舞台写真集 『中村福助』 高橋曻/撮影

小学館文庫 880円 文庫判 223ページ 2003年12月発行 ISBN978-4094058819

http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166605743



歌舞伎見人(かぶきみるひと)


■出版社の案内文


1992年九代目中村福助を襲名してから10年。中村芝翫を父にもち、そして中村橋之助が弟という名門「成駒屋」の、襲名以来の全舞台を写真家・高橋が撮り続けていた。御贔屓待望、当代人気女形初めての写真集ついに出版。それぞれの舞台を初め、先人の名優のこと、家族のこと、役作りのことなど、本音で語ったエッセイ、コメント付き。掲載された1枚1枚の写真が、すべてベストショットです。


九代目中村福助を襲名してから、早、一〇年。福助はさまざまな役に挑戦してきた。娘役から八重垣姫・雪姫・時姫の三姫、『妹背山』のお三輪、『先代萩』の政岡などの大役に次々と取り組み、その芸域を広げてきた。そしていまや、歌舞伎界を支える女形である。写真家・高橋昇は、福助の舞台を一〇年間、撮り続けてきた。すでに数千本を越えるフィルムには、福助の魅力が遺憾なく写し出されている。演じ続ける福助。その迫真の演技に迫り続ける高橋昇。その究極のところをきり撮った写真には、役者を見つめる厳しさがあり、役者を見守るやさしさが溢れている。

■目次


口上

1993年

1994年

1995年

1996年

1997年

1998年

1999年

2000年

2001年

2002年

2003年

切口上



■歌舞伎見人メモ (抜き書きの部分もあれば、まとめた部分もあります)


写真集ですので、とにもかくにも、ご覧いただければと思います。文庫判の体裁で、オールカラー、

写真点数はかなりの数にのぼります。福助襲名以来の1993年~2003年の10年間の舞台写真が満載です。

ところどころ、福助さんご自身のコメントが写真に添えられています。


以下、掲載写真の一覧と、福助さんのコメントの中で特に印象に残ったものをご紹介していきます。


●口上


・「(前略)この度は、ノボル先生にご相談申し上げ、福助襲名十年目の集大成といたしまして、この間の私の

 移ろいを皆様にもお目にかけたく、このような本にまとめることと相成りました。また、なるべく身近な感じで

 お手にしていただけるようにとの思いから、文庫本のサイズにいたしました。その時々に感じました私の

 感想なども交えてみました。」


●1993年


・お艶 (お艶殺し)

・胡蝶 (土蜘)

・黄昏 (田舎源氏露東雲)

・おかん (権三と助十)

・お園 (毛谷村)

・藤の精 (藤娘) -初日の夜の部に、父(芝翫)の具合が悪くなり、突然に、「女伊達」を代役したあとの「藤娘」

・十六夜 (花街模様薊色縫)

・お染 (於染久松色読販)

・小糸 (於染久松色読販) -優太(現・児太郎)が生まれたときの、歌舞伎座での『お染の七役』です。

・お六 於染久松色読販)

・お光 (於染久松色読販) -お光の道行の踊りの前に空足を踏んでしまい、ガムテープを巻いて舞台に出た

                   思い出がありますね~。一二月二一日のことでした。

・お七 (櫓のお七)


●1994年


・三千歳 (直侍)

・静御前 (吉野山)

・千代 (寺子屋)

・在原行平 (須磨の写絵) -病後すぐの舞台で、孝夫(現・仁左衛門)兄さんの病状が悪くなり、思いもよらな

                   かった立役が廻ってきました。日ごろ相手役をさせていただいている勘九郎の

                   兄さんを相手役に使って、また、玉三郎の兄さんを恋人役に使って非常に気持ち

                   のいい舞台でした。

・梅川 (恋飛脚大和往来)

・白拍子花子 (男女道成寺)

・しのぶ (弁慶上使)

・お種 (堀川波鼓) -三大姦通ものの一つで、後味のワル~イ芝居です。

・おなぎ (魚屋宗五郎)

・お三輪 (道行恋苧環)

・姫御寮 (素襖落)

・おいち (巷談宵宮雨) -富十郎のお兄さんが、自分のはげ頭でちょっと恐い化粧を見て、「きみぃ、僕って、

                 バック・トゥー・ザ・フューチャーのドクみたいじゃなぁ~い」と一言。

・傾城 (傾城)

・小槇 (蝶の道行)

・八重垣姫 (本朝廿四孝)


●1995年


・おその (因果小僧)

・八重 (加茂堤)

・うてな (神霊矢口渡)

・八重垣姫 (本朝廿四孝)

・重の井 (恋女房染分手綱)

・十六夜 (花街模様薊色縫)

・おつる (宿の月)

・漣太夫 (三人形)

・千代 (寺子屋)

・美代吉 (名月八幡祭) -「なんで、お月さんに拍手せんとあかんの。もう一回お化けで出てくれると思うた

                  わぁ」と大阪のお客さんに言われました。

・おかん (権三と助十) -初めて長屋のおかみさん役。これを機に長屋のおかみさん役がくるようになりました

・お夏 (お夏狂乱)

・赤星十三郎 (白波五人男)

・夕顔 (源氏物語)

・名古屋山三 (鞘當)

・葛の葉 (葛の葉) -葛の葉とは、安倍清明のお母さんのこと。この舞台のときに、陰陽師は絶対に歌舞伎の

               題材になると思っていました。今となってはもう遅いか。

・浅香姫 (摂州合邦辻)

・お浜 (人間万事廻り灯籠)

・菅の谷 (志渡寺)

・美代吉 (八幡祭小望賑)


●1996年


・お紺 (お江戸みやげ) -佳奈*かな*が生まれました。

・梢 (梶原平三誉石切) -この梢の役が、児太郎、最後の芝居だったノ。

・お舟 (神霊矢口渡)

・寧子 (太閤記)

・千早姫 (大森彦七)

・静御前 (吉野山)

・扇折小百合 後に愛宕山の鬼女 (戻橋) -この鬼は、指が四本です。

・おきわ (狐狸狐狸ばなし)

・お峰 (牡丹灯籠)

・徳姫 (信康) -新之助さんと初めて組ませていただいた徳姫です。そのときに、なんとおもしろい子だろうと

            思いましタ。

・白拍子桜子 (二人道成寺)

・小浪 (道行旅路の嫁入)

・松島 (伽羅先代萩)

・小周防 (将軍頼家)

・小野小町姫 (積恋雪関扉) -歌右衛門のこの役で、僕は歌舞伎が好きになりました。


●1997年


・玉蟲 (平家蟹)

・八百屋お七 (松竹梅湯島掛額)

☆児太郎のこと

 児太郎(優太)は、いろいろなことに興味が旺盛で、舞台に出ることも好きです。しかし、調子よさそうに見えて

 神経質です。ナイーブで、他人の言ったことを自分なりに分析しているB型の人間で、O型の僕より相手を分析

 しています。

・所化青龍坊 (京鹿子娘道成寺) -中村優太くん、初お目見え! まだ、ちっちゃい。

・手代忠七 (髪結新三) -手代忠七の役は、僕には廻ってこない役だと思ってたんです。

・おきわ (狐狸狐狸ばなし)

・薄雪姫 (真薄雪物語)

・梅川 (新口村)

☆大阪の芝居

 江戸前のサラサラした芝居と違って、こってりしているというか、精神的なものを表に出す部分が強いということ

 に、大阪のお芝居の考え方というものを感じました。

・お時 (幡随長兵衛)

・おはん (をんな忠臣蔵)

・お里 (すし屋)

・楊貴妃 (楊貴妃)


●1998年


・秀太郎 (毛抜)

・司 (雁のたより) -三代目歌右衛門の書いた芝居なんですヨ。

・白拍子花子 (京鹿子娘道成寺)

・お浪 (乗合船恵方萬歳)

・お軽 (六段目) -お軽は、自分のライフワーク。いちばん最初に歌右衛門のおじに教えていただいたお役と

             いうこともあって、勤める度に身の引き締まる思いがあります。

・村雨 (須磨の写絵)

・上臈 (釣女)

・お里 (壺坂霊験記)

・政岡 (伽羅先代萩) -こんなに早く、政岡をやらせていただけるなんて・・・・・・。重圧を感じました。

・織女 (流星)

・お市 (鶴賀松千歳泰平)

・小万 (盟三五大切) 

・曾我十郎祐成 (寿曾我対面)

・白玉 (助六曲輪初花桜)

・橘姫 (妹背山婦女庭訓)

・お米 (暗闇の丑松) 

・常盤木 (沓手鳥孤城落月)

・染吉 (俄獅子)


●1999年


・おその (天野屋利兵衛)

・お園 (彦山権現誓助剱)

・お六 (お染の七役)

・中将姫 (中将姫古跡の松)

・かさね (色彩間苅豆)

・お紺 (伊勢音頭恋寝刃) -襲名の名古屋でのとき、歌右衛門のオジ様に、生涯たった一度、たった一言、

                   褒められた役デス。九十二年十月九日のこと、デシタ。

・お富 (与話情浮名横櫛) -いつも思うんだけど、この二人、三年間、まちまちにどうやって暮らしていたんだ

                   ろうね。

・お福 (団子売り)

・朝顔 (朝顔日記)

・静御前 (義経千本桜) -僕は勤めている役のなかで、静が一番多いんですヨ。猿之助兄さんとのときには、

                  明けても暮れても、静、静、静でした。

・源義経 (勧進帳)

☆勧進帳の義経

 七代目団十郎によって作られ、九代目になって完成された芝居で、そのとき、最初に指名を受けたのが

 五代目歌右衛門。弁慶や富樫に心得があるように、家には義経に対しての心得書きがありまして、

 とくに大切な役とされてます。

・美代吉 (名月八幡祭)

・葛の葉姫 (芦屋道満大内鑑)

・お染 (お染久松浮塒鷗)

・姫御寮 (素襖落)


●2000年


・滝夜叉姫 (忍夜恋曲者)

・八ツ橋 (籠釣瓶花街酔醒) -八ツ橋はAB型ダヨ。

・お菊 (番町皿屋敷)

・美代吉 (八幡祭小望月賑)

・葛の葉姫 (芦屋道満大内鑑)

・お鶴 (小さん金五郎)

・おすず (浮かれ心中)

・鈴 (富樫)

・お政 (愚図六)

・所化青龍坊 (京鹿子娘道成寺)

・更科姫 実は戸隠山の鬼女 (紅葉狩) -この間亡くなった梅幸のオジさんがステキでね、憧れていました

                            ね。振りって、覚えているモン。一回もやったことなかったけど、

                            踊れたモノ。

・お三輪 (妹背山婦女庭訓)  -ホントウニ、苧環の糸が切れちまってよ。

・乳人 (菊晴勢若駒)

・おはま (魚屋宗五郎) -松緑のオジさんと梅幸のオジさんがずっと当り役にしてて、ものすごくやりたかった

                 役。磯部の屋敷は、おはまに、おなぎと、みんな海に関係のある名前で出てくる

                 歌舞伎のサザエサン版。

・獅子の精 (英執着獅子)

・手代要助 (隅田川続俤法界坊) -勘九郎さんの、「夢の中村座」に参加させてもらいました。


●2001年


・藤の方 (一谷嫩軍記)

・小万 (源平布引滝)

・阿国御前 (新世紀累化粧鏡)

・若菜 (女暫)

・典侍局 (渡海屋・大物浦) -歌右衛門が亡くなりました。典侍の舞台稽古に出ていったときの訃報でした。

                    一生忘れられない公演になるでしょうね。

・明石の君 (源氏物語) -新之助さんは、近くで見てもやっぱりきれいでしたね~。

・鷺の娘 (鷺娘)

・お嬢吉三 (三人吉三)

・おえん (封印切)

・お光 (お染の七役)

・雪女 (化競丑満鐘)

・粟津の奥方 (野田版研辰の討たれ)

・おちくぼの君 (おちくぼ物語)

・初菊 (絵本太功記)

・姫 (相生獅子)

・足利頼兼 (伽羅先代萩)

・曲侍局 (知盛編)

・弥助 (權太編)

・侍従 (末摘花)

・橘姫 (妹背山婦女庭訓) -玉三郎さんのご考案で、人形振りで勤めました。肩を抜くようにやりなさい、という

                   口伝の通りにやって、右肩を脱臼してしまったのデス。


●2002年


・雛鳥 (吉野川)

・八重 (賀の祝)

☆勘三郎と歌右衛門

 お芝居の心というものを教わったのは勘三郎のオジさんにだね。舞台で本当に泣いてもいいと。歌右衛門の

 オジは、絶対に泣かなかった。泣いている素振りを見せるだけで、涙を見せない人でした。勘三郎のオジさんは

 稽古からボロボロ泣いちゃう人。僕も涙腺が弱いからすぐに泣けちゃうの。それで、歌右衛門のオジに

 「だめだよ、そんなに泣いちゃ、化粧をゴシゴシこすっちゃうでしょ」と言われちゃうの。

・雌鴛鴦の精 (鴛鴦襖恋睦)

・豊臣秀頼 (沓手鳥孤城落月)

・お喜世 (御浜御殿綱豊卿)

・濡衣 (十種香)

・ともね (狐と笛吹き)

・舞の師匠 (仇ゆめ)

・豊志賀 (真景累ヶ淵)

・お関 (怪談乳房榎)

・雲の絶間姫 (鳴神)

・お花 (東海道四谷怪談)

・手代要助 (法界坊)

・お辰 (夏祭浪花鑑)

・おさん (佐倉義民伝)

・磯萩 (椿説弓張月)


●2003年


・阿国 (出雲の阿国)

・八ツ橋 (杜若艶色紫) -このお芝居では本物のポアの蛇を使いたかったのですが、一日七万円とは・・・・・。

・獅子の精 (鑑獅子)

・明石の君 (源氏物語)

・阿国御前 (新世紀累化粧鏡)

・お染 (お染の七役)

・お六 (お染の七役)

・白拍子朝香 (浅妻船)

・お峰 (怪談牡丹灯籠)

・お高 (野田版鼠小僧)

・小野小町 (六歌仙容彩) -父との恋人役は初めて。ナンカ、とても嬉しかったデス。

・梅ヶ枝 (無間の鐘)

・八重垣姫 (本朝廿四孝)