⚪︎2024年7月20日(土)   二期会/プッチーニ「蝶々夫人」(Madama Butterfly)  

於:東京文化会館大ホール 全3幕 日本語及び英語字幕付き原語(イタリア語)上演

「蝶々夫人」に関しては、いずれもアスミク・グリゴリアンがタイトル・ロールを演じて評判となったMETライブ・ビューイングROHイン・シネマの映像が記憶に新しいところ
彼女の絶唱もあって、個人的には、プッチーニのオペラの中でのお気に入りが「トスカ」から「蝶々夫人」になりつつあります😅が、実はフルの実演舞台を生で見るのは今回が初めてそれまではピアノ伴奏による抜粋版や映像のみでの鑑賞でした💦
ということで、満を持してのナマ“蝶々夫人“、二期会と海外の劇場との共同制作(の再演)のようですが、キャストは全て日本人、演出はミュージカルで知られた宮本亜門、衣装は数年前に亡くなった高田賢三ということで、果たしてどんな「蝶々夫人」となっているのか、少なくともヘンテコな“日本“を見せられることはないだろうと思いつつ、行ってまいりました


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⚪︎キャスト等:
指揮 ダン・エッティンガー(Dan Ettinger)
演出 宮本亜門
衣装 高田賢三

蝶々夫人(S) 大村博美
ピンカートン(T) 城宏憲
シャープレス(Br) 今井俊輔
スズキ(Ms) 花房英里子
ゴロー(T) 近藤圭
ヤマドリ(T) 杉浦隆太
ボンゾ(B) 金子宏
ケート(Ms) 杉山由紀
神官(Br)  大井哲也

子ども(黙役) 大塚稜久
青年(黙役) Chion
合唱 二期会合唱団
管弦楽 東京フィルハーモニー合唱団

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⚪︎感想:
うーん、ひとことで言って演出が感心しませんでした💦

(以下ネタバレ注意)



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まず幕が上がると、病室らしきものが現れ、白衣の医師、着物姿の老女、洋装の中年女性がベッドに横たわる白髪の高齢の男性を見守っている模様。そのまま音楽なして黙劇が進行し、臨終の近い高齢男性が、病室に駆け込んできた息子と思しき青年に、今際の言葉?をかけ、さらに手紙のようなものを渡すと、それを読んだ青年は驚愕の表情を浮かべ、そこから音楽が始まり、以降はお馴染みのストーリーが展開して行きます。

実は青年は、ケートとともに引き取った蝶々さんとの間にできた息子が成長した姿で、ピンカートンが死ぬ間際に、何が起こったか、家族の秘密をその息子に告げるという、元々の台本にはないお話をくっつけたもの。

さらに、手紙を読んだ青年は、過去に起こったことを頭中で再現しているのか、それとも時空を超えて過去に飛んだのかわかりませんが、蝶々夫人のお輿入れから自死までの場面の全てに臨場し、目撃することになります。

ということでこの青年(黙役)は、最初から最後まで蝶々夫人以上に文字どおりの出ずっぱり💦それだけでも嫌でも注意が行ってしまうのですが、舞台をちょろちょろとあちこち走り回って、誰それのところへと駆け寄ったり、慨嘆したり憤ったりと忙しいので、見ている方としては気が散ってしょうがありませんし、バタバタと足音もするので音楽の邪魔にもなっていました
(幕間でも、他のお客さんからの「あれうざいわよね」という声が聞こえました💦頑張って演じている青年役の方には申し訳ありませんが)

気になったのはそれだけでなく、例えば、ピンカートンの人間性に少し共感を持たせようという趣旨かわかりませんが、彼が蝶々夫人の元を去った後、従軍の際負傷したという語り(テロップ)を入れて、再度日本に現れた際は松葉杖をつかせるという演出、さらには、蝶々夫人が自死した後、再び病室のシーンが現れ、ピンカートンが死の淵から蝶々さんの名前を呼んでいるかのようなシーン、加えて幕が降りる直前、婚礼衣装姿の蝶々夫人と軍服姿の若きピンカートンが仲良く腕を組んで去っていく後ろ姿が描かれるという、謎のハッピーエンドシーン😅で終幕となりました💦
これは何だったのでしょう、青年(息子)の錯乱だったのか、願望だったのか、はたまた神の救済だったのか....。

「蝶々夫人」は確かに救いのないお話ですが、救いのない話であること、そう感じさせるお話しであることに意味があると思うのですが…。

正直、宮本亜門の演出は、ミュージカルでいくつか見ていますが、どれも感心したことはありません
いつも言うことですが、傑作は(基本、本も音楽も良いはずなので)下手にいじる必要はないので、普通にやってほしいです

というか、いじって面白くなる(良くなる)ケースは個人的にはかなり稀なように思います。

舞台美術に関しては、ほぼ納得のいくもので、プロジェクトマッピングを使った背景なども美しく見応えのあるもの不満と言えば、蝶々さんの家はせいぜい3メートル四方の正方形のミニマムな作りでしたが、病室など必要ないので、そちらにもう少しお金を使って、大きめのものにして欲しかったかなという程度でした。

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キャストに関しては、皆さん頑張っていたと思います。
タイトル・ロールの大村博美さんに関しては、フォルテ部分では個人的にはもう少し突き抜けた強さが欲しかったですが、さすが世界各地で蝶々夫人を演じてきただけに安定の出来でしたし、何より演技が素晴らしかったです個人的には「ある晴れた日に」より、「坊やの母さんは」と「さよなら坊や」の方が好みなのですが、今日もその2箇所はグッときました

対するピンカートンの城宏憲氏、相変わらずのイケメンボイスですが、こちらもやや線が細い感じ。ただ、善人性を強調する?演出の意図からするとこれぐらいで丁度いいのかも😅
ピンカートンは(少なくとも1幕は)もっと自信たっぷり、余裕たっぷりのイケすかない好男子として存在して欲しいのですが、演出もあってか、城ピンカートンはやや神経質で、シャープレスの忠告にもイラつく感じ。加えて、城さん、腕や体の使い方など演技はあまりお上手ではなく(あくまで個人的見解です😅)、全体としてちょっとバタバタというかワチャワチャした感じでした💦

脇を固めるスズキの花房さんとシャープレスの今井さんは、二人とも声がよく通っていて、とても良かったと思いますカーテンコールでは主役の二人に勝るとも劣らぬ声援が飛んでいました

ということで、元々の音楽が素晴らしいだけに、疑問符だらけの演出を除けば大きな不満はなく(ヘンテコな日本を見せられることもなく😅)、そこそこ楽しめました来シーズンの新国立でも「蝶々夫人」がかかるらしい(タイトルロールは小林厚子さん)ので、演出面も含め、どんな舞台になっているのか楽しみにしたいと思います

⚪︎評価:☆☆☆★ 

⚪︎2024年7月13日(土)ソワレ(18:00-)   

ザ・ミュージカル「ムーラン・ルージュ」   於 : 帝国劇場

2019年にブロードウェイで上演され、2020年のトニー賞では作品賞、主演男優賞など10部門を獲得したメガヒットミュージカル昨年帝劇でも上演され、こちらも評判を呼び大ヒットしっかりチケットを確保して待ち構えていたら痛恨のコロナ感染やむなくチケットを手放し見れずじまいでした
本年早速の再演ということで、リベンジすべしと勇んで行ってまいりました
帝劇はかなり久しぶり、調べてみたら2年前に観た「ミス・サイゴン」以来でした

プリンシパルキャストは昨年同様のダブルキャスト、本当は井上芳雄のクリスチャンで見たかったのですが当然の如く早々と売り切れ若手のホープ甲斐翔真くんで、サティーンは望海風斗さんとの間で迷いましたが、とりあえずまずは歌姫、平原綾香さんを選択しての鑑賞となりました

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IMG_8280⚪︎キャスト:サティーン 平原綾香
クリスチャン 甲斐翔真
ジドラー 松村雄基
ロートレック 上川一哉
モンロース公爵 伊礼彼方
サンティアゴ 中河内雅貴
ニニ 藤森蓮華
ラ・ショコラ 菅谷真理恵
アラビア 磯部杏莉
ベイビードール 大音智海


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⚪︎感想:
いやー中々良かったです 
ニコール・キッドマンとユアン・マクレガーによる映画版もBlu-rayで見ており、よくできたミューカルであることはわかっていましたが、舞台版も素晴らしかったと思います
映画版のストーリーは忘れてしまいましたが💦舞台版では時折青年クリスチャンのモノローグが挟まれ、彼のサティーンへの純愛物語であると同時に、彼自身の成長の物語としての側面がより強調されている気がしました。
音楽面でも、当然ながら映画版よりたくさんの曲が使われており(70曲とか)、シグニチャー・ソングの「ユア・ソング」はもちろん、比較的新しめのシーアの「シャンデリア」とかレディ・ガガの「バッド・ロマンス」なども印象に残りました
全体のテンポも良く、中弛みのない展開、休憩時間を含めて約3時間があっという間でした

しかし、なんと言っても売りは豪華は舞台美術でしょうか赤を基本にしド派手な舞台の脇に大きな風車と象の模型が置かれ、照明も赤を基調に冒頭から妖しげなムードを醸し出し、観客をキャバレー「ムーラン・ルージュ」の内部に誘い込む感じ。しかしシーンが変われば、一転してパリの街並みや役者が稽古をするスタジオに転換するなど、中々作り込んでいました

キャストに関しては、まずサティーンの平原さんはもはや貫禄としか言いようのない抜群の存在感とにかく鼻腔共鳴の使い方が尋常ではなく、恐ろしく声が響くのですが時々やりすぎて何を歌っているか歌詞がわからない😅超個性的な唱法なのですが上手いのは確かです💦
そして結構大胆な衣装とダンスシーンもそれなりにあるのですが、見事にこなしておられました。今やミュージカル界の大女優ですね

クリスチャンの甲斐くんは予想以上に歌えていてびっくり😅歌は井上芳雄には一歩譲るかもしれませんが、若さと8頭身(9頭身?)のイケメンぶりでは勝っている感じ(芳雄のファンの方、ごめんなさい)ダンスシーンも軽々とこなしており、海宝くんに続くミュージカル界のプリンス登場という感じ今後どんどん良い役が回ってくるでしょう

モンロース公爵の伊礼彼方さんは、傲岸で自信満々のイケすかない男性役がピッタリ😅「ミス・サイゴン」でのエンジニアといい、朝ドラ「らんまん」での新興貴族役といい、イケメンで歌もお上手なのにこの方は一癖も二癖もある役が似合いますね(褒めてます💦)。

その他のプリンシパル、アンサンブルの方も(ダンスを含め)皆お上手でしたが、今日一番感心したのは、ロートレックを演じた元劇団四季の上川一哉くん。滑舌も発声もよく、セリフも歌詞も一番良く内容がわかりましたさすが母音法で鍛えられた元四季組です歌のソロもあり結構重要な役回りを立派に務めており、これも将来が楽しみです

1点だけ残念だったのは、本演目のシグニチャー・ソングのエルトン・ジョンの「ユア・ソング」の歌詞でしょうか💦あの有名な、I hope you don't mind, I hope you don't mindの繰り返しのところ、なんと歌っていたか忘れましたが😅どうもしっくりこなかったです💦この歌、松任谷由美が訳詞を提供したらしいのですが、原曲のリズムとか節回しを壊さないのは至難の業、いっそ原語で歌って欲しかったというのが正直なところです💦それぐらい、このミュージカルでこの歌は重要な位置付けにあると思っているので(というかこの一曲でこのお話が成り立っている)メラメラ

まあそれはともかく、非常に出来の良いミュージカル、良質のエンターテインメントに仕上がっているのは確かで、文字通り満員御礼のお客さんのノリの良さは特筆もの。かなりのリピーターがいることが推測されます
最近オペラづいていて久しぶりにミュージカルらしいミュージカルを見た気がしますが、オペラ並みの料金レベル(S席18,500円)でもこれだけお客さんを呼べるのですから、もう少しオペラ界も工夫や努力が必要かもと思いながら劇場を後にした次第です。

⚪︎評価:☆☆☆☆
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⚪︎2024年7月6日(土) マチネ(14:00-)  於:新国立劇場オペラ・パレス
プッチーニ「トスカ(Tosca) 」(全3幕イタリア語上演/日本語英語字幕付き)


新国立劇場のオペラ、2023-2024年シーズンを締めくくるのはプッチーニの人気オペラ「トスカ」です
新国立劇場では9回目の公演、最近では3年ごとの再演となっていますが、演出は2000年の初演時からアントネッロ・マダウ=ディアツによるプロダクションが変わらす用いられているようで、まさに定番化しています。
個人的にも好きな演目で、実演では演奏会形式や抜粋版を含めて5回目、中でも昨年9月のローマ歌劇場来日公演でのソニア・ヨンチェヴァ、ヴィットリオ・グリゴーロの熱演が印象的でした

本演目でもっとも際立ったキャラクターのスカルピアを演じる予定だったニカラズ・ラグヴィラーヴァが健康上の理由により降板ということでちょっと残念ですが、代役の青山貴さんも中々の実力者のようですし、トスカに去年3月、東京春祭でムーティが振った「仮面舞踏会」でアメーリアを演じたジョイス・エル=コーリーがキャスティングされているということで、注目して観に行ってまいりました

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⚪︎キャスト等:
指揮 マウリツィオ・ベニーニ(Maurizio Benini)
演出 アントネッロ・マダウ=ディアツ(Antonello Madau-Diaz)

トスカ(S) ジョイス・エル=コーリー(Joyce El-Khoury)
カヴァラドッシ(T) テオドール・イリンカイ(Teodor Ilincai)
スカルピア(Br) 青山貴
アンジェロッティ(B) 妻屋秀和
スポレッタ(T) 糸賀修平
シャルローネ(B) 大塚博章
堂守(B.Br) 志村文彦
看守(B.Br) 龍進一郎
羊飼い(S) 前川依子

合唱指揮 三澤洋史
合唱 新国立劇場合唱団
児童合唱 TOKYO FM少年合唱団
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団


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⚪︎感想:
うーん、期待値が高かっただけに、微妙なところはありました💦

演出はさすが定番になっているだけに、気を衒ったところのない、違和感のない舞台設定、美術、衣装で、1幕のサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会や3幕のサンタンジェロ城なども結構手が込んでいましたし、 19c初期のイタリア(知りませんが😅)っぽい感じが良く出たように思います。
なので、安心して芝居に没頭できました

肝心のキャストですが、まずタイトル・ロールのジョイス・エル=コーリー、上述の「仮面舞踏会」のアメーリアで聞いたはずなのですが、1幕からあれ?こんな声だったっけ?という印象😅声質がやや硬く、ビブラートの振幅は大きめ、声は前に飛んではいるのですが、響きが浅めで高音になるとちょっとシャカシャカした感じに聞こえてしまい、もちろん下手ではないのですが、まあ要するに好みの声ではありませんでした😅
と思って上記「仮面舞踏会」での自分のブログを読み返すと「好みの声ではない」と書いてありました演技面でも少しあっさり目で、スカルピアを刺殺する場面やラスト、カヴァラドッシが死んでいることに気づいて慟哭するところは、もう少し感情を爆発させて欲しかったところ。容姿、スタイル面ではトスカのイメージがしっくりくるだけに勿体無いところです

対するカヴァラドッシのイリンカイは、まあまあの出来😅圧倒的声量という訳ではないですが、役柄に相応しい力強いスピント系のテノールでしたが、もう少し高音が突き抜けた感じがあると良かったかなという印象です。
スカルピアの青山貴さんは、歌唱は全く問題なく期待以上に良かったと思いますが、スカルピアとしては真面目でやや線が細く、アクと押し出しの点で、少し迫力不足かなという感じでも頑張っていたと思います
アンジェロッティの妻屋さんは相変わらずお上手なのですが、ボロボロの衣装とあのモジャモジャ頭のせいもあってか、青年革命家というよりは浮浪者に見えてしまいました

ということでケチばかりつけてしまいましたが😅元々のお話や音楽がよく出来ていて、演出も良いのでそこそこ楽しめました。ベニーニと東京フィルの演奏も良かったと思います。今日の東京は夕方から激しい雷雨、3幕中、その雷音が劇場内にも響いてきて、不思議な効果音となっていたのがご愛嬌と言ったところ💦
今日は初日でしたが、人気演目だけに、客入りはまずまず残り4公演ありますが、今日の出来を踏まえて、果たしてこの後の入りはどうなるか気になるところです

⚪︎評価:☆☆☆★ 

⚪︎2024年6月29日(土) マチネ(15:00-)  英国ロイヤル・オペラ2024年来日公演
プッチーニ「トゥーランドット(Turandot)」 於:東京文化会館


英国ロイヤルオペラの来日公演、先日横浜で観劇した「リゴレット」とともにパッパーノが日本に持ち込んだ自信作は「トゥーランドット」ちょうど1年前にROHのシネマシーズン2022/2023で観た「トゥーランドット」を日本で再演してくれる形で、同公演は映像で見ても非常に満足度の高い公演だっただけに、これは見逃す訳にはいくまいと、再びの高額チケットに歯を食いしばりながら😅馳せ参じた次第

タイトルロールが予定されていたソンドラ・ラドヴァノフスキーが病気降板というのはいかにも残念ですが、リューには上述のシネマ版でも同役を演じていた新星マサバネ・セシリア・ラングワナシャが、またカラフ役には今年4月に観たMET LIVE  VIEWING「運命の力」で ドン・アルヴァーロを好演していたブライアン・ジェイドがキャスティングされているということで、注目の公演です


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⚪︎キャスト等:
指揮 アントニオ・パッパーノ(Antonio Pappano)
演出 アンドレイ・セルバン(Andrei Serbian)
再演演出 ジャック・ファーネス(Jack Furness)

トゥーランドット(S) エヴァ・プウォンカ(Eva Plonka)
カラフ(T) ブライアン・ジェイド(Brian Jagde)
リュー(S) マサバネ・セシリア・ラングワナシャ(Masabane Cecilia Rangwanasha)
ディムール(B) ジョン・レリエ(John Relyea)
ピン(Br) ハンソン・ユ(Hansung Yoo)
パン(T) アレッド・ホール(Aled Hall)
ポン(T) マイケル・ギブソン(Michael Gibson)
皇帝アルトゥム(T) アレクサンダー・クラヴェッツ(Alexander Kravets)
官吏(Br) ブレイズ・マラバ(Blaise Malaba)

ロイヤル・オペラ合唱団
ロイヤル・オペラハウス管弦楽団
NHK児童合唱団


⚪︎感想:
いやー、期待どおり素晴らしかっったです
演出面は、前述のとおり英国ロイヤルオペラハウス(ROH)シネマの2022/2023シーズンの公演と同じと思われますので、詳細はそのとき書いたブログに譲りますが😅細かいところはともかく、基本は東洋の皇帝専制の国家を表現するべく、衣装や舞台装置、太極拳風のダンサーの振り付けなど、雰囲気は十分再現できていたと思います

そうした舞台効果をより上げるためか、1幕と2幕は幕が開いた状態、演者がセットされた状態から音楽がスタート、そのこともあってか通常のように拍手での指揮者のお出迎えはなく、いきなり音楽が始まりました(3幕はちゃんとピット奥から指揮者が出てきて出迎えの拍手あり)。

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歌手陣のパフォーマンスについてですが、まずタイトル・ロールのエヴァ・プウォンカ、若干細めの声ながらオケの大音量にも負けない強靭で良く透る声、2幕の強烈なアリアから最後まで声量を保って素晴らしい出来だったと思います
冒頭ロイヤルオペラのお偉いさんがソンドラ・ラドヴァノフスキーの降板について謝罪の挨拶をした際、エヴァ・プウォンカが来シーズンROHでトゥーランドットを演じる予定であることを明かしていましたが、納得です

そしてカラフのブライアン・ジェイド、バリトン出身らしい非常に力強いテノールで声量も十分、こちらも最後まで頑張っていましたし、押し出しの良さもあって王子らしいカラフでした1幕のアリア、そして3幕の「誰も寝てはならぬ」は迫力がありました
脇ではティムールのジョン・レリエも良い出来でしたが、今日特筆すべきはリューのマサバネ・セシリア・ラングワナシャでしょうか。シネマ版でも感じましたが、黒人特有?の響きの深い密度の高い声ながらも、リリカルな表現も自在で、1幕3幕のアリアはどれも見事で胸に迫るものがありました

ピン、パン、ポンの3大臣、皇帝アルトゥム、官吏の5人はシネマ版と同キャストでしたが、やっぱりピンが素晴らしかったと思います。パン、ポンも悪くなかったのですが、飛んだり跳ねたり走り回ったりしながらの中での歌唱は結構大変そうでした😅
皇帝アルトゥムのアレクサンダー・クラヴェッツ、作曲家の意図?どおり敢えて弱々しく歌っていましたが、しっかり遠鳴りのする声で5階席まで問題なく聞こえてくるのはさすがです


先日シネマ版で観たアスミク・グリゴリアンの「蝶々夫人」もそうでしたが、ROHは比較的保守的というか正統的な演出を好むようで、しかも出来が良かった演出は、その演出を徹底的に磨いて長く上演するというポリシーなのか、本演出も1984年から続いているものとのこと。個人的には(少なくとも演出面では)これがトゥーランドットの決定版、デファクトになりそうな公演でした

その一方で今日思ったのは、3幕でリューが自死するシーン以降、フランコ・アルファーノが補作した後半部分ですが、同じような曲想の繰り返しで変化に乏しくあまり面白くないなあ、ということです😅
正直、かなり眠気が襲ってきました💦
逆に2幕までの緊張感や管弦楽の斬新さは非常に聞き応えがあり、当たり前ですがクォリティの高さを感じます

仕方のないところですが、プッチーニが完成させていたらどんな風になっていたのか、冒涜的かもしれませんが、将来AIにでも予想させて作曲させてみたらと夢想してしまいました

ということで英国ロイヤルオペラの来日公演、先日のリゴレット同様、今日も非常に満足の行く公演でしたが、場所の利があるのか、プロダクションの出来が優れているためか、演目の知名度、派手さの違いか、キャパの違い(神奈川県民ホール約2500、東京文化会館約2300)か、今日の東京文化会館は、空席の目立った神奈川県民ホールと打って変わってほぼ満席の状態
残る公演は、明日はNHKホールで「リゴレット」、7月2日は東京文化会館で「トゥーランドット」のそれぞれ最終公演がありますが、客入りが気になるところではあります💦

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⚪︎評価:☆☆☆☆★ 

⚪︎2024年6月25日(火)ソワレ(19:00-)
ヤニック・ネゼ=セガン指揮 METオーケストラ来日公演 

 於:サントリー・ホール

世界3大歌劇場の一つ、中でも最高峰とされるNYメトロポリタン歌劇場オケの来日公演、13年ぶりだそうですいつもMETライブ・ビューイングで目にしているカリスマ的な音楽監督、ヤニック・ネゼ=セガンの姿を一目見ようかと、これまた先日の英国ロイヤル・オペラの来日公演に劣らぬ高額チケットですが、清水の舞台から飛び降りるつもりで購入(比較的お安い席はすぐ売り切れて、残っていたのはB席でまたも32,000円!)😅

公演は、東京公演と兵庫公演の計5回、AプロとBプロがありますが、Bプロに出演するリセット・オロペサについては昨年のローマ歌劇場来日時にヴィオレッタで観ているの対し、Aプロのエリーナ・ガランチャは未見だったことなどから、Aプロを選択
Aプロでは演奏会形式で、珍しい演目のバルトークの歌劇「青ひげ公の城」を演奏会形式でやってくれるようですが、知名度は低いと思われる💦ので、どれくらい盛り上がるか期待半分、不安半分で行って参りました

IMG_8239⚪︎キャスト等:
指揮 ヤニック・ネゼ=セガン(Yanick Neze Seguin)

ソリスト
 メゾ・ソプラノ: エリーナ・がランチャ(Elina Garanca)
 バス・バリトン: クリスチャン・ヴァン・ホーン(Christian Van Horn)

演奏 MET オーケストラ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セットリスト:
1.ワーグナー/歌劇「さまよえるオランダ人」より序曲
2.ドビュッシー/歌劇「ペレアスとメリザンド」組曲(ラインスドルフ編)
休憩
3.バルトーク/歌劇「青ひげ公の城」(演奏会形式、日本語字幕)
  ユディット(S)    エリーナ・ガランチャ(Elina Garanca)
  青ひげ公(Br)   クリスチャン・ヴァン・ホーン(Christian Van Horn)

IMG_8240⚪︎感想:
とても良かったと思います
正直、オケの優劣はあまり分かっていませんが😅サントリーホールの音響の良さも相俟って、一音一音の音自体がとても美しく、うっとりしました
特に前半の「ペレアスとメリザンド」は、元々のオーケストレーションの賜物でしょうが、音の濁りがなく色彩豊かな、まるで筆触分割の印象派の絵画を鑑賞しているような感覚にとらわれました

そして、お目当ての「青ひげ公の城」が期待どおり素晴らしかったです
ガランチャは深い響きの良く透る声、対するヴァン・ホーンも中々の美声でお互い声量も十分、1幕ものとはいえ結構な難曲だと思いますが、時折譜面を見ながらも、基本的には二人芝居をこなしながらの歌唱で、二人とも見事な出来ばえだったと思います

今回の演奏会に備え、本演目をDVD(1981ショルティ/ロンドン・フィル版)で見たときの印象では、なんて暗くて地味な演目だろうと思っていましが、暗いのはともかく😅終盤のオルガンも使っての管弦楽の盛り上がりなど、決して地味ではないなと思い返しました
滅多に上演される演目ではないので、初めて聴く人も多かったと思いますが、あまりにおどろおどろしい展開に嫌気がさしたか、途中で退席するお客さんが少なくとも2人はいらっしゃいました💦

ヤニック・ネゼ=セガンは小柄な体をフルに使って身振り手振りの大きな指揮、オケもダイナミックレンジの大きなサウンドで、今日のオール歌劇プロは自家薬籠中の作品というところでしょうか、さすが聞き応えがありました

終演後のカーテンコールでは歓声が飛ぶなどお客さんの反応も良く、拍手が中々鳴り止まなかったのですが、最後はヤニックがこういう大曲の後ではアンコールは難しいが明日もやるので来てね、みたいなことを言って終了、オケも退場となりました😅

ということで大変満足した公演だったのですが、気になるのはやはり空席1階席平場でもちらほら空席が見えましたし、2階両翼はかなり空いていました
先日の英国ロイヤルオペラより安いとは言え、演奏会形式なのにS席40,000円!A席35,000円!
今回私が購入したB席32,000円は座席数が少なく、そしてC席以下(P席側)は字幕が見えにくい、若しくは見えない席💦売れ残るのも無理からぬところでしょうか
鳴物入りでの招聘公演ですし、演奏内容も良かったので、残る水曜日のBプロ、木曜日のAプロは是非満席になって欲しいところです

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⚪︎評価:☆☆☆☆★
 

⚪︎2024年6月23日(日) 10:30-  MET LIVE VIEWING 2023-2024 

プッチーニ「蝶々夫人」 於:新宿ピカデリー(上演日:2023年5月11日13:00-)

つい先日、ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)で同じアスミク・グリゴリアンによる「蝶々夫人」の映像を見たばかりですが、今回は彼女の記念すべきMET デビューROHのパフォーマンスが素晴らしかっただけに、METではどんな演出がされているのか(本公演では2006/2007年の演出が踏襲されている模様)、美術はどうなのかなど、J.テテルマン演じるピンカートンとのケミストリーはどうなのかなど、否が応にも期待が高まるところです

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⚪︎キャスト等:
指揮:シャン・ジャン(Xian Zhang)
演出:アンソニー・ミンゲラ(Anthony Minghella)

蝶々夫人(S) アスミク・グリゴリアン(Asmik Grigorian)
ピンカートン(T) ジョナサン・テテルマン(Jonathan Tetelman)
スズキ(Ms) エリザベス・ドゥショング(Elizabeth DeShong)
シャープレス(Br) ルーカス・ミーチェム(Lucas Meacham)







0_IMG_0538⚪︎感想:
こちらも中々素晴らしかったです!

まず演出ですが、漆を塗ったような鏡面状の舞台に、可動式の障子や襖を置き、それを黒子が手動で動かし、場面を転換するというのが基本。舞台奥は長方形のスクリーン状に青く長崎の海?空?を切り取ったような背景が置かれ、時にその位置が迫り上がって、舞台の中央部分に丘が出来て、舞台奥から蝶々さん(ピンカートン)の家がある丘まで人々が登ってくる様子が頭の部分から徐々に見えてくる趣向。

さらに1幕ラストの愛の二重唱のシーンでは、提灯を持った黒子が大勢登場し、幻想的なシーンを演出、2幕花の二重唱のシーンでも桜?の花びらのカーテン状の幕が天井から降りてくるなど非常に美しい仕掛けが満載衣装も、冒頭の蝶々さんが仲間の花魁たち?と登場するシーンでは、チャイナドレスと振袖と西洋風のドレスをミックスしたようなものに、原色が多様されたド派手なデザインだったので少々奇異に感じましたが、視覚的には非常に楽しめました😅

また、蝶々夫人とピンカートンの息子や料理人、下男も文楽人形を使って黒子が操作したり、日本舞踊を取り入れた踊りや振り付け、伏目気味、上目遣いの所作、お辞儀の多様など、日本文化や伝統のエッセンスを取り入れた演出も中々効果的だったと思います。

演出は「イングリッシュ・ペイシャント」で名高い映画監督の故アンソニー・ミンゲラということですが、2006-2007年の演出が今回も踏襲されたのも納得でした。

さて肝心のキャストですが、アスミク・グリゴリアンの蝶々さんは、本人の意識やアプローチの仕方にROH版と大きな差はないと思いますが、より可憐で少女の部分が強調されていたような気もします。
歌唱に関しては相変わらずの繊細でドラマティコとしてはやや細めの質ながら強靭さ、凝縮されたパワーを感じるもので、「ある晴れた日に」はもちろんのこと「坊やの母さんは」、「さよなら坊や」などハンカチ必須の名唱、泣けます😅

対するピンカートンを演じたジョナサン・テテルマン、ここはアメリカなのでROH版と違ってカーテンコール時にブーイングはなし(笑)それはともかく、ROH版のジョシュア・ゲレーロよりは誠実そうな長身イケメンな外観😅と3幕での大いなる反省ぶり?が相俟って、そこまで悪い奴じゃなかったかも、と思わせる演技。バリトン出身ということもあってか歌唱は非常にパワフルで、アスミクとのケミストリーも悪くなかったと思います。シャープレスのルーカス・ミーチェムはROH版のラウリ・ヴァサールよりは強めの性格という感じ。METの劇場が大きいので、この男声陣二人とも結構声を張っている感じはしました。

ということでこれまた非常に満足のいく公演で、終演時のお客さんの反応も上々アスミク・グリゴリアンのMETデビューは成功裡に済んだということかと思います本人が一番ほっとしたことでしょう😅
これからMETでも出演機会が増えるのではと思いますが、映像の途中紹介のあった来シーズン(2024-2025)のLIVE VIEWINGの中では出番なしまあ、その次のシーズンくらいから出てくれるものと期待しています。その来シーズンのLIVE VIEWINGは8本の公演が対象とか。今までは9本だったのですが、これがMETが抱える財政問題と関係がないことを祈っています。


⚪︎評価:☆☆☆☆★ 

⚪︎2024年6月22日(土) マチネ(15:00-) 英国ロイヤル・オペラ 2024年日本公演
 ヴェルディ「リゴレット(RIGOLETTO)」  於:神奈川県民ホール


巨匠アントニオ・パッパーノの任期最後を飾るアジア・ツアーの一環となる英国ロイヤルオペラハウスの来日公演、演目はヴェルディの人気作品「リゴレット」とプッチーニの大作「トゥーランドット」。「リゴレット」を観るのは昨年5月フロンターリが新国立でタイトルロールを演じた公演以来。もともと好きな演目であることもさることながら、なんと言っても注目は、今やMETの常連、世界の歌劇場で引っ張りだこの歌姫、ネイディーン・シエラの初来日

お引越し公演ということに加えて円安も相まって馬鹿高い設定のチケット代をものともせず(実際は大いに悩みながら😅)参戦を決定

神奈川県民ホールとNHKホールで2回ずつの公演日程でしたが、馬鹿でかすぎるホールのNHKは好きになれず、ちょっと遠いですがこちらを選択して横浜は山下町まで遠征?に行って参りました

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METライブビューイングでは、これまで「椿姫」と「ロミオとジュリエット」でネイディーン・シエラの歌声に陶酔させられてきましたが😅生の舞台ではどんな風に感じるのか、注目です

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⚪︎キャスト等:
指揮 アントニオ・パッパーノ(Antonio Pappano)
演出 オリヴァー・ミアーズ(Oliver Mears)

リゴレット(Br) エティエンヌ・デュピュイ(Etienne Dupuis)
ジルダ(S) ネイディーン・シエラ(Nadine Sierra)
マントヴァ公爵(T) ハヴィエル・カマレナ(Javier Camarena)
スパラフチーレ(B) アレクサンデル・コペツィ(Alexander Kopeczi)
マッダレーナ(Ms) アンヌ・マリー・スタンリー(Anne Marie Stanley)
モンテローネ伯爵(B) エリック・グリーン(Eric Greene)
ジョヴァンナ(Ms) ヴィーナ・アカマ=マキア(Veena Akama-Maika)
マルッロ(Br) ヨーゼフ・ジョンミン・アン(Josef Jeongmeen Ahn)


ロイヤル・オペラ合唱団
ロイヤル・オペラハウス管弦楽団

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⚪︎感想:
とても良かったと思います
とにかく主役の二人、リゴレットとジルダが素晴らしかったです

まずは初めて訪れた神奈川県民ホールですが、定員2490名余とNHKホールほどではないものの、かなりの規模。作りはNHKホールを模したということでコンサートホール型、やっぱりちょっと空間が広すぎて、音響的にはどうかなという感じがしました💦
築50年近いということで古さも感じましたが、2階以上のロビーからはみなとみらい地区が見下ろせるところはgoodでしたただ、2025年からは無期限休館予定とのことです。





さて、肝心の公演内容ですが、まず演出については、とても美しくわかりやすいものだったと思います冒頭のカラヴァッジョの「聖マタイの殉教」をモチーフにしたという活人画が目を引きましたが、1幕はマントヴァ侯爵の館の広間に飾られた?大きなティッツァーノ風の裸体画(「ウルビーノのヴィーナス」?)が、次のシーンでは中空に設けられたジルダの寝室になり、ジルダが同じようなポーズでベッドに横になり、2幕ではそれがスパラフチーレの宿屋の2階の寝室となってマントヴァ公爵とマッダレーナの情事の場に、3幕ではそれらが取っ払われて、背景が大きな川になる、といったように、シンプルながら良く考えられたセンスのある仕掛けで、中々面白かったです。


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キャストに関しては、まずジルダのネイディーン・シエラが期待どおりでした
とにかくこの人は技術が安定していて、低音から高音までムラなくスムース、滑らかにあのしっとりした声を聴かせてくれるので、本当に耳に心地良かったです響きが良いので微弱音でもしっかり3階席まで聞こえましたし、声量、表現力とも素晴らしく、さすがMETのデビューがこの役だったというのも納得の出来でした彼女の歌はどれも良かったですが、マントヴァ公爵との二重唱「あなたは私の心の太陽だ」のカデンツァ風のラスト、続く「麗しい人の名は」、終幕、息も絶え絶えのジルダとリゴレットの二重唱などが印象に残りました。彼女の場合はそれに加えて演技力も素晴らしいので、美貌と容姿も相まってこういった悲劇のヒロイン役はまさにうってつけです😅

ついでエティエンヌ・デュピュイ、リゴレットにしては若くてハンサムな感じがしましたが😅豊かな声量とやや軽めながら中々の美声で各場面をリードし、見事なタイトル・ロールぶりだったと思います。特に2幕、ララ、ララと登場して以降の「悪魔め、鬼め」、ついでジルダとの二重唱「いつも日曜日に教会で~娘よ、お泣き」のところは父親としての心情が胸に迫りました

マントヴァ公爵のハヴィエル・カマレナは、冒頭は初日ということで少し安全運転気味?あるいは本調子でないのか1幕は少し声の出が良くなかった様な気もしました(高音で少し声が荒れていたような😅)しかし、輝きとツヤのある華やかな声はさすがで、徐々に調子を出し、3幕「女心の歌」など聴かせどころはしっかりと決めてくれました

スパラフチーレのアレクサンデル・コぺツィは不気味さ満点、マッダレーナのアンヌ・マリー・スタンリーも妖しさ十分で良かったと思います。

御大パッパーノの振るロイヤル・オペラハウス管弦楽団は、冒頭こそ金管がやや不安定な気もしましたが、、ケレン味たっぷりの演奏でドラマの盛り上げに多大なる貢献さすがでした

ということで非常に満足のいく公演内容で、終演時カーテンコールでのお客さんの反応も良かったのですが、唯一の問題はやはり高すぎるチケット代でしょうか😅諸経費の上昇に円安が相俟って、主催者側としてもやむを得ない状況だったのは、Webサイト上に理解と支援を求める声明?が載っていることからも良くわかるのですが...
今日、相方と陣取ったのは3階席後方、2番めに安いD席ですがそれでも32,000円!二人で64,000円これに遠征費が加わりますからかなり痛い出費ですしかも3階席のちょっと前方に行くとB席48,000円、A席62,000円!お客さんにコスパが悪いと思われたか、3階席の前方はガラガラでした

1階席、2階席がどうだったかわかりませんが、3階席を見た限りでは、これではチケット代で経費を回収するどころか逆効果では、と思うくらいの状況で、料金そのものだけでなく、SからDのシート割りにも疑問の湧く設定でした

パフォーマンスが良かっただけにもったいない話で、これ以降の公演の客席の入りがやや心配ではあります😟本シリーズ、6月29日には、「トゥーランドット」を東京文化会館で観劇予定ですが、ソンドラ・ラドヴァノスキーの降板もあり、こちらも客入りがどうなるか気になるところですが、足場が横浜よりは良いので、盛り上がることを期待したいと思います


⚪︎評価:☆☆☆☆★

⚪︎2024年6月17日(月)マチネ(14:00-) 音楽座ミュージカル「SUNDAY(サンディ)」 於:草月ホール
原作:アガサ・クリスティー「春にして君を離れ」

個人的に一押しにしているミュージカル・カンパニーである「音楽座ミュージカル」を知ったのが4年前、この演目のストリーム配信がきっかけでした爾来、音楽座の作品に魅了され、毎年1、2回はその公演に足を運んでいますが、期待を裏切られたことは一度もありません

最近では、去年10月末から11月初旬にかけて上演された音楽座ミュージカルの最高傑作(と言っても良いでしょう)「シャボン玉とんだ宇宙までとんだ」を2回観劇、わかっていても泣かされました😅

しかし、本演目「SUNDAY」も、前代表相川レイ子氏が亡くなって、ご子息のタロー氏が代表になっての第一作、新生音楽座ミュージカルに相応しい傑作だと思います
実際、4年前はストリーム鑑賞にも関わらず、感動のあまり、終演後(視聴後)は深い余韻に浸っていた記憶があります💦

ということでやっとその作品を生の舞台で見られるということで、東京楽日ではありますが、相方ともども、お馴染みとなった青山の草月ホールに行って参りました

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⚪︎キャスト:
ジョーン 高野菜々
レスリーほか 森彩香
ブランチほか 井田安寿
ギルビー・乗客の女ほか 清田和美
エイヴラルほか 北村しょう子
バーバラほか 岡崎かのん

ゲッコー 藤重政孝(客演)
ロドニーほか 安中淳也
チャールズほか 新木啓介
トニーほか 泉陸
ウィリアムほか 大須賀勇登
給仕(インド人)ほか 小林啓也
使用人(アラブ人)ほか 五十嵐進

シシャ 酒井紫音、辻凌子、毎原遥、山西菜音


⚪︎感想:
最初に余談ですが、今日K駅からメトロに乗車すると高校生の集団と一緒になったので、これから修学旅行にでも行くのかなと思っていたところ、永田町で同じく乗り換え、これはもしかしてと思っていたら、案の定青山一丁目で降車 都立T高校御一行様も「SUNDAY」観劇でした😅
開演前、休憩時間中はいつもより賑やかな感じでしたが、観劇マナーで特に気になるところもなく、ほっとした次第です

閑話休題。
肝心の公演内容ですが、期待どおり素晴らしかったです

すべての虚飾を剥がされ、真実に向き合うかに見えたジョーンが、土壇場でまた思い直して今までどおりの暮らしや夫との関係を維持していくことを選択する。でも、やっぱり今までとはどこか違うことは自覚しながら生きていく😅
そんなどこか割り切れなさの残る結末ですが、いろんな解釈や受け止め方が出来る、またそれを観客に促すところが音楽座ミュージカルのお芝居の良いところです

 それにしても、公演パンフレットの中でも誰かが言っていましたが、このアガサ・クリスティーのミステリー仕立ての一般小説、全編ジョーンのモノローグで構成されているそうですが(読んだことはありません😅)、これをミュージカルにしようとうい思いつきが凄いです💦

IMG_8217さて、キャストの感想ですが、主役、ジョーンの高野さん、冒頭登場してすぐの「スカダモア家」の伸びやかなソロにうっとりその後も歌い踊りでほぼ出ずっぱりの大活躍2幕終盤は涙を流しながらの熱演でした音楽座ミュージカルの推しも推されぬ看板女優としての実力と貫禄を見せてくれたと思います
高野さんがお上手なのはわかっていたので、実は今日注目していたのは、退団した広田勇二さんに代わってゲッコーを演じた客演の藤森政孝さんです。広田さんが歌も演技も素晴らしかっただけに、ちょっと心配していましたが、どうしてどうして、素晴らしい出来でした
最初キャスティングを知った時は、何故客演なんだろう、安中さんでも小林啓也くんでも行けるんじゃないかと思っていましたが、今日藤森さんの歌と演技を見てわかりました。ゲッコーにはこういうアクが欲しかったんですね💦粘っこく伸びる声は広田さんと通じるものがありますが、藤森さんはもう少しロックよりな歌唱でした

他の皆さんも安定の出来でしたが、清田和美さんの芸達者ぶりはいつ見ても楽しませて貰っています
今日もシシャ、酒場の女、学院長(ギルビー)、乗客の女と千変万化本当に不思議な人です😅
ウィリアムに当初キャスティングされていた上田亮さんは体調不良のために降板とのこと、代役に入った大須賀さんも、そのまた代役に入った泉陸さんもとても良かったと思います。上田さんの早期回復をお祈りしております

ということで今日も素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた音楽座ミュージカル、T高校の生徒たちも大勢がカーテンコールでのスタンディング・オベーションに加わっていましたので、それなりに楽しんだのではないかと思いますこの中で音楽座ミュージカルのファンになったり、これがきっかけでミュージカルを目指そうという人が出てくるといいなあ、と思いながら劇場を後にした次第です

今年は11月末に「ホーム」、来年は「リトル・プリンス」イヤーということらしいので、それも楽しみにしたいと思います

⚪︎評価:☆☆☆☆★ 

⚪︎2024年6月8日(土) (13:30-) ロイヤル・オペラ・ハウス・イン・シネマシーズン 2023-2024

プッチーニ「蝶々夫人(Madama Buttefly)」 於:TOHOシネマズ日本橋
(本作は、2024年3月26日ロイヤル・オペラ・ハウス(コヴェント・ガーデン)での公演を収録した者です) 

前日のミュージカルから一転してオペラの人気演目、「蝶々夫人」の英国ROH(ロイヤルオペラハウス)での公演映像ですROHシネマは去年9月のヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」以来となります。

自分でも意外でしたが、「蝶々夫人」は映像でしかフルバージョンを観たことがなく、実演は過去、ピアノ伴奏によるハイライト版を青山エマさん(“Tragic Trilogy Ⅲ“) と垣岡敦子さん(愛の歌vol.8)で聴いたのみ
それなりに😅感動しましたが、今回は何と言っても注目はアスミク・グリゴリアン

先日の来日公演や、METでのリハーサル映像での圧倒的な歌唱が記憶に新しいところ今世界で引っ張りだこのソプラノの一人ですし、「蝶々夫人」は最も思い入れのある作品ということですので、アスミクがどんなパフォーマンスを見せてくれるか、楽しみに行ってまいりました

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⚪︎キャスト等:
指揮 ケヴィン・ジョン・エデュセイ(Kevin John Edusei)
演出 モッシュ・ライザー(Moshe Leiser)
蝶々夫人(S) アスミク・グリゴリアン(Asmik Grigorian)
ピンカートン(T) ジョシュア・ゲレーロ(Joshua Guerrero)
スズキ(Ms) ホンニ・ウー(Hongni Wu)
シャープレス(Br) ラウリ・ヴァサール(Lauri Vasar)
ゴロー(T) ヤーチュン・ファン(Ya-Chung Huang)
ボンゾ(B) ジェレミー・ホワイト(Jeremy White)
ヤマドリ公爵(T) ヨーゼフ・ジョンミン・アン(Josef Jeongmeen Ahn) 
ケイト・ピンカートン(Ms) ヴェーナ・アカマ=マキア(Veena Akama-Maika)

合唱指揮 ウィリアム・スポールディング(William Spaulding)
ロイヤル・オペラ合唱団
ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団



⚪︎感想:
いやー、凄かったです感動しました
アスミク・グリゴリアン、期待以上の名演だったと思います
METでのインタビューでも言っていましたが、特に“役を作る“のでなく、自分の中にある“誰それ“を出すアプローチということですが、納得の素晴らしいパフォーマンスです
とりわけ、「ある晴れた日に」と「さよなら坊や」の絶唱、心を揺さぶられるとはこういうことを言うのですね、思わず涙してしまいました😅
 彼女の声はリリカルかつ強靭なのですが、どことなく陰と憂いを帯びてもおり、この役はハマり役だと思います

脇?を支える共演陣もまずまずのパフォーマンスで、特にスズキのホンニ・ウー、まだ若そうですが中々の歌い手のように感じました3幕のスズキ、ピンカートン、シャープレスの3重唱は、2幕のスズキとチョーチョーさんの花の二重唱と並ぶ中々の聴きどころでした

面白かったのは、カーテンコールでピンカートンを演じたジョシュア・ゲレーロが登場した瞬間、歓声よりもブーイングが凄まじかったこと😅もちろんこれはジョシュアのパフォーマンスに向けてではなく、ピンカートンへの嫌悪感の表出で、ロンドンの観客も中々やるなあと思って笑ってしまいましたゲレーロも苦笑いしていましたが、彼もアメリカ人なので内心複雑だったかも知れません😅


もう一つ本日の公演で好感が持てたのは、演出です2003年初演から今回で9回目の再演だそうですが、今回、日本人?の考証家も加えて、さらによりauthentic な形にしたということで、日本文化へのリスペクトを感じさせるものでした。背景に山水画風の長崎の海港風景が投影され、それを大きな障子風のスクリーン(場面に応じて上下にスライド)で隔てて室内とし、さらに舞台から床面を一段持ち上げて縁の下を作り、日本風の家屋を再現していました。

また、蝶々さんの衣装もかなりアレンジはされていますが、ほぼ和風と言って良い着物姿で、大きな違和感はなかったです😀時々、とんでもない衣装や美術になっているプロダクションを見受けますが、それだけで見る気が失せてしまうこともありますので😅
このほか、登場人物たち(日本側)の所作もかなり細かく指導されたのだと思いますが、かなり日本人っぽくなっていました。

ということで、非常に満足度の高いこの公演、スクリーン越しにも劇場内の観客の満足ぶりは良く分かりましたし、こちらスクリーンを見ていた映画館内のお客さんたちの反応も上々で、帰りがけ、すごかったねという感嘆の声を多く聞くことが出来ました
さて、こうなると同じくアスミク・グリゴリアンが蝶々夫人を演じるMET版、今月21日から上映開始となりますが、果たしてこのロイヤル・オペラ・ハウス版、自分の中ではこの演目のデファクトになってしまいましたが😅、これを超えられるかに俄然注目です
現在、世界一のレベルの歌劇場と言われるMETですので、期待を裏切られることはないと思います個人的にはアスミク・グリゴリアンの魅力を引き出してくれれば、それで十分なのですが😅いずれにせよ楽しみにしたいと思います

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⚪︎評価:☆☆☆☆☆

⚪︎2024年6月7日(金) マチネ(13:30-)   劇団四季「ゴースト&レディ」 

 於 : 四季劇場「秋」

ミュージカルは4月に観た「VIOLET」以来、劇団四季の演目に関してはなんと1月の「ウィキッド」以来となります
四季の演目も観たいのはやまやまなのですが、オペラ観劇で手一杯の状況💦とは言うものの、日本発のアニメや漫画に題材を取った四季オリジナルのミュージカルとして「バケモノの子」に続く意欲作、ということで、見逃すわけには行きません

ヒロインのフロー(フローレンス・ナイチンゲール)はダブルキャストで、今日は真瀬はるかさん
上述の「ウィキッド」でのグリンダ役、またUnmaskedでの歌姫ぶりが印象に残っていますが、虚実ないまぜとなったお話とはいうものの、実在の人物であるナイチンゲールをどう演じてくれるか、楽しみに行ってまいりました

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⚪︎キャスト等:
フロー 真瀬はるか
グレイ 金本泰潤
ジョン・ホール軍医長官 野中万寿夫
デオン・ド・ボーモン 宮田愛
アレックス・モートン 寺元健一郎
エイミー 木村奏絵
ウィリアム・ラッセル 長尾哲平
ボブ 菱山亮祐
ほか

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⚪︎感想:
いやー面白かったです
正直ナイチンゲールの生涯についてもあまり知識がなかったものですから、その点からも興味深く感激できました

IMG_8199楽曲も中々粒揃いで、ちょっと説明口調の歌詞が気になるところはありますが、中々キャッチーな曲も多く、何回か観劇すれば口ずさむこともできそうな感じでした

しかし、今日は何と言っても真瀬さんの演技に魅了されました
貴婦人としての毅然とした立ち居振る舞いの中にも負傷兵への愛情と労りの心が伝わってくる、まさにナイチンゲールが憑依した、というかナイチンゲールはこんな人だったんだねと納得させられるような演技でした間違いなく真瀬さんの代表作、あたり役になりそうです

グレイの金本泰潤さん、ジョン・ホール軍医長官の野中さん、エイミーの木村奏絵さんも好演でしたが、宮田愛さん演じるデオン・ド・ボーモンの不気味さは特筆もの😅立ち居振る舞いも美しく、存在感抜群でした
存在感と言えば、鳥原ゆきみさん演じるヴィクトリア女王登場のシーンが、衣装などがリアルに凝っているだけに、逆にコミカルで笑ってしまいました💦あそこは笑っていいシーンだと思うのですが(笑)

2幕終盤からエンディングにかけて、なんとなく想像がついていてもつい涙腺が緩むシーンが続き、結構周囲からも鼻を啜るような音が😅


現に上演中なので比較してはなんなのですが、個人的には「バケモノの子」より楽しめました😅
やっぱりフローレンス・ナイチンゲールの生涯自体が芝居になるというか、物語に一本筋が入った形になるので、芝居になりやすいのでしょうかね四季としても、「バケモノの子」を経て得るものもあったのでしょう。

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今後の四季のオリジナル・ミュージカルへの挑戦がどうなっていくか、ますます楽しみになりましたが、その前にこの「ゴースト&レディ」ダブルキャストのもうお一人、谷原志音さんのフローもぜひ観てみたいですおそらく真瀬さんとはまったく異なるフローになっていることと思います。また、岡村美南さん演じるデオン・ド・ボーモンも見逃せません。
なんとか11月までにもう1度は機会を作ることといたします



⚪︎評価:☆☆☆☆