●赤い塔

 

なだらかな坂の続く丘の先に小屋が見えた。バイクを止めて見やると、中は伐り出した木材が収納されていて木のいい匂いがする。振り返るとコンクリ打ちっぱなしの公民館が建っていて、尋ねるとK先生夫妻が作業をされていた。奥さんは手芸をされていて、一抱えもあるような大きなヌイグルミをたくさん作っておられた。そこに置かれたベッドの上に6体程並んでいる。ヌイグルミにはオレンジに顔のついたキャラクターのタグがついている。病院にずっと入院している子供達を支援する団体のマークのようだ。

 

K先生と表に出た。見上げるともの凄く高い赤い塔があって空に向ってそびえている。空には鏡があるのか、その塔のそびえた先に塔とその一帯が空に映しだされている。その奇景に驚いて、興奮してしきりにシャッターを切った。丘を見上げると、ゆるい坂の両サイドに住宅街が並んでいる。ここのどれかがK先生ご夫妻の家なのだろうと考えている。

 

K先生が、「ほら」と懐からカメラを取り出した。ソニーのミラーレスのようだが海外製のようだ。ソニーの特徴的なミラーレスの形をしておらずペンタ部のある一眼レフカメラの形をしていた。もさっとしたデザインで、ソニーのシャープさがない。ペンタ部上部にドーム型の露出計がくっついていて、どこにホットシューが付いてるんだろうかと考えている。

●大石二丁目

 

カブでどこかにお出かけ中。とても天気がいい。途中曲がるとこを間違ったが、どうにかなると無視、そのままつっ走る。

 

奇麗な舗装道を山間の谷を登っていく。全く知らない風景だ。右側の峻嶮な山の頂上に古い西洋の砦が見える。途中にいくつかバリケードが見える。そこにはアート作品が飾ってある。以前絵で見た事ある作品の立体版のようだ。

 

山間を抜け、遠くに近代的なタワーと町並みが見える。知らない街だ。さすがに道に迷ったと思い、周辺の家屋の緑のプレートを探す。やっと見つけたと思ったら。文字が掻き消されていて、上から落書きなのか「笑わせんな!」と殴り書きで書いてある…謎! 道の反対側を見ると古い家屋のプレートに「大石二丁目」と書いてあった。

●漏水

 

夜中、異変に気が付き目が覚めた。二階の水道を出しっぱなしにしていたら、水が漏れて二階の床が3センチくらい水が溜まって水浸しになってしまった。階下には母が寝ているがまだ気がつかない模様。薄暗い中明かりが欲しかったが、感電を恐れスイッチから手を引っ込めた。しばらくすると目が慣れてきた。水を止めバケツで懸命に排水する。しばらくすると水は引いていった。

 

外は陽が登りかけていた。玄関で生徒達と雨漏り酷かったねと学校を見上げている。コマツ先生が疲れた様子で雑巾がけを終わらせて玄関に出てきた。先生が黒いハイヤーで帰るスーツ姿の一団を見送りに向ったあと、タレントのマツヤマコハルさんが校舎から出てきた。見送りの挨拶を交わす。コハルさんは白い上着を着ている。その服は変わっていて、袖のないチョッキのようだが、肩の袖口から長い肩当てのようなものがぶら下がっていて、あの布は耳を塞ぐ爆音避けのようなものではないかと想像している。そういえば空母の艦載機の発進を行うイヤホンを被った作業員が同じ感じのものを着てなかったっけか?…と考えている。

●非常ブザー

 

息の根を止めるのは訳もなかった。背後から首に腕を回し後頭部に手を置いた、そしてその手を耳で押し続けた。何の抵抗らしい素振りも見せる事なく彼は窒息死した。背後の殺し屋が誰なのか、彼には分からなかっただろう。

 

施設の非常ブザーを鳴らし、少人数の同僚が荷物を抱え逃げ惑う隙に小柄な死体を袋に詰め背負って外に運んだ。

 

入社以来ずっとお世話になっていた人だが、殺すと決めたら私の行動は迷いなく早い。その人懐っこい髭面が頭をよぎったが、それは彼を線路脇に埋める最中の事で、彼の死の結果には影響を及ばさなかった。彼の顔にも躊躇なく石や土を被せて埋めた。

 

数日後、会社では彼はまだ無断欠勤とゆう事になっていたが、そろそろ怪しむ声が聞こえてきた。私は彼の机、つまり殺人現場に近付かないように努めていたが、心配になり一度近付き見やると、驚いた事に私の落としたペンが机上に見えた。

 

慌てた…。

 

回収しようと壁によりかかると、間違って非常ブザーを鳴らしてしまった。「しまった!」と思ったがもう遅い。足下のゴミ箱を蹴散らして片付ける振りをして机に近付きペンを回収した。

 

上から水が落ちてくる。上を見ると非常ベルを鳴らしたつもりがスプリンクラーが作動していた。「なぜだ?」と呆然とする気持ちになり立ち尽くした。

 

帰り道、若い女子社員が近付いてきた。私は1人になりたかったが、その女がしきりに話しかけてくる。無断欠勤した事になっている私が殺した先輩社員の事を心配していて、私が理由を知っている筈と言って問いつめてくる。私は適当に返事して相手にしない。

 

「何か知っているのはこの女の方か?」「こいつも殺しとくか…」

 

と、駅方向に沈む夕陽を見ながらそう考えていた…。

 

●氣志團?

 

どこか室内で長机にノートパソコンを置いて仕事をしている。余りはかどってない。マウスを掴んだ手元にくしゃくしゃになった紙がなだれのように落ちてくる。机の先を見ると、氣志團のような格好をした兄ちゃんが、チラシのようなものを散らかしている。

 

「ちょっと~!」

 

…と怒気を含んだ視線を浴びせ睨みつけるが、氣志團はふてぶてしい態度でそっぽを向いた。仕事がはかどらないイライラで、その兄ちゃんに音もなく飛びかかり、警告無しで左腕を巻き付けスリーパーしで眠らせた。