⚪︎2024年10月3日(木) ソワレ(18:30-) 於:新国立劇場オペラパレス
ベッリーニ(Bellini)「夢遊病の女(La Sonnambula)」
新国立劇場オペラ、2024-2025シーズンの幕開けは、新国立劇場では初演となるベッリーニの代表作の一つ、「夢遊病の女」です。先日MET Live Viewingで予習😅をしてきたところですが、ベッリーニらしい流麗な音楽とベルカントの技巧が楽しめる中々の傑作でした
本公演は、新国立とテアトロ・レアル、リセウ大劇場及びパレルモ・マッシモ劇場との共同制作とのこと。最近は製作費が高騰してきて、どの劇場も苦労しているのか、このパターンが増えてきているような気がしますが、その分、国際色豊かな製作陣の仕事と演出が体験できるということで、今回も演出のバルバラ・リュックがどのような解釈をしてくるか楽しみです
加えて、タイトルロール?の「夢遊病の女」ことアミーナを演じる予定だったローザ・フェオラが、自分の声質がアミーナ役に合わなくなってきたという「芸術上の理由」により降板、代わって最近注目されているイタリアの若手歌手、クラウディア・ムスキノが本邦初登場ということで、その辺りも楽しみに行ってまいりました
〇キャスト等:
指揮 マウリツィオ・ベニーニ(Maurizio Benini)
演出 バルバラ・リュック(Barbara Lluch)
アミーナ(S) クラウディア・ムスキオ(Claudia Muschio)
エルヴィーノ(T) アントニーノ・シラグーザ(Antonino Siragusa)
ロドルフォ伯爵(B) 妻屋秀和
テレーザ(Ms) 谷口睦美
リーザ(S) 伊藤晴
アレッシオ(Br) 近藤圭
公証人(T) 渡辺正親
合唱指揮 三澤洋史
合唱 新国立劇場合唱団
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
〇感想:
いやー、素晴らしかったと思います
演出面では賛否あろうかと思いますが、美術面はすっきりとしたシンプルな作りながら、センスを感じるもの。1幕は舞台中央奥にぽつんと立つ杉のようなヒノキのような大木の上部に、粗末な男女の人形がくくりつけられているだけ、2幕前半は蒸気機関と水車?が組み合わされたような構造物がおかれた中で、2幕後半は方形の教会風の木造っぽい建築物の周辺で、お芝居が進行します。
1幕及び2幕冒頭でダンサーが10人ほど登場し、アミーナの周りで夢魔のような感じで彼女を揺さぶりつつ踊るシーンが数分あるのですが、音楽が始まる前はそうでもないのですが、音楽が始まってしまっていると、時折ダンサーの足が床をする音が大きく響いてちょっと邪魔に感じましたまあ、意図はわからなくもないのですが(^^;
一番感心したのは、ネタバレになるので詳しく書きませんが、演出のバルバラ・リュックが単なるハッピーエンドの喜劇にしたくないと言っていたのは、こういう意味かと腑に落ちたラストシーンの演出でした
さて、キャストの感想ですが、まずはお目当てのアミーナ役のクラウディア・ムスキオ、期待どおりだったと思います日本人とさほど変わらぬ細身の体形(しかもなかなかの美貌(^^;))で、圧倒的な声量という訳ではありませんが、落ち着いたやや暗めの響きのソプラノで自然で力みのない発声、とにかく声が美しくずっと聴いていたい感じ冒頭のアリアも良かったですが、何といっても2幕ラストの長大なアリアが素晴らしかったです歌だけでなく夢遊病のさなかの忘我の表情もなかなかリアルでした
イタリア出身で、現在はシュトゥットガルト州立劇場の専属歌手ということですが、まだ28歳と若く、つい先日同劇場でこのアミーナ役を演じて絶賛されたとのこと。今日もカーテンコールでは大きな歓声を受けていました。新国デビューも成功裡に終わり(まだ公演は残っていますが)、今後国際的にも活躍してくれそうですし、日本にもまた来てもらいたいものです
そしてエルヴィーノのアントニーノ・シラグーザ、こちらは好対照のやや細めの底抜けに明るい実に若々しい歌声で、声がピカピカ輝いている感じ大体テノールはちょっと単純で行動がおバカというか軽率で悲劇を招く役柄が多い気がしますが(^^;そんな役回りにピッタリでした(皮肉や嫌味ではありません笑)
10月5日が還暦を迎える誕生日とのこと、幕間にホワイエでメッセージを募っていましたが、カーテンコールでは、突然オケと合唱陣がハッピーバースディを演奏しだすサプライズ演出で、本人は大感激、観客も大盛り上がりでした
ロドルフォの妻屋さんはいつもながら安定の出来、テレーザの谷口さん、リーザの伊藤さんら日本人キャストも好演、今日は素晴らしい歌をたっぷり楽しみことができました
指揮やオケの巧拙については正直語る能力はありませんが、ベニーニはゆっくりめのテンポでたっぷりと歌わせていた感じ。歌手陣は気持ちよく歌えたのではないでしょうか
ということで、今日は個人的に非常に満足度の高い公演でしたが、お客さんの反応も良く、カーテンコールはブラーヴォが飛び交い大変盛り上がっていました
ただ、残念なのはシーズン開幕で初上演作品、新制作にもかかわらず、平日ソワレということもあってか、お客さんの入りはいまいち2階席S席はガラガラ状態で、全体で6-7割前後の入りでしょうか?公演のクオリティを考えるともったいない話です
余談ですが、(A席で)隣に座っていたイタリア人と思われる壮年のご夫婦が2幕になっていなくなったなあと思っていたら、ちゃっかり前方の空いていたS席に座っておられました
列車の指定席でも向こうの人たちは空いていたら構わず座るんですよね。ま、誰にも迷惑かけていないだろうってな感じですね(^^;
とういことで、まだ4公演残っていますので、次公演の日曜からは満席になることを願いつつ、劇場を後にした次第です。
〇評価:☆☆☆☆★