『国立劇場歌舞伎公演記録集2 桜姫東文章』 

ぴあ 2,835円 A5判 159ページ 2005年12月発行 ISBN978-4835615820

http://piabook.com/shop/g/g4835615824/


歌舞伎見人(かぶきみるひと)


■出版社の案内文


国立劇場は、平成18年11月に開場40周年を迎えます。本シリーズは貴重な財産である国立劇場上演の台本を、公演時の舞台写真等の資料とあわせて収録した公演の記録集です。台本と資料を同時に見ることで、当時の舞台を頭の中で再現することが出来、言葉と視覚の双方から歌舞伎へのアプローチをはかり、その魅力を伝えます!歌舞伎ファンにとっては懐かしいアルバムであり、またより深く歌舞伎を知る手掛かりとなる1冊です。これから歌舞伎を見る方にとっても、観劇のおもてなしとして、また、読み物としてお楽しみ下さい!

【桜姫東文章】
百五十年ぶりの全幕上演であきらかになった輪廻ワールド!奇才・鶴屋南北が、男女三人の運命を鋭く描き切った問題作「桜姫東文章」の、初演以来初の通し上演が国立劇場で実現。折しも国立国会図書館で初演台本の写本が発見され、それを参考にして台本作りが進められました。以降続く「桜姫東文章」ブームの先駆けとも言える公演の全記録です。補綴の郡司正勝以下、守田勘弥、坂東三津五郎、中村雀右衛門らの出演俳優陣が一丸となって甦らせた伝説の舞台の全貌が明らかになります!


◆昭和42年3月上演



■このシリーズについての解説


国立劇場四十年の歩みの集大成

 明治以降、歌舞伎公演は人気場面のみを選んで上演する「見取り狂言」のスタイルが一般的になりましたが、

来年開場四十周年を迎える国立劇場では、ストーリーや人物関係が分かりやすいように、原作の場面をできる

限り活かした「通し狂言」の上演形態による公演を数多く手がけてきました。同時に、それらの公演にかかわる

上演台本、舞台写真などの各種資料も保存・整備してきました。

 こういった国立劇場ならではの資料の中から、一般の方々が目にする機会の少ない上演台本を中心に、

舞台写真や各種の公演資料を収録し、公演別に書籍としてまとめたのがこの歌舞伎公演記録集シリーズです。


歌舞伎をもっと楽しむための記録集

 このシリーズでは、通し狂言としてしばしば上演される作品はもちろん、見取り狂言の一つとして上演される

ことの多いスタンダードな演目に、前後の場面を付けて、全体のストーリーを分かりやすくした作品も多数

取り上げました。これによって、作品の全体像が明瞭になり、その中の一場面を見るときも、今まで以上に

楽しむことができます。

 台本は、公演の初日が開いてから、変更を取りこんで作成している上演記録台本を基ん、適宜、当時の記録

映像に当たって正確を期しました。

 また、難解な言葉、台本特有の言い回しには、字句解説を付けましたので、初めて歌舞伎の台本を読む方

にも理解しやすくなっていますし、あらためて、日本語のおもしろさを見直していただけることでしょう。

 ほぼすべての場面にわたって、デジタル処理によって鮮明になった舞台写真や扮装写真(俳優がその役の

扮装をして記録用に撮影された写真)、道具帳(大道具製作の基本となるデザイン画)を掲載し、まるで生の舞台

を見ているように歌舞伎を楽しむことができます。


公演の選択基準

平成17年3月までの国立劇場歌舞伎公演のうち、古典歌舞伎の通し狂言を上演した公演の中から歌舞伎普及

の観点に立って以下のような基準で選択しました。

・通し狂言として比較的ポピュラーな演目を上演した公演。

・現在は見取り狂言としてしばしば上演される人気演目を、前後の場面を復活するなどして通し狂言の形で上演

 した公演。

ただし、同じ演目の再演がある場合は、さらに以下の基準をもとに選択しました。

・場面構成などの点でより原作に近い内容の公演。

・演出の異なる場合は、現在主に採用されている演出の公演。

・内容に大きな違いのない場合は、上演年月の古い公演。



■目次

公演情報

配役一覧

解説

あらすじ

主な登場人物紹介

上演台本

邦楽連名

随談抄


■配役

長谷寺の清玄 守田勘弥(14)

桜姫 後に風鈴お姫 中村雀右衛門(4)

粟津七郎 後に有明の仙太郎 河原崎権十郎(3)

入間悪五郎 坂東蓑助(7)=三津五郎(9)

稚児 白菊丸 坂東玉三郎(5)    (←ただし、写真等の掲載は残念ながらありません)

小姓 升次 坂東志うか(4)=大谷桂三

腰元 待乳 大谷友右衛門(8)

松井源吾 岩井半四郎(10)

吉田松若 市川門之助(7)

局 五百崎 坂東秀調(4)

奴 軍助 坂東好太郎

家主 綱右衛門 市川九蔵(5)

役僧 知光 坂東吉弥(2)

局 長浦 澤村源之助(5)

役僧 残月 市川八百蔵(9)

葛飾のお十 澤村宗十郎(9)

釣鐘権助 実は信夫の惣太 坂東三津五郎(8)

                                  ほか


■歌舞伎見人メモ (抜き書きの部分もあれば、まとめた部分もあります)

・江の島稚児ヶ淵・・・江の島の奥津の宮から西に下った南端にあり、荒波が渦巻いている場所。むかし、陸奥国

 信夫郡杉妻の太平寺の稚児白菊が、師の慈休を慕って鎌倉にのぼり、建長寺塔頭広徳庵を訪れたところ、

 修行の厳しい禅僧の慈休に会うことが出来ず、生きる希望を失って此処に身を投げたので、稚児ヶ淵と名付け

 られた。「桜姫東文章」は、この伝説を発端に用いている。


・稲瀬川・・・鎌倉の長楽寺と長谷寺の間を流れて、由比ヶ浜に注いでいる川。歌舞伎の世界では隅田川を

 稲瀬川に置きかえたりする場合がある。「桜姫東文章」は三囲の場からが江戸の出来ごとで、稲瀬川の場は

 明らかに鎌倉の稲瀬川のこと。


・吉田家兄弟の名の梅若、松若、桜姫は、「菅原伝授手習鑑」の梅王、松王、桜丸の趣向を取り入れている


・桜姫というy悪は、五代目半四郎の芸や魅力を見込んで書かれた。桜姫は姫と女郎という対極的な二つの姿

 を見せるが、時代物もできて悪婆もできるという半四郎の芸があっての役。

 五代目半四郎は、文化文政期を代表する女方で、桜姫を演じた時にも 一番の女方だったし、座頭にもなった

 ので大太夫と呼ばれていた。