あれからドンヘはトレーニングジムに通い始めた。
元々はドンヘの体力不足を心配したジョンスの勧めだったが、黙々とトレーニングをこなすドンヘの体はみるみる変わっていき、ジム内での小さなボディービルコンテストでは賞を総ナメにするほどだった。
頑張り屋のドンヘに感心したジムのトレーナーの誘いで、ドンヘはそのジムで、早朝から昼過ぎまでアルバイトをすることになった。
また、夕方からはジョンスの店:Blue Worldを手伝っていたので、自然と知り合いも増え、ドンヘの世界は徐々に広がっていった。
…しかしヒョクチェにまつわる人間関係を知るにつれ、ドンヘはモヤモヤとした感情に見舞われることになるのだった。
「超絶男前のアルバイトがいる」という噂はあっという間に広がり、Blue World はかつて無い程の賑わいを見せ、売上上々でジョンスはホクホクとした。が、
「あんな話し下手、続かねーよ」
バーテンダーのヒチョルはあっさりと予言した。
程なく、どんなに気合いを入れてアプローチしても、一向に靡く気配のないドンヘに自尊心を打ち砕かれた女子達は、すっかり自信を失くし、足早に寄り付かなくなっていった。
無理もないだろうとジョンスは思う。元々会話が苦手なのに加え、特にヒョクチェが店にいる時は、ドンヘ目当てで来た女子達にドンヘは一切目を向けない。この時ばかりはジョンスも申し訳なく、気の毒に思うのだった。
大学勤めのヒョクチェは基本スーツだが、恐らく特別な仕立てなのだろう。彼のスラリとした体型と小顔を引き立てて、憎いほど彼に似合っている。また小物の選び方もセンスがあり、ジョンスもいつも楽しみにしている程だ。
健康的で優しい笑顔と、頭の回転の早さが伺える気の効いた会話と気さくさで、ヒョクチェは誰からも好かれている人気者だ。
そして、ドンヘの彼女というか彼氏というか。
この界隈の不動産会社の若社長であるシウォンが親しげにヒョクチェの肩を抱こうものなら、カウンターを拭きながら目を光らせていたドンヘが、もの凄い勢いで彼らの間に割って入り「ハイ、ありがとうございました、閉店です!」と、伝票をシウォンに突き付ける。そんなドンヘを、シウォンは面白そうに抱き締める。嫌がるドンヘ。ケラケラ笑うヒョクチェ…というのが毎回お約束の展開だ。
そんな毎度繰り返される寸劇を見て、テーブル席から「アホか」と聞こえる音量で新聞社勤めのキュヒョンが言う。
その横から、ヒョクチェと同じ大学勤めのリョウクが「クリスマス前に別れろー」と、ニコニコ顔で囃し立てる。
同じテーブルに座るキム先生は、余裕の表情で騒がしい連中を眺めているが、実はそこに加わりたくてきっかけを探しているような、そうでもないようにも見える。
店のドアベルが鳴り「まだいい?」と仕事帰りのシンドンがドアから顔を覗かせた。
「やー!らっしゃい!!」
ジョンスとヒチョルの甲高い声が、店内に響き渡る。
金曜のBlue Worldの夜は、常連客で賑やかに更けていく。
(おしまい)
天使の街は2021.12月に作文しました。
もう3年前!😲
稚拙な文をお読みいただき
ありがとうございました。
