド・ビリー

Musikalische Leitung:Bertrand de Billy

演出:バリー・コスキー

Inszenierung:Barrie Kosky


合唱監督:トーマス・ラング

Choreinstudierung:Thomas Lang

 

アルマヴィーヴァ伯爵:ダヴィデ・ルチアーノ

Conte d'Almaviva:Davide Luciano

アルマヴィーヴァ伯爵夫人:ハンナ=エリザベット・ミュラー

Contessa d'Almaviva:Hanna-Elisabeth Muller

スザンナ:カタリナ・コンラディ

Susanna:Katharina Konradi

フィガロ:リッカルド・ファッシ

Figaro:Riccardo Fassi

ケルビーノ:パトリツィア・ノルツ

Cherubino:Patricia Nolz

マルチェリーナ:ステファニー・ハウツィール

Marcellina:Stephanie Houtzeel

バジリオ:ダニエル・イェンツ

Basilio:Daniel Jenz

ドン・クルツィオ:アンドレア・ジョヴァンニーニ

Don Curzio:Andrea Giovannini

バルトロ:マテウス・フランサ

Bartolo:Matheus Franca

アントニオ:クレメンス・ウンターライナー

Antonio:Clemens Unterreiner

バルバリーナ:ハン・ヘジン

Barbarina:Hyejin Han

 

ウィーン国立歌劇場管弦楽団

Orchester der Wiener Staatsoper

 

ハンマークラヴィーア: トンマーゾ・レポレ

Hammerklavier: Tommaso Lepore

 

ウィーン国立歌劇場合唱団

Chor der Wiener Staatsoper

 

 

○感想:

いやー、行って良かったです
なんというか非常に洗練された、全てにおいてレベルの高い公演を見せて(聴かせて)もらったように思います

演出に関しては、衣装が現代風なのを除けば、割とシンプルでオーソドックスな感じですが、貴族VS領民の構図に関して、面従腹背的な要素が若干強めになっていました。舞台設備もスタイリッシュで美しいのですが存外シンプルなもので豪華とまでは言えず😅4幕の庭園の場では、緑の市松風に塗られた八百屋舞台の底部からモグラ叩きよろしく登場人物が蓋を開けて出入りする仕掛けがちょっと変わっていて面白いのですが、遠方からだと誰が出てきて歌っているのかやや分かりづらかったです^^;
分かりづらいと言えば、ラスト、伯爵夫人が登場するところ、スザンナの花嫁衣装?を着て現れるのが常道かと思いますが、何故か黒のドレスにお着替えしての登場?これだと暗闇の中、2人が入れ替わっていたことが分かりにくいのではと思ってしまいました💦

肝心のキャストの印象ですが、やはり伯爵夫人のハンナ=エリザベット・ミュラーが良かったです「水晶から切り出されたような歌声」と称されているようですが、確かに美しく深さのある、いわゆる鳴りの良い響きで、第一声を聴いた時におっ!と感じました長身で容姿も良く、伯爵夫人としての威儀も備えた演技も相俟って、うってつけの役柄と言えるでしょう。2曲のアリアも素晴らしかったですし、今日最もカーテンコールでの拍手が多かったのも頷けます

ついでタイトルロールのリッカルド・ファッシですが、圧倒的な歌声というわけではありませんが、非常に安定しており、どの音程でも響きが一定していて低音がしっかり聴こえましたので、やはり上手かったと思いますとりわけ個人的には彼のレチタティーヴォがとても音楽的?で良かったと思いますその分アリアはやや地味で、「もう飛ぶまいぞこの蝶々」ではお客さんの拍手をもらい損ねていたのがちょっと気の毒でした💦

急遽?代役となった2人、スザンナ役のカタリナ・コランディ、アルマヴィーヴァ伯爵のダヴィデ・ルチアーノも良かったと思いますが、しかし、イン・ファンとアンドレ・シュエンで聴きたかったというのが本音のところ😅しかし代役としては立派な出来で、水準以上のものを聴かせてくれたと思います

ケルビーノのパトリツィア・ノルツもメゾらしい深い美しい響きで2曲のアリアを好演。長身でスタイルも良くこちらもズボン役がピッタリ。お約束の着替えシーンでのちょっぴりお色気な場面も様になっていました😅
このほか歌手陣は総じてレベルが高く、合唱も含めて安心してドラマに没入できました

オケや指揮のことはよくわかりませんが、全体にテンポが良く、かつノリ(ビート?)を感じる演奏。他方でアリアはたっぷり歌わせる緩急自在の音楽作りだった気がします。編成もありますので音量に圧倒されることはありませんが、歌声を邪魔することなく鳴らしすぎず、小さすぎずの適正音量。先入観かもしれませんが、弦の響き、膨らみというか広がりが、やはりちょっと他のオケと違うような気がしました。

ということでウィーンの薫りをほんの少し堪能できたような気がした今日の公演でしたが、S席82,000円、E席29,000円というお値段に見合うものかどうかは主観の問題なので難しいところ。個人的には(今日はD席39,000円×2で鑑賞)大満足とはいかないまでも、まあ納得というところでしょうか^^;バロックオペラ好きの相方も、やっぱりモーツァルトは良いわねと述懐していましたニコニコ
次回の「ばらの騎士」では、もう少しウィーンの雰囲気を味わえることを期待して(≒もう少し舞台が豪華なことを期待して😅)上野のお山を後にした次第です。



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○評価:☆☆☆☆