旅立ち | 限界の向こう側へ飛んでいけ!

限界の向こう側へ飛んでいけ!

もうダメだ、そんな限界を超えた時に見えてくるものとは・・・





お昼を食べて、午後の仕事に取り掛かり、ちょうど調子が出てきた頃、うちの人からLINEが入った。

「病院に向かう途中に呼吸が停止した」


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うちのワンコ、2ヶ月前から、ほぼ寝たきりになってしまったけれど、ペースト状にしたフードはよく食べてくれていた。

1年前から徐々に衰えが見えてきたうちのワンコ、一度は6.1kgまで落ちた体重も、7.4kgまで戻り、かかりつけのお医者さんにとても褒められていたんだ。

嬉しかった。

ところが、昨日から食事を飲み込まなくなり、急に活力が消えてしまった。

それで、家人が、午後から病院に連れて行くと言っていたのだ。 


「今、病院に着いた。直ぐに気管挿管して心臓マッサージもした。心臓が動き出した。頑張っている」

そうLINEの続報が入った。

取り掛かっていたのは緊急の仕事にでもなかったので、ボスに話して、早退させてもらう事にした。


「今から病院に向かう」


「心拍数が戻ってきたよ。焦らないできて」

虎ノ門駅から銀座線に飛び乗った。路線案内を確認して到着時間を調べた。

「4時までには着く」

早く動けよ、銀座線。

銀座線から千代田線に乗り換え、更に小田急線に乗り換えて、病院の最寄駅に向かう。

焦っても仕方ない。電車のシートに腰を下ろして、少し開いた車窓から、冷たい青空を見上げた。

17年前、ブリーダーさんから、羽田空港で譲り受けた時もこんな冬の青空だったな。

電車に揺られながら、ワンコがうちに来てからのことを思い出していた。

若い頃はやんちゃだったな。いつから仲良くできるようになったんだか。


LINEの続報が入る。

「また心停止した。ダメかもしれない」



そんなのダメだ。

神様頼む。

まだ行っちゃいけない。

必ず行くから、待ってくれ。

LINEの連絡が途絶えて、不安が募る。

あと、30分で着くのに。。。



僕が、3年前に、大腸癌の手術で2週間入院した時。ワンコは、2階から降りてこない僕を、毎日毎日、ずっと待ってくれていたんだ。

  

だから、待っててくれよ、頼むから行かないでくれ。


携帯が震えた。

「心臓が動き出したよ」

電車の中で泣きそうになった。

最寄駅からタクシーを捕まえて病院に向かった。

ワンメーターが遠い。


病院に着いたとき、ワンコの心臓は動いていた。

家人と息子がワンコに付いていた。

「ご家族が、お父さんが来るから頑張って、ってずっと励ましてたんですよ」

看護師さんが教えてくれた。

ワンコを撫でた。涙が溢れた。

本当に偉いよ。よく頑張ったよ。


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それから、間もなく、静かに眠るように、僕たちに撫でられながら旅立ちました。

こんな事ってあるんだろうか、というくらいに、本当に奇跡だったと思う。


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ここにこんな事を書くのは気が引けたけど、うちのワンコ、何度もこのブログに登場させてきたので、書かせてもらいました。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。






END