「先輩、こっちです」

　佐藤に連れられて、俺は来たくもない人混みの中にいた。

　駅の前のスクランブル交差点、人混みをかき分けて渡る。

　俺はこんな街中は嫌いだった。

　人が多すぎて胸糞悪い気分になる。

　その中で後輩佐藤が指を挿した。

　挿した先はとても有名なショッピングビルだ。

　このショッピングビルは俺達と同じくらいの学生の客が占める。

　だが、周りは女子ばっかで男子のすがたはあまり見ない、そんな女子高校生ばっかの店に佐藤は入っていく。

「ここのピアスが格好良いですし、可愛いんです」

　佐藤は俺のいない間に店を開拓していたらしい。

　ファッションピアスが主な店に入ると俺達は浮いていた。

「先輩、このピアス。格好良いと思いませんか」

　そういいながら、ジッパーの取っ手のデザインのピアスを俺に見せた。

「普通だろ、こんなの」

「えっ、……そうなんですか？でも、ラインストーンが付いてて綺麗でしょう」

　いかにも女子が付けて楽しむピアスを見せてくる佐藤の手からそのピアスを受け取ると、俺はレジに向った。

「えっ！！先輩、選ばずに買うんですか？」

　俺は聞こえないフリをして金を払うと、そのジッパー型のピアスを佐藤に渡した。

「……先輩？」

「やる」

「僕が先輩に選んだピアスなのに、僕がするんですか？」

こんなキラキラしたピアス、俺がしたら気持ち悪いだろ……、その一言も言いたくなくて。

　俺はそのまま出口に向かって歩いた。

　佐藤はついて来なかった。

　そのまま俺はショッピングビルから出て、電車に乗り込み自宅に帰った。

　佐藤が明日あのジッパー型のピアスをしていたら良いのに。

　なんとなく俺は自分のピアスを触った。

続く

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J庭、コミケ98は中止になりました

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イラスト

水城るり様

ピアスと後輩。5