feel the wind like water


1Q84を読み終わって、思うところはいろいろ。
ただ、読み終わると頭の隅っこで記憶のスイッチが、カタリと、

この本のエピグラフによって。

           ここは見世物の世界
         何から何までつくりもの
       でも私を信じてくれたなら
           すべてが本物になる

そのスイッチで再生されたのは、
ちょうど、7年前、今回と同じくして、そのころにしては
いまさらながらに、海辺のカフカを読み終えたころに出会った次の文章、

        「わたしは物事の知的な側面に目を向けるのは好きなんだが、「知性」という言葉は好かない。
        知性ではどうも無味乾燥で、表現力が弱すぎる。それよりは「信念」のほうがいい。
        ひとが「わかっている」というとき、たいがいはわかっているのではなく、信じているのだね。
        とにかく、人間は美術という営為にたずさわるときのみ、
        人間として、動物を越える能力をそなえた真に自立した個人になれるとわたしは思う。
        美術は空間と時間に支配されない領域へと向かう門のようなものだよ。
        生きるとは、信じること、これがわたしの信念だ。」

それは、マルセル・デュシャンが、テレビで語ったとされる信念。
この信念にふれたとき、理屈ではなく、心にストンと落ちたのを覚えている、
そういうもんなんだ、うん、そうなんだなと。

そして、今となってはまるで、海辺のカフカの次作の予告であったかのように。